すふぉるつぁんど

主に遠藤浅蜊著「魔法少女育成計画」シリーズについて書き残していくブログです。

まいにち魔法少女48日目:シャドウゲール(restart)

 

 本日のまいにち魔法少女です。ナンバーは26。restartにおけるシャドウゲールでした。

 シャドウゲール……好きです。とても。がんばります。

 

 

 シャドウゲール。登場話は「魔法少女育成計画restart」。

 言わずと知れた表紙魔法少女の一人です。restart後編を飾る魔法少女。物憂げな一瞥、彼女を取り巻く包帯、レンチ……あの表紙大好きです。今のところrestart後編が表紙としてはもしかすると一番好きかもしれない。いやそうとも言い切れないんですけど(全部好き)。

 

 彼女のコスチュームは、看護師としてのナイチンゲールと鳥のナイチンゲールを絡めた、鳥感のあるブラックナースというものです。首元に羽根。尻尾的に尾羽。シャドウゲールの羽根っぽい黒羽はプフレの髪を飾ってもいます。

 シャドウゲールは白衣の天使ならぬ黒衣の天使。天使です。かわいい。いや天使と言うにはちょっと顔色と眼付きが悪い。細瞳孔勢です。プフレの光のない濁った赤眼と、ゲールの金色の中に黒の細瞳孔な眼はいい感じにブラックな二人組感があります。

 

 ビジュアルに関していえばとにかくクール寄りにかわいい子です。中露出勢かな。レンチとハサミをコスチュームにくっつけてます。restartで振り回してたのは主にレンチでした。特筆すべきは靴がやたらめったらにかわいいことです。シャドウゲールの靴は魔法少女靴のなかでもかなり特別に好きです。

 

 

 そんなクールな外見に反して中身は殺人的にかわいい! シャドウゲールはそこがすごい。自称シニカルな苦労人ですが……果たして本当にシニカルなんだろうか。

 シャドウゲールの人間体こと魚山護は、人小路庚江という化物めいた主人に物心つく前から付き人として仕えています。

 同じ幼稚園、小学校、中学校、高校に通い、お嬢様学園で庚江の後ろに付き従い。金魚の糞だのなんだの外野に言われつつ(そしてそれに庚江が仕返しつつ)人小路のお嬢様に対してああだこうだ文句をいいながら従者生活をやってます。

 

 護の内心が不平不満の塊すぎて忘れがちなんですが、シャドウゲール・魚山護は「従者してる」事に関しては思ったよりもきちんとしています。庚江に直接的に悪態をつくようなことはなく、敬語を貫き、危険に晒されれば身を挺して庇い、汚れた手を差し出されれば無言でハンカチで拭いてやる。別巻では同じ席に腰掛けるときは「どうぞ」と了承を貰うのをちゃんと待ったりしています。

 一応しっかり躾けられている。お嬢様に仕えるものとして(内心では結構庶民ぶってる護ですが)彼女もまた育ちのいいお嬢様してるんじゃないかなあって思います。

 

 

 で、そういうやれやれ系従者こと護について特筆すべきことといえばそれは「諦めの早さ」と、「プフレ・庚江に呑まれきらない精神性」です。

 諦めが早いのは庚江に仕えてきたからこそ培われた能力かもしれません。お嬢に言われたことはそんな無茶なと返したところでいいからやれと押し切られるので、抗うほうが無駄です。それにしても護はかなり諦念が強い。色々と諦めている。

 restartの電脳世界が死に直結していると知らされ、マスクド・ワンダーの脱落を目にし、気が動転し、皆グルで私を騙そうとしているんだとプフレに詰め寄ってみたり。理不尽なミラクルコイン行方不明事件やチェルナーの脱落を「全部マスターの仕業」なのでは、と、言っても仕方のないことを言ってみたり。護はやや悲観的に物事を見ようとしている気がします。それも諦めがちな性格故の考え方なのかな。

 

 それでも、彼女が全てをプフレに委ねることなく「自分の頭で考えようとしていること」はちょっと驚くべきことだと思います。

 プフレは実際天才で、彼女の示す方向に進んでいれば結構物事は上手い具合に進むんじゃないかな、と思わせる言いようのないカリスマとパワーがあります。何だかんだ、プフレ・庚江に付き従ってきて、まだ完全にすべてを諦めてなされるがままという訳ではないのがシャドウゲール・護の面白いところです。

 そこがプフレ・庚江がシャドウゲール/護を気に入る理由の一つなんではないかなあとか。

 

 しかし……シャドウゲールがプフレに頼り切らずrestart中で色々推理をやってみて、その考えを庚江に発表してみたら「ひょっとすると私は護を見損なっていたのかもしれない」とか言われたりしてるので、実際普段の護はもっとぼーっとしてる可能性はあります。結構天然っぽいところがあります護ちゃん。というかかなり天然っぽい気がします。後日談エピソードとはいえ、「顔に落書きされて一週間気付かない」っていうのは異常です。ぼんやりしすぎです。

 

 護はそのあたりがとても面白い。庚江に従い、庚江に影響され、それでも庚江の意思に染まり切らない何かしら(あほの子成分とも言う)を持っている。自分の事を常識人だと思ってる変な子タイプです。というか庚江になんだかんだ付き合っていけてる時点で変な子だろうと思います。

 

 自分が多少変な子であることへの自覚の無さに限らず、護はかなりいろいろなことに関して無自覚な人間です。

 主に庚江から護への気持ちとか、自分から庚江への気持ちとか。その辺についての意識がぼんやりしているのを利用されて、restart最終盤のシャドウゲールは疑心暗鬼の塊になっていました。

 

 

 封じられていた記憶が蘇り、自分とプフレが、101人の犠牲のもとに今生きているということを思い出して。プフレがクラムベリーに対して何かしらの犠牲を払った上で生存枠を無理やり一人から二人に拡張したと知って。そして、プフレが「自分も殺されるのではないか」と考えた護の心を見抜き、いまだかつてない程に動揺し、深く傷つき、悲しんだということを思い出して。

 

庚江は護を振り返った。その端整な顔が一瞬激しく歪み、すぐ元通りの笑顔になった。

「それじゃ帰ろうか。さすがに少しばかり疲れた」

庚江の顔が歪んだのは、怒りではなく、失望でもなく、悲しみだ。護が庚江に殺されるかもしれないと考えているとは、彼女は思っていなかった。護の的外れな心配が庚江を傷つけた。護は庚江が傷つき、それを誤魔化したのを、その時初めて見た。そしてそれ以来一度も見ていない。

 

 そんな庚江を確かに一度目にしていて……それでもまだ、心を煽られて「プフレが魔王なのではないか、自分を最後に殺すのではないか」と(反論する声もなく)考えてしまう、シャドウゲール。

 ちょっと異常じゃないかなあ。庚江が異常な子であるように、護もまた、常人離れしたものを持っていると、やっぱり思ってしまいます(三度目)。

 

 護については、地の文を多く担当していて、考えていることが読者側に伝わってくることが多い分、その裏側(描写されない範囲の意識)でどういう思考が働いているのか察しづらいところがあります。JOKERSの護にちょっと話が跳ぶんですが、例えばあの「なにかあれば、私を殺してください」というぶっ飛んだセリフに至るまでに護がどういう思考を巡らせたのかなんて、もうさっぱりわかりません。

 

シャドウゲールは地面に手をつき、さらに退いた。プフレのいっていることがわからない。理解できない。なのに涙が止まってくれない。

 

 何をどう考えてるんでしょうね。天然という言葉で片付けていいのかわからない。変な子です。変な子だ……。

 わからないからこそ二人には対話してぜひこちらにわからせてほしい。restartでも庚江と護が心からお互いについて対話する事ってありません。庚江の最後のアレは完全に言い逃げですし……。プフゲル対話してくれ。

 

 

 さて好きなイラスト。表紙大好き。後はクランテイルちゃんに締めあげられて泣いてる挿絵も大好きです。プフレを殴り殺し(たと思い込んで)泣くシャドウゲール、罪深い。とても罪深い。

 

 

 好きなセリフ。巨大チェルナーを前にしての「戦うとかそういう相手じゃないです。逃げましょう。戦っても誰も褒めちゃくれませんし、意味がないです。お願いだから逃げましょう」がかわいい。シャドウゲールにしてはわりと珍しい長台詞です。基本庚江がぺらぺら喋ってその返事しかしないゲールです。

 

 以上。全然全然語り切れてませんね……無念。明日もがんばります。