すふぉるつぁんど

主に遠藤浅蜊著「魔法少女育成計画」シリーズについて書き残していくブログです。

まいにち魔法少女20日目:ハードゴア・アリス

 

本日のまいにち魔法少女です。ナンバーは16。16といえば無印魔法少女の最後を飾る存在。つまりハードゴア・アリスです。

アリス。好きです。がんばります。

 

 

 

 

ハードゴア・アリス。登場話は「魔法少女育成計画」。不思議の国のアリスを真っ黒にしたようなエプロンドレスを身に纏っています。顔色も悪い。猫背。関節硬そう。初見で「話通じなさそうだなあ」と思わせる魔法少女です。

 

そんなアリスの人間体は殺人者を父親に持つ中学1年生の鳩田亜子ちゃん。ハードゴアとはとだあこは似てますね。鳩田亜子ちゃんとスノーホワイトの2人で綴られる無印のプロローグ。すごく好きなんです。自分の中で魔法少女育成計画シリーズの文章はすべてキラキラしたありがたく信仰すべきものなんですが、無印プロローグはその中でも特別です。

 

今の亜子は誰にとっても不必要な存在で、ただただ迷惑を振り撒いている。

だったら死んだ方がいいと考えた。

 

だが鍵を失くしてしまった。これ以上迷惑をかけたくなくて死のうとしているのに、余計な迷惑をかけてしまうことになる。

 

うわあ。パンチが効いたスタートです。プロローグからこんなことでいいのか魔法少女育成計画。別にいいか……

スノーホワイトの性格リストには「妄想癖がある」というものがありましたが、アリスの性格には「思い込みが強い」がありそうです。迷惑をかけたから死ぬという発想。

 

この後亜子ちゃんは自分を苦しめているすべてをなくなった鍵に転嫁して「もう鍵のことしか考えられなくな」ってるんですが。これちょっとだけ亜子が死のうと思っていることに気付かず、鍵を届けるだけして去っていった無印スノーホワイトのフォローになってますね。

能力が育っていないこともありますが、亜子が鍵鍵鍵鍵と思い詰めているために、死のうとしていることについてはスノーホワイトには伝わらなかったようです。

 

ここで鍵を懸命に探して、全力で走り回って、コスチュームを汚してまで見つけて渡してくれる魔法少女。優しかったころの母親を思わせるその微笑みに、亜子は魔法少女になれば必要とされる存在になるだろうか。亜子を必要としてくれる人がどこかにいるのだろうか」と考えます。

魔法少女へと至る扉が亜子のまえに開けた瞬間です(鍵ももらったし)。

 

 

 そこから亜子は文字通り死ぬ気で魔法少女「ハードゴア・アリス」に至り、「スノーホワイトの隣に立って人助けをする」ことを目標に活動を始めます。魔法少女を目指す動機的な欲求が「必要とされたい」から、「スノーホワイトの役に立ちたい(必要とされたい)」にすり替わってます。かわいい。

アリスの登場時期がちょうど一代目スノーホワイトの隣に立ちたい魔法少女ことラ・ピュセルの脱落頃なので、猛烈な争奪戦は起きませんでした。実際アリスとラ・ピュセルがかち合ってたらどうなってたんでしょうね。さんにんぐみ魔法少女の発足かな!?

 

それからちょいちょいと経緯を飛ばして。マジカロイドを殺したアリスは父親と同じ殺人者になったことに関しては「スノーホワイトを守れた」ことに喜んでる感じで全然重たく受け止めてません。すごい……。アリスはスノーホワイトに拒絶されようとめげません(めげるという思考自体が存在しなさそう)。ただ守る事だけを考えています。

 

でそんなこんながありまして、コミュ力のないアリスが言葉足らずなせいもあって、スノーホワイトはアリスに「この街に魔法少女はもういない」「私にかまわないで」と言って逃げ出します。

そしてアリスはミナエルが化けた兎の人形を家に持ち帰り、人間体を特定され、亜子として通学しようとしている途中、変身できない通学路でスイムスイムに背中を斬りつけられます。

 

 

アリスはスノーホワイトにとって本当に大切な位置を占めている魔法少女です。

アリスがスノーホワイトに突き返された兎の足を握りしめ、そしてその兎の足の力が「魔法少女ではない」姫河小雪に届いて。躊躇った小雪が結局小さくなっていく声を聴かなかったことにできずスノーホワイトに変身し、声の主である瀕死の亜子のもとへと駆け付けて。そこからの会話は、スノーホワイトを「魔法少女狩り」に押し上げるに至った大きな原動力である、と思います。

 

”あなたがいれば……”

”私を助けてくれたあなたがいれば……”

”この街から魔法少女はいなくならないって……”

”そういってあげたかったのに……”

 

スノーホワイトは自分が魔法少女であるとはもう考えていない。だがハードゴア・アリスを失望させるのは絶対に嫌だった。

 

あーーー。ああ。もうこれについて語ることは不要というか無粋なんじゃないかなという気さえします。

死の淵に瀕してさえも「必要とされたい」という亜子本人の望みではなく、あくまでスノーホワイトのことだけを想い、「スノーホワイトは必要とされている」ということをただ伝えようと願う亜子。亜子が救われて、願った「魔法少女」であろうと、無気力であることをやめようと動くスノーホワイト

 

亜子の最期の言葉はスノーホワイトに気力をもたらし、彼女にリップルを止めに行くという「選択」をさせます。守られてばかりで泣いていたスノーホワイトが初めて踏み出した選択であり、「魔法少女狩り」として魔法少女を狩りつつも人助けは毎日欠かさず行う、という現段階のスノーホワイトが誕生したきっかけです。

 

 

アリスの綺麗でひたむきな憧れはスノーホワイトに絡みつく想いのひとつです。JOKERSエピローグで自分のやっていることに思い悩むスノーホワイトは、きっとアリスを失望させてしまうんじゃないか、と考えてたんじゃないかな。

アリスのこの想いが、スノーホワイトにとって呪縛にならなければいいなあと思ってます。アリスはきっとJOKERSスノーホワイトが悩み苦しんでいることをちゃんとわかって、失望したりしないと思う。んですがまあその辺はどうにも。

アリスとスノーホワイトの関係はすごく……綺麗です。スノーホワイトが目指し、諦めようとした「人助けをする魔法少女」を肯定するパワー。

 

 

さて好きなイラストについて。episodesの短編「ゾンビウェスタン」に挟まれました、アリスが綺麗に臓物ブッ飛ばされてる挿絵が好きです。語るタイミングがありませんでしたがアリスの規格外魔法好きです。生コンを自力でブチ抜いて海から脱出したんでしょうかアリス。呼吸不要でも死なないのはソニアよりすごい。

 

 

好きなセリフについて。「私が、あなたに、スノーホワイトにあげたから、あなたのものです」だなあ間違いなく。兎の足を今でもスノーさんは大事にしているんでしょうか。大事にしていると思いたい。アリスちゃんがあげた兎の足は、巡り巡ってフレデリカさんをひっとらえるきっかけになりました偉いすごい。

 

 

以上です。無印のアリスちゃんの部分を読み返していて何度目かわからないのですがほろりと来ました。好きだ……。明日もがんばります。