すふぉるつぁんど

主に遠藤浅蜊著「魔法少女育成計画」シリーズについて書き残していくブログです。

まいにち魔法少女58日目:ラ・ピュセル

 

 本日のまいにち魔法少女です。ナンバーは2。2!

 1が勿論スノーホワイトで、では2は誰かと言えば初代スノーホワイトの相棒ことラ・ピュセルです。

 ラ・ピュセル。主にそうちゃんという呼び方でも親しまれている魔法少女です。
まほいく一のレア魔法少女かもしれません。がんばります。

 

 

 ラ・ピュセル。登場話は「魔法少女育成計画」。

 竜のモチーフを所々に宿しつつ、主体としては女騎士をベースにしたコスチュームをしています。籠手・胸当て・脛当てなど甲冑めいた装いに身を固めつつ、太腿や胸など女性らしさを強調できる部分は積極的にさらけ出していく。性的です。


 「ラ・ピュセル」は「乙女」を意味するフランス語であり、ジャンヌ・ダルクの異名でもあります。

 果たして岸辺颯太がどちらを意識して魔法少女育成計画(ソシャゲ)のキャラクターにラ・ピュセルという名前を付けたのかは定かではありませんが、コスチュームから名前から、一つ筋の通った「世界観」を感じさせてくれる魔法少女です。

 

 「世界観」を強く持つ魔法少女は言動もその世界観に影響されたものになりがちです。騎士を意識したコスチューム。高貴さと清らかさを漂わせる名前。レクチャー役の魔法少女・シスターナナを「我が師」と呼ぶロールプレイ。なかなかにかっちり決まったなりきりっぷりです。岸辺颯太とラ・ピュセルの間の乖離があまりにも大きいために、一周して開き直って別人としての振る舞いを楽しめたりするからなんでしょうか。

 

 おなじロールプレイ勢のマジカロイドも、ロボそのものに変身するという大きな段差を持っている魔法少女なので、なりきり要素を含んだ魔法少女にはその手の大ジャンプが必要なのかなと思います。

 ロールプレイ勢、好きなんですが、無印以降はあまりワラワラとは登場しませんね。魔王パムはロールプレイ勢の頂点です。

 

 ところで本当に今。今更! 気付いたんですが岸辺颯太って名前、そのまんま「騎士」なのか。あー。そしてスノーホワイトは白雪姫である以前に姫河小雪ちゃんか。明確に人間の頃から「騎士」と「姫」だったんですね。はーーなんて運命的なお名前を持ってる二人なんだろうか。

 察しが悪いのでまいにち魔法少女をやっていて改めて気づくようなことがたくさんあります。それにしたって! 岸辺颯太が「騎士」、これはちょっと遅すぎる理解です……。新しい発見に喜びつつも絶望です。

 

「泣かないで、スノーホワイト

ラ・ピュセルは鞘から剣を抜き、柄をスノーホワイトに向けて膝をついた。刃渡り五十センチほどの刃がキラキラと輝いている。

「たとえこの身が滅びようとも、貴女の剣となることを誓いましょう。我が盟友、スノーホワイト

芝居がかった仕草や口調とは裏腹に、スノーホワイトを見る目には労わりがこもっている。泣かないでといわれたのに、スノーホワイトの目には大粒の涙が浮かんでは落ちた。

 

 そんな「姫と騎士」の描写。好き……。

 淡々と魔法少女が殺したり殺されたりする乾いた文章が魅力のまほいくですが、耽美なシーンもいっぱいあります。これはその最たるもののような気がします。しかし死亡フラグでもあります。ラ・ピュセルのこれは……もうどうしようもなく、死を匂わせてきます。

 

 

 そう、それで、「騎士」の名を持つ岸辺颯太についてです。ラ・ピュセルがまほいくで未だに語られ続ける人気魔法少女なのは、ラ・ピュセルの中身が岸辺颯太であるからです。
 個性的な魔法少女達が跋扈する「魔法少女育成計画」シリーズでも異端中の異端・男の子魔法少女。TS文化にはあまり造詣が深くないのでラ・ピュセルがTS魔法少女としてウケているかは不明です。

 

 岸辺颯太は一人のディープな魔法少女ファンであり、世を忍ぶ魔法少女コレクターであり、そして魔法少女ラ・ピュセルなのでした。生きづらいにも程がある。
 突然女性体に姿を変えられてしまってさぞ大変などきどきハプニングを体験したことだろうと思いますが、素質が♡3つぶんくらいあるそうなので意外と楽しく乗り切ってたかもしれません。女の子であるかどうか独自の調査を行うラ・ピュセル。かわいい。

 

 彼が彼である、つまり魔法少女の人間体が男の子であるからには、ラ・ピュセルが理想とする魔法少女像がスノーホワイトの非戦闘的なそれと反するのは仕方のないことだったのかもしれません。

 スノーホワイトは困っている人をこっそり助ける、日常の中の魔法少女を目指して頑張っていましたが、ラ・ピュセルが理想に描いているのはキューティーヒーラースの如き「戦闘美少女」寄りな魔法少女でした。

 

 ピーキーエンジェルズに急襲された場面での描写がそれをよく表しています。

頭に血が上った。マジカルキャンディーの強奪へと走った意思の弱い魔法少女に対する怒りだったが、その中にはほんのわずか、自分の能力を存分に振るえる機会が訪れたことによる喜びも混じっていた。ラ・ピュセルは、魔法少女の強さを手にしてから、ずっと夢想してきた。強敵と戦い勝利する自分を。

 

 あばー。「ずっと夢想してきた。強敵と戦い勝利する自分を」かぁ……。その願いがかない、ラ・ピュセルは後日強敵と戦うことはできたんですが。

 完全物理攻撃だけを魔法にひっさげた新米魔法少女が相手取るには、森の音楽家クラムベリーさんは、ちょっと、いやかなり無謀な相手だったように思います。というかラ・ピュセルは「殺し合い」を意識せずに、「正々堂々と戦い、お互いを認め合う」ことをイメージしながら音楽家さんと相対しちゃってて、もうだめです。世界観が違う。

 

 そんなわけでラ・ピュセルは無残に殺され、岸辺颯太のお葬式が後日開かれます。遺体の損傷が激しくて棺の中を見せてもらえないって、相当です。相当です……。

 魔法少女だった人間のお葬式はちょくちょく描写されていますが、どれもこれもどうしようもなく胸に来ます。岸辺颯太の場合は特に。

 

 個人的にはクラムベリーVSラ・ピュセルの戦闘は、完全に描写されないからこそ美しく、虚しいものだと思っています。というかあれ以上の描写を求めるのは野暮と言うものだ。

 

 

 さて好きなイラストについて。えっと。ラ・ピュセルといえばやっぱりどうしようもなくepisodesの短編「オフの日の騎士」の挿絵が一番猛烈に印象的です。性的です。

 セクシャルだなあ! という部分以外にもあの挿絵について思っていることはあって。ラ・ピュセルの下着大公開によって、魔法少女にはそれぞれ固有の下着が存在するという事実が明らかになったわけです!

 つまりあの魔法少女とかあの魔法少女とかにも「コスチュームの一部として」の趣向を凝らされた下着が用意されているわけで、それってとても素敵なことです……。かわいい……下着にまで手を抜かない魔法少女達どうしようもなくカワイイ……。

 

  好きなセリフについて。「たとえこの身が~~」は言うまでも無く好きです。が上で紹介したので割愛するとして、特別編集版魔法少女育成計画発売にあたって書き下ろされた特別短編「女騎士の孤独な戦い」から、「続けたいよ、魔法少女を。でもどうしようもないんだ」を挙げます。

 「女騎士の孤独な戦い」好きです。好きなんですが、特別編集版を購入した当時の自分が「本編」「スノーホワイト育成計画」と読み進め、はーーシリアス……スノーホワイト……最高……というテンションで初めて読んだ時感じた温度差はそれはもうすさまじくて慄きました。

 ラ・ピュセルの短編登場率、結構高めなんですが、どれもこれも面白くて好きです。基本的に小雪ちゃんと微笑ましい程度にイチャイチャしてるのがよい。

 

 以上です。ドラマCDラ・ピュセルスノーホワイトの話を始めると余裕で文字数をぶちぬくので全部カットしました。明日もがんばります。