すふぉるつぁんど

主に遠藤浅蜊著「魔法少女育成計画」シリーズについて書き残していくブログです。

まいにち魔法少女13日目:ペチカ

 

本日のまいにち魔法少女です。ナンバーは17、ペチカです。

ペチカ。好きだ……。基本的に戦闘派魔法少女が大好きであたまのおかしい魔法少女が超好きな自分ですが戦闘派でもあたまがおかしくもないペチカについてはまほいくソート上位です。がんばります。

 

 

 

 

ペチカ。登場話は「魔法少女育成計画restart」。魔法少女歴一年と半年のふつうの魔法少女。人間体の建原智香は中学三年生。悩める中学生魔法少女です。

ペチカは悩める魔法少女界隈でもトップに君臨する悩める魔法少女です。プリズムチェリーもそうでしたが、「普通の(自分が可愛くないと思っている)女の子が、魔法少女になって超可愛い美少女となり喜び、しかし魔法少女達の中では自分は平々凡々な存在なのだと知って落ち込む」という流れはある程度よくあるものなんでしょうか。かわいい。年頃の女の子だからね。

 

しかしそこはペチカとプリズムチェリーだとペチカの方が一枚上手……というかやり手というか。魔法少女に変身した状態で人間の服を着て想い人にお弁当を渡しに行く、というきゅんきゅんするような素敵なことをしてくれます。プリズムチェリーは外見がキラッキラしてるのでそういう応用は効かないかもしれません。

 

 

世界を取れるその技にはテンペストもびっくりです。ゲームの間間に挟まれる三日間のメンテナンス期間に、ペチカは想い人こと二宮くんにお弁当を届けに行って、お喋りをします。あの流れもすごく丁寧で好きです。

ペチカは自分が二宮くんの追っかけをしていることについて「純粋な野球ファン」だのなんだの嘯いていますが、智香の弟こと智樹くんの目を通すと「誰かに影響されて急に野球を見始めた」そうなので恋する女の子かわいいです。

 

智香としてふるまうペチカの幕間はほのぼのとして、可愛らしく、そして切ない。二宮くんの存在はペチカに「生き残らなければならない」と思わせるよすがでもあり、ペチカが見殺しにしてしまった彼女を思う後悔のかたちでもあります。

かつて魔法少女として共に戦った(かつてペチカは戦っていたのでした)友達。クラムベリーに馬乗りで殴り殺された彼女のことを智香は忘れてしまっていたけど、面影を二宮くんに重ねていた。かつてペチカのおいしい料理で笑ってくれた、ペチカが助けられなかった彼女の面影を二宮くんにみていたのでした。

 

あーー。好きです。ペチカがいるということはそのまま魔法少女育成計画restartが名作であることと同義です。

前編の段階で、心が腐りきったゲス読者(自分のことです)に「はいはいペチカはクラムベリーのこどもでペチカの魔法はどうせ毒殺洗脳に使われたんだろ」って浅はかに考えさせたところでの「おいしい料理をつくる」だけでストレートに全てをやりきったペチカはもう。だめです。好きだ……

 

ペチカに関しては本当に「描写が丁寧」以外に言うべきことがなくて。

料理人モチーフの魔法少女なので嗅覚が鋭いということが丁寧に各所で説明されており、その能力でメルヴィルの居場所を察知し、クランテイルを救うことができたということ。 

リオネッタを助けて那子が倒れ、ペチカを助けようとしたリオネッタがメルヴィルに殺され。それを止めることができなかったペチカが、しかしメルヴィルに一矢報いてクランテイルを助けて、「ただ一つだけ綺麗に光るもの」を抱いて静かに目を閉じること。そして、「私は死ねない」と言ったクランテイルが(プフレ、シャドウゲールとともに)生き残ること。

完璧じゃん……。

 

最高の満足死勢です。いちいち拾ってるとキリがないのでやめますが、メルヴィル戦のペチカに関しては描写の一つ一つが本当に完璧で好きです。

ペチカは無双して戦いに勝ったわけではありません、メルヴィルを行動不能にしたわけでもありません、がそれでも彼女は勝ったんです。個人的な大勝利です。

 

あの綺麗で、完璧で、非のうちようのない死にぎわはだめです。ペチカについて一つ非常に心苦しく思うことがあるのは、どうしても「ペチカに生き残って欲しかった」とうまく思えないことです。あまりにも結末が美しすぎる。

 

クランテイルこと寧々ちゃんが料理の勉強を始めている、というエピローグの描写が好きです。智香の持っていたものを受け継ごうとする寧々ちゃんです。

 

 

5分間という厳しい時間を稼ぐためにメルヴィルに喋り続けた内容(魔法少女とは誇り高くあるべきだ)について。彼女もまたただ魔法少女に憧れていた頃があったんでしょうか。ペチカに関しては魔法少女であるでないの前に1人の少女としての活躍が強いですが。

「5秒とは魔法少女にとって永遠にも等しい時間」なんです。5分稼いだペチカはえらい。南瓜と海老の冷製スープ。がぶりと一口。あああ……。

 

魔法少女には「戦う魔法少女」と「戦わない魔法少女」がいる。だからといって「戦わない魔法少女」が弱いわけではない』というrestartのテーマ。これは主にのっこちゃんのことを想いつつ向けられた言葉なんですが、しかしペチカの勝利とも(いやペチカの勝利にこそ)間違いなく符合します。戦わない魔法少女が弱いわけではない。

しかしこのフレーズはlimitedプフレの引き起こした大災害にさわやかな印象を塗りつぶされた感があって引用すると心が重くなりますね。

 

 

好きなイラスト。restart後編のマルイノ先生の後書きの、ブランコに座ってるワンピースペチカが本当に好きです。マルイノ先生は素晴らしいお方です。

魔法少女になって可愛い服を着る」というメソッドは各界隈もやっててほしいところです。スノーホワイトにちょっとストリート寄りのパーカーとごついスニーカー履いて街を闊歩してほしいって自分の欲求は、ペチカの白ワンピースのせいで発生したと言っても過言ではない。

 

 

好きなセリフ。セリフかあ……独白だと「――でも、でも、でも、でも、でも!」が文句なしズドンとくるんですが。二宮くんに最後にお弁当をあげて「ごちそうさま!」と言われた後の「おそまつさま」でしょうか。頬にキスするやつ。初読時これペチカ死ぬか……って思ってました。でも素敵な文章だった。

 

以上です。明日もがんばります。