すふぉるつぁんど

主に遠藤浅蜊著「魔法少女育成計画」シリーズについて書き残していくブログです。

まいにち魔法少女95日目(最終日):プリンセス・デリュージ(QUEENS)

 

 本日のまいにち魔法少女です。今日で最後。ナンバーは3、プリンセス・デリュージでした。

デリュージ、とんでもなく魅力的なキャラクターでした。最後かー。やっていきます。

 

 

 プリンセス・デリュージ。トランプシリーズ初登場の魔法少女であり同時に皆勤賞の魔法少女ですねー。JOKERS・ACES・QUEENS全ての登場人物欄に載っている魔法少女は彼女とスノーホワイト二人だけです。いろいろ対になってるのかなあ。

 思い返してみればJOKERSの彼女は、中学二年生という若さで事件に巻き込まれてしまったり、様々なことに流されるまま自分で選びとることができず守りたいものを失ってしまったり、そういう要素が無印スノーホワイトと共通しているように思います。自分で戦う能力はちゃんと持っていたり、魔法少女について拘っているわけではなかったり、違う要素も勿論たくさんあるんですけどね。

 

 初登場からこっち、彼女はとにかく利用され通しです。色んな魔法少女の思惑に振り回されている。魔法少女化した成り立ち自体田中先生の……プフレに言わせれば「身勝手な理屈」によるものだそうですのでひどい話です。

 この辺りの、プフレがデリュージを「利用する」ためにちらつかせた餌としての情報はプフレ死後ちゃんとデリュージに引き継がれたのかなあ。田中先生に都合の悪い情報だけ綺麗にすっぽ抜けてたらとんでもない話ですが(ラズリーヌがデリュージに鍵を渡したのだから、それまでに残された資料を検閲する機会はあるわけで)……デリュージについては初代も何かしらの思惑があると読めなくも……なくもない(「自分でそう仕向けたくせに酷い話だねえ」)ため、もしかしたら情報まるごと残ってるかもしれません。ただデリュージに関しては「プフレから指摘されるまで彼女のことが頭から抜け落ちていたかのようだった。まず考えなければならない相手のはずなのに」なので田中先生はしっぽ掴ませてくれなさそう。まあこの辺は初代の情報があまりにも無いために考えてもどうしようもないところかなー。余談ですがデリュージもスノーホワイトと同様、三代目知識初代知識まるごと抜かれることができるポジションの人なんですよね。エピローグデリュージの「ブルーベル」表現が不穏と言えば不穏……。二版修正とかなければいいですね切実に(ACESで学習した)

 

 

 そんなこんなでとにかく初代にいいように扱われっぱなしのデリュージ。ACESにおける彼女のご乱心は読者の度肝を抜いたわけですが、もはや狂気に近いところまで行ってしまっていた彼女の激情の種がQUEENSで明かされたのは、ほとんどACESの段階でわかっていたこととはいえ気持ちよかったですねー。わかっていた、といっても

 

 どのように戦うか、立ち回るか、到着するまでに脳内でシュミレーションを行っていたが、トランプ兵士の姿を見た瞬間、全て吹き飛び、デリュージの頭の中は別のなにかでいっぱいに満たされた。怒りで満たされたのか、喜びで満たされたのか本人にもわからなかった。

 

 まさかこの「わからない」まで三代目の仕込みだとは思ってませんでした。本人にもわからなかった、のはACES段階だとデリュージが気持ちの整理を付けられないまま復讐行為に走ってしまったからかなぁ、などと呑気に考えていたのですが、そりゃあ自分で出して来たのではない規模の感情を余所から発生させられたらわけわからないはずです。

 デリュージの洗脳……洗脳が解けたことは登場人物紹介の立ち絵でも確認することができますね。JOKERSの頃に戻っている! プフレによるブルーベルの正体告知であ~~となりつつ見返してなるほどだからデリュージがJOKERS仕様なのか……と納得しました。個人的にはやっぱり笑顔のデリュージちゃんがいいので戻ってくれてよかったです。

 

 

 ダークキューティーの日を初めとして何度か書きましたが、QUEENSのデリュージはとにかく悩みっ通しです。ACESでの自分の異常に気付き、悩み、プフレと行動を共にすることに悩み、自分が人を殺してしまったことに悩み、田中先生に裏切られていたことに悩み、ピュアエレメンツを喪ったことに改めて悩み苦しみ、ブルーベルに裏切られたことに悩み……。「どれだけ、自分はどれだけ騙されていたというのか」という地の文が重く痛々しい。

 

 彼女はわからないことがたくさんある中でそれでもプク・プックの魔法少女育成計画inアクアリウムを阻止するために走ります。正直本当に田中先生どころの話ではないですからね……。プフレ、ダークキューティーと共に駆け、駆け――最終的に彼女は、ACESの頃からあまり敵として戦いたくはなかった魔法少女ことスノーホワイトと相対します。

 デリュージはスノーホワイトと戦いたくなかった。それでも戦わなければならない彼女は、ピュアエレメンツのことを想って三又槍を振るいます。スノーホワイトインフェルノに直々に最期の想いを託された存在なのに、今は悪いやつの味方をしている。それは止めさせなければならない――というわけでデリュージはスノーホワイトを攻撃する躊躇いを吹き飛ばすようにラグジュアリーモード・バーストを使用します。

 

 ここでピュアエレメンツについて強く考えていた彼女が偃月刀にざっくりと斬られてしまうのは皮肉というか残酷というか……残酷ですね。スノーホワイトにとっても、デリュージをインフェルノの遺品で斬るとかまともな精神なら絶対にやりたくないことだったと思うんですが。

 もしこれでデリュージが死んでいたらうかばれないなんてどころの騒ぎでは無かったですはい。

 

 まあデリュージは生きてたわけでよかったね……。というかデリュージは初読でも生きてる気持ちで読んでいた気がします。なぜあんなにデリュージ生存を疑わなかったかちょっとよくわからなかったんですが、意識を失いかけるデリュージの地の文こと

 ぼんやりとした中で見えたのはブルーベル・キャンディだった。最期に見る幻くらい、選ばせてくれればいいのに、と苦笑いし、デリュージの意識は闇の中に沈んでいった。

 が、

 意識が薄らいでいく。視界の隅でスノーホワイトが泣いている。死に際に見る幻としては垢抜けない。リップルは舌打ちをして目を閉じた。

 を これ以上なく明確に思い出させる文章だったからではないかなーと思いました。リップルも生きてたしならデリュージも生きてるでしょうという感じ。ここのリンクはデリュージちゃん主人公説に大いに貢献すると同時に無印から続いてきた確かな流れを感じさせて非常に好きです。リップル元気してるかなぁ……いや元気なんだった……

 

 

 ともあれQUEENSを無事生き延びたデリュージ。彼女は悩みに悩んだ魔法少女で、エピローグでもまだ悩んでいます。利用されるばかりだった彼女はプフレに遺されたものによって突如選択肢の多い立場に立つことになりました。ブルーベルという友達を失ったデリュージは、その代わりというようにプフレの遺産と魚山護を押しつけられます。

 

 このエピローグについて再読した時思わず苦笑してしまう描写がありました。序盤の遺跡入りする前のデリュージの煩悶なのですが、

 ぎゅっと目元に力を入れ、目を開けた。
 目的をはっきりとさせる。プフレを使うためにはシャドウゲールという枷が要る。今は共に戦っていても、いつかは決別するということを忘れてはならない。シャドウゲールを最終的に手にするのはデリュージだ。

 ここ。あはは本当にそうなりましたね。ただもう枷を付けておくべき魔法少女が居なくなっちゃったんですけど。


 プフレと行動を共にするにあたってそんなことを考えていたデリュージが、「プフレを利用する」という目的を前払いするが如く色々な遺産を彼女から押しつけられ、それと共に魚山護を任され、護を放り出せるかといえばそれは難しいでしょう。死んだ魔法少女の想いが生き残り魔法少女に良くも悪くも絡んでいくのが魔法少女育成計画で、時としてそれは呪い的側面も持つ……ということは既刊を読んできてよく知っているわけですが、プフレがデリュージに託した意志ほど「呪い」に近いものはないと思います。
(但し書きですがこの「呪い」という言葉にプフレが実際にデリュージに恨み等の負の感情を持っていたか否かという要素は含まれていません(でもデリュージちゃんをプフレが多少恨んでたのは事実)。プフレの意志は死後も魚山護を守ろうという方向に余韻を残し続けていて、本当ならば死んだ魔法少女の意向なんて幾らでも反故にできてしまう立場にある、別に仲良しではない生き残り魔法少女の行動を方向づけていく。そしてそれは明らかにプフレの意図した事象である……というところに、人を縛ることをはっきりと意図した上での遺志であることを強く感じ、それは呪いと呼んでも差し支えのないものじゃないかなあという気持ち)

 

 魚山護と共にデリュージに与えられたのは彼女曰く「ろくでもないもの」。細々と挙げていけば、「プフレの管理していた施設まるごと一軒、その中の設備、武器防具、薬品、山ほどの書類や資料」とのこと。資料ほんとにろくでもないことばかり書いてそう。それらを使えば、デリュージはいろんなものを、いろんな人を動かすことができるとのことで、デリュージにできることの選択肢はとんでもなく増えたそうです。彼女はこれからどうするんでしょうか。


 魔法少女になんてならなければよかった。誰かに操られていても、それでよかったじゃないか。魔法の国なんてなくなってしまえばいい。デリュージの想いは三部作の中でどんどん変遷していきました。自分がなにをしたいのか、エピローグの段階でのデリュージには明確な答えはありません。

 彼女が何を選ぶのか、これからどうしていくのか……それがここから先の魔法少女育成計画に大きく関わってくる要素かなあと思います。マナに羽菜の死が打ち込まれているように、デリュージにはピュアエレメンツの無念の死が打ち込まれています。そんな彼女がわからないなりに出していく答えがこれから楽しみですね。

 

 

 好きなイラスト。扉絵。こうして見るとデリュージがショートヘアを横に流している髪型だというのがわかりやすいように思います。デリュージVSスノーホワイト戦見事だった……。JOKERSからデリュージのこと好きでしたが、QUEENSを経て彼女がここまで「これからどうするのかが気になる・楽しみ」な子(話を回していくのが楽しみな魔法少女)になるとは思いませんでした。上がり続けていたその印象を最後にぐっと押し上げたのはやはりこの一戦かなあとか。

 

 

 好きなセリフ。うーんデリュージは地の文が魅力的な魔法少女ですが、「私がスノーホワイトを……殺してしまうかもしれませんが」の言い淀み具合が好きです。殺す! って叫んでたデリュージちゃんはもう居ないんだな……。

 

 

 というわけで長らく(そこまで長くはない)続いたまいにち魔法少女extraも今日で終了です。やったー。文字数を1.5倍にすればそれは当然ながらかかる時間も1.5倍になるということを考えなかったのはどう考えても馬鹿でしたが、そして二人ほどその枠から更にはみ出たりもしましたが、とりあえずまいにち完了できてよかったです。

 書くことでQUEENSの消化がだいぶ進んだ気がします。わからないことが多くても何がわからないのかをはっきりさせておくのは大事だと思う思いたい。明日まいにち魔法少女を終えての本当に軽い感想を書いてまいにち魔法少女extraは終わりにします。毎日お付き合いして下さった方いらっしゃったらありがとうございました。