すふぉるつぁんど

主に遠藤浅蜊著「魔法少女育成計画」シリーズについて書き残していくブログです。

まいにち魔法少女35日目:スノーホワイト(無印)

 

 本日のまいにち魔法少女です。ナンバーは1。1!誰かと言えば言うまでもなくスノーホワイトです。無印時代のスノーホワイト。まだスノーさんとか呼ばれてなかった頃のスノーホワイトだ。がんばります。

  先に謝っておきますが引っ張ってきたい文章があまりにも多すぎて引用文祭りです。

 

 

 スノーホワイト。登場話は「魔法少女育成計画」。魔法少女ファンでちょっとうっかり者の夢見る女子中学二年生、姫河小雪が得た念願の魔法少女体。名前から性格からまるで主人公みたいです。主人公なんですが。

 ソシャゲ「魔法少女育成計画」によって、幼い頃から違わず小雪が描き続けていた、学生服をモチーフとした白い魔法少女、をそのまま落とし込んだ形の「スノーホワイト」に変身した時のスノーホワイトの喜びようはもうすさまじいものです。見てるこっちも笑顔になりました(初読時)そして同時に悲しくなりました(再読時)。

 

快哉を叫び、喜びのあまり飛び上がった。そして天井に頭を打ち床に叩き落された。

(中略)

「やった……やった……やったあああああ!」 

「おめでとぽん」

「やった!やった!やったあ!ありがとうファヴ!これからもよろしくね!」

 

「魔法」の欄には「困っている人の心の声が聞こえるよ」とあった。

 「世のため人のため魔法を使う魔法少女」という小雪の理想像にぴったりと当てはまる魔法と言える。小雪は魔法の国に感謝した。魔法少女にしてくれてありがとう。この素敵な魔法を授けてくれてありがとう、と。

 

 あーー。ああ……。このスノーホワイトの始発点を見るとかなり苦しいです。今があんなことになっちゃっているだけに。

 スノーホワイトの苦しいところは、ただでさえ死に別れた魔法少女達の祈りと願いが肩にがっしゃんどっしゃん積み重なっている上に、「スノーホワイト」という魔法少女の姿かたち、造形、コスチュームの全てが、まだ魔法少女に夢と希望しか抱いていなかった頃の自分自身を想起させることです。

 血塗れのコスチュームそのものが、過去の、ただの姫河小雪だったころの自分への否定になってしまう。

 

 自分の祈りは無印の作中で既にぼきりと折れてしまったスノーホワイトです。自分自身の願いはもう諦めてしまっているのかもしれませんが、いろいろな願いを汲んで、自分の意思を通す、選択し続ける道を選び取った彼女は、折れてもめげても「魔法少女」でありつづけようとする彼女は、どういう思いで人助けを続けているんでしょうか。

 

 脱線しました。

 未来のそんな絶望を知る由もないスノーホワイト。そうちゃんことラ・ピュセルとコンビを組み、人助けを毎日欠かさず行っていたところで、ファヴから告げられた「マジカルキャンディーが一番少ない魔法少女が一人脱落する」という宣告を受けます。

 そしてねむりんの死を経て、自分が恐ろしいデスゲームに巻き込まれてしまったことを知ります。

 

スノーホワイトは自分だけ仲間外れにされているような、「怖くて怖くてどうしようもない私の方がおかしいのだろうか?」そんな気持ちになった。

 

 アニメの中の魔法少女のようにはいかない。現実に生きている魔法少女としての自分の、理想との差異に戸惑うスノーホワイト

 ルーラチームに50000程度貯めていたマジカルキャンディーの7割以上を掻っ攫われ、最早魔法少女とはという状態です。ぼーっとしている。それでも、幼馴染であり自分を守る「騎士」のラ・ピュセルが居てくれた間はまだ元気でいられたのですが。

 

 

 ラ・ピュセルはクラムベリーに勝負を挑まれ、それに応じてしまい、そして交通事故のありさまになってしまいます。その時のスノーホワイトはもう崩壊寸前です。泣いて、泣いて、泣いて、吠えて、絶望しきっています。怯え、一人夜の誰も居ない道を彷徨い、何か物音がすれば震えて、孤独に疲れ切っています。

 

 そんな限界に近いスノーホワイトを支えようとして、また一人夜を彷徨い歩く少女が登場。

 スノーホワイトの命を狙おうとしたマジカロイドを殺されつつ殺し返した少女・ハードゴア・アリスです。ファーストコンタクトが最悪すぎてしばらくすれ違うんですが、それでもアリスはスノーホワイトを励まそうと懸命に付いていきます。

 

助けを求める人たちを放って戦いに興じる魔法少女達には失望を感じたが、率先して人を傷つけ、殺した魔法少女の存在には絶望を感じる。

(中略)

魔法少女は困っている人を助けるためにいるのだと思っていたし、スノーホワイトの魔法はまさにそのための魔法だったはずだ。

他の魔法少女が狂っているのではなく、スノーホワイトがおかしかったのだろうか。そんなことはないと慰めてくれるラ・ピュセルはもういない。

 

 スノーホワイトの心を真に折ったのは、彼女が思い描いてきた「魔法少女」と、現実に生きる魔法少女達(自分も含む)との乖離でした。自分はもう魔法少女ではない。自分の中で核として存在していた「魔法少女」というものはもはや砕け散ってしまった。

 

 その絶望のただなかにあるスノーホワイトを引っ張り上げる、今際のきわのアリスの言葉についてはアリスの日に言及したのでさっくりと。

 スノーホワイトはアリスの言葉をきっかけとして、そして「あなたに憧れていた」というリップルの背中を見て、「魔法少女でありつづけること」を選びます。

 

 スノーホワイトにとっては、死に至る道だと知っていても、それを選んで進んでいくリップルこそが魔法少女だった。

 そして、自分も、もう自分自身を魔法少女だとは思っていないながらも、「魔法少女」としての道を選び取ります。無気力であることを止め、戦いを止めさせるために走る。

 

 

 自分はもう夢を見ていないんですが、それでも魔法少女を辞めない。

 それはラ・ピュセルやアリスといった、同じ形の清らかな魔法少女を夢見て、しかしその夢を砕かれて倒れていった魔法少女のためです。「彼女たちの」夢を守るためだと自分は考えています。

 

 無印でのスノーホワイトは流されて流されて、絶望して、それでも最後の最後に「誰かのために」立ち上がった魔法少女です。エピローグでの「次は……選ばなかったことを後悔するんじゃない。後悔する前に自分で選ぶ」というセリフは、彼女の足元にある亡骸たちを思わせます。

 無印以降のスノーホワイトは、自分の願いとしての「魔法少女」を打ち壊した、ルーツから「誰かのため」一色の魔法少女です。

 いつか決壊しないかなあこの生き方。すごく不安です……。無印の流れを経れば、そんなスノーホワイトに変性してしまうのは当然だと言えるんですが。

 

 

 好きなイラスト。単行本無印巻末の、リップルと衣装交換しているスノーさんがかわいいです。何故かあのイラストを見るとものすごく胸が苦しくなります。

 

 

 好きなセリフ。もうこればっかりはどうしようもなく「次は……選ばなかったことを後悔するんじゃない。後悔する前に自分で選ぶ」ですね……。

 スノーホワイト。それからのスノーホワイトは本当に、見ていて苦しい子です。弱音の一つでも吐いてほしい、というのは前回のプフレと全く同じです。ところでプフレとスノーホワイトってすごく並べて面白いふたりです。ぜひ並べてみてください。

 

 以上。つらい。明日もがんばります。