すふぉるつぁんど

主に遠藤浅蜊著「魔法少女育成計画」シリーズについて書き残していくブログです。

まいにち魔法少女46日目:キャプテン・グレース

 

本日のまいにち魔法少女です。ナンバーは46、キャプテン・グレースでした。

グレース!limitedの中学生勢魔法少女のなかでは最後かな。中学生魔法少女たちについて喋ってると例外なく腹痛がするのでもうひと頑張りでがんばります。

 

 

 

キャプテン・グレース。登場話は「魔法少女育成計画limited」。

海賊モチーフの魔法少女です。コスチュームがかなり印象的だった覚えがあります。気持ち派手なコスチュームの多いlimited魔法少女の中でもかなり派手派手しい。


FANBOOKにてマルイノ先生に「ネコのイメージです」と表現されてやっと理解しましたが、猫尻尾付きだったんですね。海賊帽の尖りも猫耳をイメージしているんでしょうか。猫耳魔法少女、地味にちらほらいるんですけど、全員正統派猫耳ではない(マジカロイド、ジェノサイ子)のが魔法少女デザインの捻り具合を感じます。

眼は赤色。細瞳孔勢。ぐっと吊り上がった眉には意思の力が強く篭っているような気がします。


「ピーター・パン」のフック船長を思わせる感じで、左手は鉤付きになってます。……が、作中の描写を見る限り義手になってるという訳でも無さそうですね。
魔法とは別に備えついているコスチューム付属武器として一振りのサーベルを持ってます。こういう付属武器持ちは、武器無しの世界からやってきた魔法少女と比較して何と言うかちょっと有利ですよね。リップルなんてもうコスチューム付属武器の塊みたいなものですし。強い。

 


魔法は「すごくかっこいい魔法の海賊船を出せるよ」。
クズ魔法の匂いがプンプンするよ!と思ったら、まあクズ魔法に近かったんですが、それでも使いどころの制限された魔法なりにかなり活用してましたね。偉い……。
海賊船は猛スピード勢的固有アイテムのひとつです。他には箒や車椅子、殺人芝刈り機などかあります。猛スピード勢結構います。

 

ただ「海賊船が出せる」という訳ではなく。中の調度品や武器なども自由に持ち出しできるようです。それは便利かもしれない。
大砲で攻撃、船そのものをぶち当てて攻撃など、直接的ながらに初見殺しな魔法の使い方は見ていて楽しかったです。

 

 

グレースは思考力は低めで、FANBOOKでも「思慮深さ♡1」とされる程度にストップが効かない子で。実際プキン将軍とやり合った時も、相手の方が格上であることを理解しつつ攻撃を仕掛け、嘲笑われてブチ切れ、「防御を捨てて渾身の一撃を叩き込もうと」しちゃったりしてます。迂闊!ウェディンが撤退命令を出していなければグレースはあの場でぐさっとやられちゃってたでしょう(遅かれ早かれですけど)。


その圧倒的に不足した思慮深さを補うのは二つ。
一つは、天性のものに近く、そしてサバイバル生活(冒険)によって更に研ぎ澄まされた野生の勘と言うべき直観力です。
グレースは「生命を脅かすような何か」が接近してきた時、その存在をかぎわけることが出来ます。更に、初見で相手の力量を結構な精度で見抜くことが出来ます。すごい。
これで冷静だったら文句なしに強くて無駄のない魔法少女なんですが。冷静さは、グレースが捨てるところの要素です。

 

冒険の準備を始めよう。海は危険を我が物にするためのルーティンを開始した。呼吸を浅く長く引き伸ばす。脳の奥にある感覚を緩める。これは他人に説明しても理解してもらえない。ピリピリをチリチリにする。細かいことがどうでもよくなる。体の中の息を全て吐き出す。もう吐き出す息がない、と身体が伝えてきてからさらに一絞りを無理やり捻りだす。

この、グレースが危険を知った上で踏み込んでいく、その方向へと精神を移行させていく身体の作り替え描写、すごく好きです。


ともあれそんな調子で、グレースは意識して「危険の予感」を踏み越えていきます。恐れ知らずですが、同時に無鉄砲。

グレーズにとって、そんな自分自身に首輪をかけ、暴走に至りかけたら留めてくれる2つ目の補填要素、戦いに明け暮れるグレースに対しての「軍師」役こそが根村佳代であり、ファニートリックだったのです。無くてはならない存在です。
軍氏云々に関して、それは「グレースにとって」という一方向性のものなのですが、それはまた後述するとして。

 

グレースについては、limited前編初読時、後編の発売を待ちながら(グレースは間違いなく殺し屋魔法少女じゃないし、やること大体やったし、まあ早期退場するんだろうな……)と重く考えていたのを結構はっきり憶えています。ちなみに自分の第一犠牲者予想は下克上羽菜さんでした。予想に反してベテランらしくしぶとく生き残ってくれてすごく嬉しかった。

持ち出し家具でお茶するグレースとファニートリックかわいかったです。

 

 

 

そう。グレースと言えばファニートリックです。

自分的ファニートリックにとってのグレースに関しては、 

まいにち魔法少女10日目:ファニートリック - 魔法少女育成計画と生活」を参照してくださいねという事で割愛するんですが。

 

今回はグレースにとってのファニートリック。

それについて端的にあらわすと、相棒でありながらして自分を諫める「軍師」であり、グレースの冒険の「記録係」であり、「あの子って本当要領悪いのよね」なのです。

 

もうちょっと直接的に原作ドンピシャの部分を引くと、「だからこそグレースが守ってあげなければならない」なんです。「だからこそグレースが守ってあげなければならない」

つまりは、グレースにとってのファニートリックというのは、共に肩を並べて戦うと言うよりは、同じ冒険に乗り出しつつも、自分が「守る」べき、比較的非戦闘的な要素で自分と共にあってくれる存在なんじゃないかなと思います。

 

それって。

ファニートリックが望んでいた立場(グレースと並び、いつかは追い抜く)とまるっきり食い違ってるんですよ。

この食い違い、作中で一切正されることはありません。グレースは最後の最後まで、守ってやらなければ、と思いながら意識を薄れさせていきます。

 

 

すれ違いなんです……。グレファニはもう本当に根本からずれている気がする。

その辺の「誤差」「違和感」というものが、作中で数回強調されてきた、過度に怯えるファニートリックと、それに苛立つグレース、という関係に現されているんじゃないかなと思います。

 

キャプテン・グレースの苛立ちが募る理由はこれだ。ファニートリックは不安がっている。今、ここに、ファニートリックの隣に、誰よりも頼りになるであろう相棒がいるというのに、怖がり、恐れ、怯懦に慄いている。

このへん。

グレースにとってはファニートリックは「守る対象」なので、グレースが隣にいる限りファニートリックが怯える理由なんてないのですが、ファニートリックにとってのグレースはそんな対象ではないので気持ちは通じ合いません。

 

 

 いや、グレースは本当にきっちりすれ違ったまま脱落したのが印象的でした。

limited魔法少女については本当に多くの魔法少女が「未来」に希望を期待を宿したままばたばた倒れていきます。グレースはその代表選手です。ボタンのかけ違え直したグレファニ見たかったよ……。

 

 

好きなイラスト。limited後編扉絵好きです。あれはまほいくイラストでもちょっと異色な気がします。

 

好きなセリフ。生前のものだと「ところであんたの網タイツエロいわね」が超印象的です。ごめん。

 

 

以上。文字数。