すふぉるつぁんど

主に遠藤浅蜊著「魔法少女育成計画」シリーズについて書き残していくブログです。

まいにち魔法少女68日目:リップル(limited)

 

 本日のまいにち魔法少女です。ナンバーは45。リップル(limited)でした。久々のリップル回です。これでやっと3人目かな。

 リップルは初めて「16人の魔法少女たち」枠での再登場を果たした魔法少女です。restartを跨いでlimitedでのリップル再登場、ものすごく混乱したのを憶えています。

 再登場がここまでストレートに喜ばれないおはなしも珍しいっちゃ珍しい気もします。がんばります。

 

 

 リップル。登場話は「魔法少女育成計画limited」。言わずと知れた忍者魔法少女です。

 時系列的には無印から丸2年を経て、中身の華乃ちゃんは推定19歳。もしかしたら20歳になってるかなってないかという辺りの年齢です。大きくなったなー。大学には通っているんでしょうか。小雪ちゃんがこの頃高校1年生なので、あらためて結構な歳の差です。

 

 スカーフェイスでの登場は「スノーホワイト育成計画」が初出だったため、あの隻眼隻腕姿のリップルは初見という訳ではありませんでしたが衝撃でした。

 わひゃー。今現在(ACES読後)となっては、再登場魔法少女がそう易々と死ぬようなことはないだろうと比較的安堵しつつ読み進められるんですが、limitedの頃はそうはいきませんでした。

 リップル再登場。ピティ・フレデリカもなぜか再登場。これ死ぬんじゃなかろうか……大丈夫か……何でまたリップルが殺し合いに巻き込まれなきゃいけないんだ……隻眼隻腕で戦えるんだろうか……また仲良くなった魔法少女を眼の前で失って今度こそメンタルをガッと持っていかれたりしないだろうか……とひたすら怯えていました。

 

 

 そんな怯えと共に読み進めたlimited本編でのリップルは、無印の頃からは想像がつかない程に成長していました! 尖ったナイフ時代を乗り越え、暴力的な性質を引っ込め、寡黙で頼りになる歴戦の魔法少女として何故か頼りない感じの7753のフォローに回っています。

 高飛車でわがままで、指揮官にはわりと向いていないタイプの愛らしいマナ班長を相手取っても、無印の頃ならまず間違いなく舌打ちの一つはかましていた相手でも、おとなしく話を聞く精神性が備わっています。すっごい。

 

 いやあ真っ当に成長してくれていて嬉しい……。limitedリップルはすごく良い形に成熟していたと思います。かつてトップスピードと出会い、そして別れ、一度死の淵にまで落ち込むことでその別れを糧として大きく成長し。「個人を憎悪」していた無印当時のリップルとは明確に立場を違えています。

 

 

 そんな風に穏やかな気質になったlimitedのリップルが何故意欲的に出世を望んでいるのかといえば、ただただ新しくできた年下の友人を、「行為を嫌悪」して無茶ばかりするスノーホワイトを守ろうとしたいがためです。

 リップルにはスノーホワイトと同じ「何が何でもクラムベリーのような魔法少女の再来を許さない」という激しい感情はありません。ひとえにスノーホワイトに手を貸してやるために、風通しの良いところから支援をしてあげたいと思って動いています。

 

 あーー。この関係性が良い……。すごく良い。なにがよいかと言えば、リップルとトップスピードの関係が少しも貶められない(非常に際どい言い方であるとは思います)ままに、無印時は「憧れ」という線でのみ細く繋がっていたリップルスノーホワイトの関係が再構築されているのです。リップルの中で、トップスピードの存在が実によい塩梅で生きる形として取り込まれているのです。お姉さんしてます。

 

 無印での、生来の優しさを、魔法少女としての憧れを内心に滲ませつつも、基本的には怒り、怒り、激昂し、憎悪していたあの苛烈なリップルが最も自分の心を引き付けてやまないことは確かに事実なのですが。その苛烈さをしっかりと内に秘めたままで、ここまで成長してくれたリップルには喜びの溜息が出るばかりです。

 実際無印においても優しい子なんですよね。暴力的な性質の方がどうしても前に来ているところはありましたが。limitedではそのあたりがうまく混ぜ合わされてるイメージです。

 

 

 「成長」が精神面だけではないこともまたlimitedリップルの魅力の一つです。

 limitedリップルは……強い!とても強い。明らかに無印時よりも身体能力・魔法性能共に成長しています。明確に無印から魔法の性質をぐぐんと上昇させたスノーホワイトとは異なり、少しホーミング性能が強化された程度の「手裏剣を投げれば百発百中」という脳が焼けるような素敵魔法を振り回して宙を駆けてくれます。

 隻眼隻腕というハンデを一切感じさせない戦いぶり。リップルVSレイン・ポゥは名勝負です。limitedは名勝負が多すぎるんですが。「五感全てが戦いへと向かい、今はもうそれだけがある。」というどうしようもない名文もこのシーン産です。

 

 それで。そのリップルVSレイン・ポゥ戦において、リップルは。

 リップルが保護すべき存在だと認識していた中学生魔法少女・ポスタリィが、「何が何としてでも「友達」を失いたくない」という心境の元にリップルにクナイをブン投げたことによって、生死不明の大ダメージを受けます。

 

ここはほんっとうに……。

自分ははっきり「死んだ」と思って、しばらくlimitedを読む手を止めてしまっていました。ACESまで読んでいた中で、一番ぐわんと大きく揺さぶられたのは間違いなくこのシーンです。

 

翼を持ったクナイと手裏剣が持ち主を目指して一斉に飛び立った。

リップルは忍者刀を口に咥え、右手は手裏剣を掴み取りして投げつけ、下駄まで飛ばして迎撃を試みたが、返送された手裏剣とクナイの量はあまりにも膨大だった。

迎撃の網の目を抜けた翼付きの手裏剣とクナイが、忍者の頬、顎、肩、脇腹、胸と次々に突き刺さる。喉に刺さった一本によってリップルの身体は大きくよろめき、もはや迎撃も回避もできずに全身を滅多刺しにされた。やがて変身は解除され、コートを着た少女の姿に戻って穴の中へ落ちていった。

 

 いやもう酷いですよ。こんな風に書かれてメアリの死に方を思い出さないはずがないじゃないですか。自分が相棒と共に屠った敵と同じ形で殺される、それはリップルの死の形として「ありうる」ものだとその時の自分は強く思ったんです。

 だからこれ、リップル本当に死んでるかもしれないな、と、そう思ってしまったわけです。正直なところlimited初読時のここ以降はほとんど呆然としたまま読んだので以降魔法少女の死も上手く受け止められず「ああ……うん……死ぬ……」くらいのほとんど真っ白な気持ちでした。黒幕を知った時もただただ呆然としていた……。

 

 

 彼女が死にかけ、そして生き延びる一つのきっかけとなったのは「ピティ・フレデリカの命を救った」ということ。後悔しつつもとっさにピティ・フレデリカを助けてしまったということにはリップルの性質がよく表れていると思います。リップルにとって殺人は(たとえ「見殺し」だとしても)ものすごく重いことなのです。

 もはや殺しが一切必要とされていない状況で、自分の手でスイムスイムを殺したリップルが、どれほどトップスピードのことを大切に思っていたか、ということがここで遠回しに刺さります。「スイムスイムを殺した」ことは、リップルにとって重石として描写されることはありません。後悔の重石とならない程に大切な殺人だったわけです。うーん伝えづらい。リップルにとってのスイムスイム殺しは、ただネガティブな「殺人」として以上の意思があったんじゃないかなあ、ということ。 (追記:limitedにおいてちゃんと重石になってました!!! しかしそうやってじくじく後で考え込める程度には人の命を奪うことに対して抵抗がある人間が「殺す理由はない もうやめよう」と諭されてなお殺人を選んだというのは並々ならぬ感情大爆発なんじゃないかなあと思います。どっちに転んでも重い殺人であることに変わりはなく)

 

 しかしここで見殺しにせずにフレデリカを助けたことによって、リップルちゃんの洗脳生活が始まってしまうわけなのですが。以後で好き放題動かされてあんなこんなになってしまうわけですが。ああ……。どうしようもない。

 でもとりあえず生きていてくれてよかった。命あっての物種ですから。というかこのフレデリカさんの「生存運」云々の話を経て、自分の中ではリップルは「死なない」印象になりました。死ぬギリギリまでは行くんですが。

 「死なない」と言うより「死ねない」と言うべきか。死ぬよりつらいめにあうと言うべきか。つらいなぁ……。リップルのこれからを見守りたいです。

 

 文字数の関係で好きなイラストとセリフは省略して以上です。明日もがんばります。