すふぉるつぁんど

主に遠藤浅蜊著「魔法少女育成計画」シリーズについて書き残していくブログです。

まいにち魔法少女44日目:袋井魔梨華

 

 本日のまいにち魔法少女です。ナンバーは62。袋井魔梨華です。

 袋井魔梨華。大好きです。最高のキャラクターです。がんばります。

 

 

  袋井魔梨華。登場話は「魔法少女育成計画JOKERS」。

 ですが初出がJOKERSというわけではありません。彼女の名前が初めて登場したのは、limited後に発表されたWeb短編、魔王パムとクラムベリーの「魔王を討伐したいから」です。

 

 なにかの文書に目を落としている。どうやら名簿のようだ。魔法少女らしき名前がずらずらと並んでいた。
 炎の湖フレイム・フレイミィ、闇の牙リミット、蒼龍パナース、花売り少女袋井魔莉華、双子星キューティーアルタイル、ときて最後にクラムベリーの名があった。

 

 当時は魔梨華ではなく魔莉華だったんでしょうか。いやあ誤字かな……。Episode2に「魔王を討伐したいから」が収録された折には確認したいものです。(追記:episodesΦに「魔王を討伐したいから」が収録され、「袋井魔梨華」に無事修正されていました)

 そう、袋井魔梨華はかつては「花売り少女」という魔王のネーミングセンスをうっかり疑ってしまうような二つ名をいただいていたのでした。それがJOKERSでは二つ名が外れ、ただの「袋井魔梨華」になっている。初読前に不思議に思っていた記憶があります。

 

 その理由はJOKERSですぐにわかりました。驚くべきことに、袋井魔梨華は暴力が過ぎて暴力サークルの魔王塾を放逐されて、その時に「花売り少女」という二つ名を剥奪されてしまっていたのでした。何ということだ。

 一体何をしたら放逐されたりするんでしょう。その辺のエピソードはまだ語られていませんね。いつか明らかになってくれたらなと思います。

 

 

 それはそうと袋井魔梨華は戦闘狂です。

「魔王塾で一番嫌いな魔法少女は誰か?」と聞けば、七割が袋井魔梨華の名前を挙げる。二割は「袋井魔梨華は魔王塾を放逐された身で魔王塾関係者などではない」といったことを苦々しげに話す。つまり関係者の九割が袋井魔梨華の名前を出す。

 

 いや凄い。犯罪者を上回る嫌われよう。ひょっとするとJOKERSでは比較的良い面ばかり見えていたのかもしれません。多分実際もっとずっとはた迷惑な事ばっかりやってたんだと思います。
 単に性質がアレなら迷惑だな~くらいで済むものですが、下手に魔王塾最強クラスなのが彼女の迷惑さを加速させている。魔梨華は強い子です。魔法が強い上に身体も強い。理想的に「強い」魔法少女です。

 

 魔梨華は魔法少女になった瞬間から戦闘欲求に支配され、あちこちの戦闘に首を突っ込み、生きるか死ぬかと言う瀬戸際に積極的に紐無しバンジーして、そんなこんなで10年以上生きてきたというありえない経歴を持っています。それを納得させるだけの強さを彼女は見せてくれました。

 

 

 まず魔法がものすごく優れています。「花の種類だけ魔法を持つ」という、多様性に特化した代物。遠近両手段の攻撃方法を持てる上に、肉体的タフネスを無視できる「臭い」の攻撃や、魔法の力を回復させるマジカルアヘンの精製ができるなど、搦め手、補助魔法にも融通が利きます。強い……。

 

 そこに驚異の身体能力♡5という、飛び抜けた肉体のパワーもあります。

 ええっと、魔梨華がどのくらい身体的に優れているかと言えば……「元気になれる薬」で強化された身体能力♡2のミナエルを、ノーモーションパンチで心臓ぶち抜けるクラムベリーさんとがっちり組みあって、その上で腕力で押し勝てるだけの身体能力を持ってます。ちょっと驚嘆ですね。

 


 さてそれだけが魔梨華の強さではなく。まだ続きます。魔梨華の凄まじいところは「植物である」と言うこと。自称他称植物。スタイラー美々という袋井魔梨華の最も善き理解者(語弊のある表現)も認めるところの植物魔法少女です。
 植物なのでものすごく丈夫です。日光と養分と水分があればちょっとばかりの怪我は怪我の内に入りません。


 日光が一切入らない、袋井魔梨華にとってのアウェイ極まりない「人工地下施設」に居てさえも、多めに見積もっても数時間程度で抉られた片目が復活する魔法少女という区枠内でもありえない回復力です。
 三半規管をぐっちゃぐちゃに掻き回されてもへらへら笑って目と耳と鼻と口から血をだらだら流している、かつてない「非人間的」魔法少女です。

 

 

 そんな魔梨華が死線を戦い続けていらたのは、肉体、魔法の「強さ」だけではなく。勿論精神としての強さも絡んできます。魔法少女は思いがすべて。

 魔梨華は創造主たる遠藤先生に「特技は割り切ることです」と言い切られたほどの、「割り切る」素晴らしい力を持っています。撤退戦で酷い目に遭おうが、その結果仲間がバタバタと倒れていこうが、それでも全てを割り切って、ただ一つ魔梨華を構成する欲求「純粋に戦いの中に溶け込み、相手と渾然一体となる」という望みのためだけにひた走っていました。

 JOKERS最終盤までは、彼女はただただ自分の欲望を追い、熱くも冷静に、「強い」魔法少女を貫いていました。

 JOKERS最終盤までは。

 

 

 JOKERS最終盤で、初めて。初めて! 袋井魔梨華はその戦闘欲求にストップをかけます。全てのことを割り切り、ただ戦闘を愛し、戦闘に全身全霊で身を投じていた魔梨華が、戦闘中に戦い以外のことを考え続けています。

 その思考を諫めるようにして戦いへ帰ろうとしつつも、どうしても帰れない。

 

美々は動かない。最後の一投でシャッフリンを一体道連れにした。

道連れ。そう道連れだ。道連れということは、美々は殺され、シャッフリンを一体連れていった。もう動かない。致命傷だからだ。あれは致命傷だ。

助けられなかった。助けようとしなかった?違う。助けられなかった。助けるべきだった。なんでこんなことを考えているのだろう。戦っている最中に、死んだ者のことを考えるなんて。

美々。

美々だ。

スタイラー美々。

魔梨華は、また美々のことを思う。

夾雑物はあってはならない。なのに、美々が倒れている。

心が離れない。戦いに入っていくことができない。

 

 このぐっちゃぐちゃな魔梨華の、魔梨華の初めての地の文が、自分の頭をこれ以上なく焼いたのでした。

 文章としてここまで崩壊した地の文は魔法少女育成計画でもほとんど見られません。魔梨華は、美々が「嫌がらずについてきてくれている」とわかっていて、知っていて、それでも「嫌がる美々を自分が連れてきて殺してしまった?」と考え、動揺し、眼の前に戦いがありつつも美々の死から離れられない。

 何度考えようとも美々の死を割り切れない。自分を責め、どうして自分を責めているんだ?と考え、そしてまた自分を責める。

 

 

 本当にこのJOKERS最終盤の、魔梨華の内面の描写が、好きなんです……。最高だと思う。

 それはただこの数ページが美しいというだけではなく、そこに至るまでの伏線めいた魔梨華と美々の関係性や、魔梨華の妙な「冷静さ」や、それらがすべて積み上げられたうえで成り立っている「最高」です。好きだ。好きです。

 全文引用したい程度に好きなんですが、それをすると文字数が酷いことになってしまうので魔法少女育成計画JOKERSを読んでください。

 

 袋井魔梨華には、美々の死をいずれ乗り越えて、また更に強くあってほしいです。

 魔法少女狩りとのコンビは実現するんでしょうか。袋井先生は正直に申し上げて好みど真ん中です。展開が楽しみです。

 

 

 文字数の関係で以上です。明日もがんばります。