すふぉるつぁんど

主に遠藤浅蜊著「魔法少女育成計画」シリーズについて書き残していくブログです。

まいにち魔法少女14日目:ポスタリィ

 
本日のまいにち魔法少女です。ナンバーは39。ポスタリィです。がんばります……。
 
 

 

 
 
ポスタリィ。登場話は「魔法少女育成計画limited」。トコによって魔法少女にされた中学生魔法少女のひとり。
描いてみてわかりましたがこの子は本当に衣装が可愛いですね!丸っこい帽子、黄緑/ピンクの二層に分かれた翼を思わせる髪。帽子や肩や腕についた房飾り。かわいい。魔法少女力が高い。
 
しかし個人的な趣味上で残念なことといえばポスタリィは戦わない魔法少女なんです。戦闘はからきし。性格もオドオドしたもので、唯一の友達三香織こと魔法少女レイン・ポゥとしかなめらかに交流ができません。レイン・ポゥともあまりなめらかに交流が出来ていません。
 
グレースに振り回されるところであるファニートリックは、同じくレイン・ポゥに引っ張られるポスタリィのありようを見て「同病相憐れむ」という言葉を思い浮かべています。
が、どうなんでしょう。ポスタリィとファニートリックは「同病」なんでしょうか。ポスタリィはただレイン・ポゥに振り回されていた子なんでしょうか。
 
 
 
ポスタリィはかなり特殊な子です。生まれてから全く友達ができず、いじめられかけ、それに怯え、「ネットストーキングと徹底的な隠密術」によっていじめを避けるという奇妙極まりない手段でもっていじめの対象を避けています。
彼女は人一倍友達というものに憧れていたのに、自分から積極的に誰かと仲良くなりにいこうという気持ちが決定的に欠けている。なにかしら「おかしい」ところのある子です。普通ならいじめられたくなければ「1人で目立たないポジションを維持する」よりも「2人組か3人組の地味なグループで目立たないで居続ける」方がよっぽど楽だし、安心だし、快適なはずなのです。
それでも面倒だからとクラス内で孤高の一匹狼(?)を貫く達子。憧れつつも面倒で手を出さない。
 
これはポスタリィという魔法少女の非常に重要な特徴なんですが、彼女はすごく良い目を持っています。自分がいじめられたくないがために他人の動向を探り気配を消してきた経験がものを言い、他人を観察することについては非常に優れています。
彼女がひとをきちんと見ていることについての描写はちらほらありますが、顕著にそれとわかるのは魔王パムと行動を共にしている時のポスタリィ視点など。ポスタリィが観察する魔王の描写はとても面白い。
 
 
 まあそんな異常ともいえる観察眼と隠密スキルによってぼっちを貫いていた達子ですが、それでもなんだかんだ、(魔法少女化という目的の元)三香織という友達ができてしまい、達子の精神世界は変容します。
友達は必要で、友達がいない生活には帰れない。香織のことを非常に必要としています。
 
しかしながらそんなポスタリィは魔法少女をやるよりも人間に戻って安穏とした生活を送りたい、という思いが強く、魔法少女を続けたがる友達ことレイン・ポゥと初めての口喧嘩をします。
香織の出自を思えば自分を地獄から救い上げた存在である魔法少女を続けたいというのは当然の主張ですが、ポスタリィはそれを知らないので香織はどうかしているのではないかと考えてます。
 どうかしているのではないか、と考えつつも、断ち切れない。命が惜しいので本当に魔法少女を辞めたいのですが、香織との友情が呪いになってそうすることができない。達子は魔法少女としてではなく、一人の少女として頑張った勢です。当時に非常に珍しい魔法少女ネガティブ勢です。
 
 
 大切な大切な友達である香織を失いたくないという気持ちは非常に好ましいです。友達のために渋々魔法少女を続けるという魔法少女らしからぬふるまいもギリギリ年相応に可愛らしい。達子ことポスタリィは間違いなくふたりぐみ魔法少女です。
 
ただ、その大切な友達を失いたくないがためにリップルにクナイ返送して墜落させたことについては……。
ここは……ここは……初読時に受け入れがたく……本当に……何度読み返しても……。
 
 
いや気持ちはわかります。ポスタリィにはどうしてもレイン・ポゥという「友達」
失うことが許せなかった。その為には緩やかに自分の命が危険に晒されることも容認した彼女です。見ず知らずの忍者くらい殺しますね。うん……。
 
 
つらい気持ちはともかくとして、ポスタリィは明らかにレイン・ポゥを大切に思って(必要として)、恐らくは正義側であろうリップルに不意打ちをするという行動を起こしているんです。
そしてそんなポスタリィの想いの対象であるレイン・ポゥがポスタリィをどう思っていたのかと言えば、確実にとくべつに想っていて、その結果殺せずにいたんです。両想いです。両想いです……。
でもそんな気持ちを互いが知ることはありません。
 
ポスタリィはレイン・ポゥに「友達だから」助けたのだとまっすぐに伝えていますが、達子とあまり仲良くなれなかったと感じていたレイン・ポゥはそれを「よくわからないがこいつはきっと馬鹿なんだろう」と受け止めてます。
でも内心の奥底ではレイン・ポゥは嬉しかったはずです。冷酷無比な暗殺者であるレイン・ポゥがポスタリィを殺せないというのは相当です。
 
 
前述したようにポスタリィは良い目をもった子です。レイン・ポゥが並大抵の魔法少女であれば、きっとその感情はポスタリィに見抜かれて、そして二人はきちんと友達どうしであるということをポスタリィも理解していたでしょう。
しかしレイン・ポゥは並大抵の魔法少女ではなく、自分を隠すことにかけては天才級の魔法少女なのです。そう易々と思いを悟らせてくれない。
それに加えてポスタリィは、「有りそうもない想像で自分を騙」して、レイン・ポゥからは眼を逸らしたままで。あのタイミングで二人がわかりあうことはかなり厳しかったのではないでしょうか。
 
 
何が言いたいかというと、レイン・ポゥもポスタリィも、二人とも友達付き合いが初心者で、そして二人ともちょっと特別な才能を持っていて、その二つが影響して致命的なまでのすれ違いになってしまった、ということです。
達子のバックボーンには「ずっと友達に憧れていた、いじめられることを避けた結果他者を観察して隠密技術を習得した」というものがあり、香織のバックボーンには「姉からの虐待を受けつづけ、誰にも心を許すことなく自分を秘匿する技術を習得した」というものがあります。
ふたりとも友達付き合い自体が下手で、うまく踏み込めないふたりだったんです。
でもその背景が相手に知られることはなく、よって理解されることもなかった。それでも友達でありつづけようと不器用に手を伸ばしたふたりは、きっともっと時間があれば正しくお互いを理解し合えた友達になれていたのでしょう。
でももっと時間があればというのは無理な話で、limitedの時間軸でふたりの話はストップしてしまいます。
死にぎわが無残なことも、「未来」にこそ可能性があったレインポスという二人を修飾しています。レインポスはふたりぐみ魔法少女というか、ふたりぐみ未満の魔法少女だったのかもしれません。
 
 
好きなイラストについて。ポスタリィが涙目で正座しているlimited後編の挿絵が好きです。FANBOOK4コマの泣きながらクナイを集めているポスタリィも好きです。
 
 
好きなセリフについて。「ろ、ろうかい!」が好きです。
 
 
文字数。ポスというかレインポス語りだ。明日も……明日も頑張ります。