すふぉるつぁんど

主に遠藤浅蜊著「魔法少女育成計画」シリーズについて書き残していくブログです。

breakdown6話感想

 

 わーいbreakdown感想です。とはいってもはるばるの追いかけになるので取り急ぎ最新話の感想を、というか6話面白すぎるので6話のこと書きたくて書きます。

 F2Pといいbreakdownといい最新話が出る度に面白い面白かった面白すぎると定型句のように発言している自分ですが(面白いので……)6話はもう、なんというか、最高じゃないですか、遠藤先生の戦闘描写、狂人描写、張られる伏線、マジカルラブコメサスペンス、明らかに不穏な気配!

 魔法少女育成計画のここが好き! という要素がもうこれでもかと詰め込まれた至福の49ページ。素敵なところ語り尽くせるとはとても思えませんが、とにかく楽しかったところ、キャラに焦点当てつつ書いていきます。好き……。

 

 

ドリーミィ☆チェルシー

 

 はー! 6話のドリーミィ☆チェルシー……素晴らしかったですね! ドリーミィ☆チェルシーが身体能力の高い魔法少女であることは5話以前までで明確に示唆されていたので、だらだらお茶目ニートのような振る舞いをしていたチェルシーの6話での突然の大無双も興奮と喜びをもってスッと読めてしまう。

 

 にしても強かった! 比較対象が恐らく全員戦闘派ではない魔法少女なので、彼女が「戦う魔法少女」と戦った時どの程度立ち回れるのかというのはわかりませんが(そもそもこの戦闘に殺意の入る余地は(一応……)無いので、殺し殺されるという状況におかれた場合清く正しい魔法少女についての拘りが強いドリーミィ☆チェルシーがどの程度それを許容できるかというところは気になっています。まあ洗脳されちゃったので平気でぶっ殺せる方に傾いちゃう可能性も全然あるんですが……)、とにかく彼女が「戦う魔法少女の一人であることはこれで確定しました。多対一をほぼ制せているあたりかなりの手練れっぽいような。

 やっぱりお母さん仕込みなんでしょうか。「自分の戦闘能力が高い」ということをちらりともチェルシー視点に滲ませなかったあたりの養成されてる感すごい……。これは魔王塾生の娘かなあ。

 

 

 戦闘描写についてはとりあえずさておき、冒頭の彼女に付いて。シェパーズパイくんを庇い、パステルメリーは盗みを働いたりはしないと言い切り、(恐らく誘拐された)友達を守るために危険な単独行動に走るチェルシー

 彼女の行動原理には己の「魔法少女」への哲学と、自分は魔法少女であるという強い意志がありました。わーー魔法少女だ……! この辺りの信念を通す人達はシリーズの随所で見られましたがやはり何度見ても楽しいですね。まあ洗脳されるんですけど……(二回目)

 

 ただ彼女の「意志」にはふんだんに遊び要素が入っているというか。遊びが入っていることこそがチェルシーにとっての「魔法少女」であるというか。人にとっての「魔法少女」の定義は千差万別というか、何だかんだいっても彼女はやはり今までのんびり生きてきた子というか……。チェルシーの戦闘スタイルはまさに彼女ならではといったものでした。

 

 シーンをちょこちょこ飛ばして、問題の(?)チェルシー戦闘シーン。breakdown始まって以来の魔法少女間戦闘。ああ~~本当に良かった……。何度読んでも頬が緩みます。

 岩石を握り潰して作った星を攻撃の用途に使うでもなく、でも足場として空中に浮かぶ恋々へ距離を詰める。攻撃・防御の手段も「ポーズの途中で身体がぶつかる」「舞うように回転する」というもので、それでも戦わない魔法少女三人を相手取って蹴散らしてしまう。異常だ……。

 これ、「チェルシーが許容できる戦い方」を不承不承お母さんが教えたのか、それともお母さんの実践的な教えをチェルシーが自主的に捻じ曲げたんだろうか。どっちにしても異常です。チェルシーの拘りの強さも、拘りが強いままこの高い戦闘力を実現させてしまう才能も!

 

 しかしそれでも一撃貰うと強制的に戦闘を終了させてしまえる恋々の魔法が強かった……! チェルシーも一撃貰うとよくないということはパステルメリーへの腹パンあたりからわかってたように思うんですが、そこはネフィーリアの小狡さが勝ちに繋がりましたね……。

 ああ素晴らしい戦いだった。チェルシーが恋々を置いてメリーの方に行ったときはうわーメリーが刺してここで決着か!? と思ったんですけどそんな想像さえ飛び越えてしまう(そしてそれさえももう一捲りされてしまう)魔法少女間戦闘の巧みさです。最高。

 

 

 これからのチェルシーまわりで気になるのは……やはり恋々の魔法の効果ですね。

 今のチェルシーにとって恋々は恋敵。この一方通行の恋心が捻じれて育った場合、高い戦闘能力を持つ狂人ことチェルシーを恋々は御すことができるのだろうか……。一見全てがアグリチームにとって上手く運んだように見える6話ですが、不穏要素はまだまだあるように思います。一先ずはこの泥沼恋愛模様を注意して眺めていたい。

 そしてもしものもしもこれからどんどんbreakdownが血腥い方向に転がっていった場合、ドリーミィ☆チェルシーの「魔法少女」観がどれほど揺るぎないものでいられるか……ということも気になります。breakdownがどうなるかはわかりませんが、彼女は彼女の信じる「魔法少女」で居続けることができるんでしょうか果たして。

 

ミス・マーガリート

 

 マーガリートさん。彼女はは投稿魔法少女他4人のすったもんだには関与してませんでした。そこはちょっと残念……ですが、彼女の恐らくは無人島内トップクラスであろう戦闘能力が発揮される機会をまだまだ楽しみに待てるというのは嬉しいですね。

 チェルシーとは違う種類の強さを拝むことができそう。マーガリートさんはプロなので……少なくとも武器の軌道を無意味に星形にするとかいう遊びを取り入れる人ではなさげです。

 

 彼女の地の文は、考えていることが常識的かつ経験に裏打ちされた説得力を持っていて、緊迫しているシーンも読んでいてとてもとても楽しいのですが……6話は一つ引っかかるところが。

 

 マーガリートは不思議と冷めていた。なぜかと自問したが答えは出てこない。協力しなければならない状況で協力できず、弱者を切り捨てようとし、少しでも自分が得をしようとする。危機に陥った時に見える地金としては限りなく最低に近い。普通ならマナのように腹を立てる。しかしなぜか冷めていた。なぜか、言語化し難い妙な――

 

 ここなんですが……こういう描写、マーガリートさんに始まったことじゃないんですよね。統太くんも5話で同じような感覚「怖いのはもちろんなんだけど、なにもかもが現実じゃないみたいだった」でいましたし、同じ6話ではチェルシー「ここにいるのは確実なのに、ここにいるという気がまるでしない。どこか別の場所からテレビモニターを通して見ているようだ」ということを考えています。これは……何かあるかもしれませんね。投稿魔法少女の中にそういうことできそうな人はあまり居なさそうですが。

 

 メイと並んでプキン的強大存在と対峙するマーガリートさん格好良かった。そんな彼女が統太くんとコミュニケーションしてるところは、キレのある歴戦魔法少女的ではない不器用さが見えてかわいらしかったです。

 投稿魔法少女の中で魔法を明らかにしていない魔法少女はマーガリートさんが最後となりましたが……彼女が魔法を使うのはあの殺気の持ち主相手か、それとも魔法少女相手か、はたまた魔法使い相手だったりするだろうか。

 

らぶみー恋々

 

  恋々……恋々!  やーー自分は恋々が大好きなんですが、、6話でまた新しい好きなところが出てきました。魔法です! 単純な洗脳魔法にとどまらない(でも通りがいいから洗脳魔法ジャンルに分類しちゃうんですけど……)複雑な、使用者でさえ上手く扱いきれない魔法。天使みたいなお顔の恋々ですけどキューピッドめいた弓矢の効果はなかなか悪魔的でしたね……!

  矢で刺した一人目はらぶみー恋々を好きになり、二人目は一人目を好きになり、三人目は二人目を好きになり……という地獄の一方通行恋模様を作り出す恋々の「魔法の弓矢で射止めた相手をメロメロにするよ」! この魔法で恋々が収拾のつけられない大やらかしをしたのは過去に二度とのことですが、むしろ二度で済んでることがすごいような。それはそうとまほいくって過去に二度やらかしをする凶悪魔法持ち魔法少女がちょくちょくいらっしゃいますね。

 

  そんな素敵魔法の持ち主こと恋々ですが、戦闘描写もまた素敵でした。少しでも矢をかすらせることを第一目標として立ち回る恋々の矢をキーパーツとして張り巡らせた多段階の罠。メリーを助けると宣言したチェルシー対策として予めこの作戦を組み立てていたとしても、かなりの急拵えのはずで……なのにとてもしっかりしています。これに言葉のないまま応じたネフィーリアも含めてすごい。

  戦闘描写としては翼を羽ばたかせて落下時のスピードを緩めたり、尻尾で矢を持って不意打ちの攻撃にしたり……といった身体的特徴を活かした動きが見られたのも楽しかったです。

 

  ただ今回の恋々の戦闘は、彼女にとってはほぼ望んでのことではなかったようです。そもそもパステルメリーに矢を刺すこと自体に気が引けていた様子。これまでの恋々の描写からアグリの言うことには躊躇なく全身全霊で従っていくのかなと思っていたら、そうでもないみたいですね……。恋々は悩みながらもアグリに従っています。パステルメリーに対する罪悪感も持ってるようだし、もしかして恋々ってちょっと人間の見方が独特でほんの少し人格形成がユニークで意思表示が多少圧があるだけの常識人なのではないか!? はい。7話以降も楽しみですね。恋々の魔法で5人全員が恋愛大パニックになってハチャメチャラブコメディが始まる可能性もまだ一応ある。

 

パステルメリー

 

 さくっと洗脳されてたパステルメリーちゃん。5話での失踪の理由は意外と早く開示されましたね。灰色の実強奪事件については、恋々の迷いもあり曖昧な指示を受けた結果、個人的な暴走としてやらかしちゃったみたいです。恋心は多少の良心の呵責とかやっちゃいけないことへの判断あたりを結構鈍らせてしまうみたいです……。

 それでも彼女の恋心の表現型は可愛らしいもののように思います。

 

「すいませーん、遅れましたー、ごめんなさーい!」

 パステルメリーはスライディング気味に飛び込み、恋々はタックルを切る格闘家のような態勢で受け止めた。メリーは恋々の胸に顔を埋めた。呼気の熱を感じ、思わずメリーを引き剥がそうとしたが、メリーはそれに抗い、思いもかけない力強さで抵抗した。

 

 可愛らしい……可愛らしいだろうか? いや可愛らしい。改めて強制百合発生装置(ただし二射以降強制泥沼発生装置と化す)であるところの恋々の矢破壊力がすごいなあ。

 しかしまあ6話のメリーは腹パンがあまりにも印象的すぎて。チェルシーのところで大いに書きましたが、あそこのチェルナー&メリーのシーン、明確に読者に「やばい」と思わせておいての鮮やかな腹パンには唸るしかなかった。零れましたが羊と一緒くたに固まってるメリー好きです。かわいい。特に恋愛対象ではないチェルシーにくっつかれて辟易してるメリーかわいい。

 

ネフィーリア

 

 視点こそありませんがスッと活躍を挟んでくるネフィーリアちゃんです。端々でかわいさがちらつく。

 メリーに抱き付かれた恋々に助けを求められ、にやにやしながら引っぺがしたり、4話ではただの悪戯で行われていた背中つんつんが意志疎通に用いられていたり……ネフィ恋の細々したやり取りとても好きです。チェルシーにはそんなに通用してませんでしたがびっくり箱ネフィーリアかわいい。

 

 ネフィーリアのちょっとした抜け目なさというか、恋々の気が回らなさそうなところに意識を向けられる性質はなんとなく彼女と噛み合っているように感じます。6話では恋々より先に来襲者に気づくシーンが二度挟まれてましたが、気配察知力が高いのかな。恋々が精神的に疲弊してるというのもありそう。

 恋々まわりの相関図が大変なことになっている6話ですが、矢を刺していないネフィーリアだからこそ――みたいな関係が見られていけたら嬉しいなあ。

 

 彼女は何を以てアグリに協力しているのか……ということは少し気になります。アグリに従うことに迷いをもったままずるずると混沌に身を投じつつある恋々ですが、ネフィーリアのほうはどうなんでしょうね。

 

再登場魔法少女たち+α

 

7753&テプセケメイ&マナ

 今回は7753とマナの描写は控えめでした。非戦闘員なのに踏み止まって身を呈して瓦礫からマナとシェパーズパイさんを庇った7753はえらい。

 

 7753チームだと描写が多かったのはメイですね! 個人的に彼女が「マーガリート」をしっかり実名で呼んだことにかなりびっくりしました。メイにとってマーガリートは何か新しい印象の人だったのかなー。

 呼び方といえば彼女の未確認危険存在についての「プキン」呼称は改めてぞくっと来ました。本当に旧式魔法少女か……はわかりませんが、正規の魔法少女ではない可能性が高そうです。対話可能存在かは怪しそう。

 メイにはメイなりのものの観方があるように思えるのですが、でもやっぱり基本何を考えているのかあんまりわかりません。

 彼女視点の地の文はかなり独自で大好きなので、breakdownでも見られたらいいなあ。そして彼女の愛読書が芥川っぽいのはちょっと楽しい。まほいく推薦図書魔法少女育成計画にほんの少しでも接点ないし関連がある実在の本)はいつかまとめてみたいところです。

 

 

アグリ&ナヴィ&ラギ

 魔法使いたちの中で特別気になるといえばまあアグリとナヴィですね。あの2人はマーガリートとマナが魔法少女の魔法と魔法使いの分野について開示させようとしたのをほぼ意図的に遮ってましたし、そして事実としてアグリはやらかしてますし……。彼女の目的は恋々にどう響くんだろうか。

 アグリちゃんは今回の事件発生の一翼を担当してるのに、なんとなく探偵っぽいニュアンスの言葉を喋ってるのがちょっと面白い。「そもそも敵なんてものが」っていう呟きがものすごく印象的です。もしかしたらbreakdownは平和的に終わったりするかもしれません。マイヤさん既に死んでるけど……。

 ところでどさくさに紛れて行方不明になったラギおじいちゃんの安否が心配です。もしかしてクラリッサが持って行ったんじゃないだろうか、その場合ちょっと……ますます心配です。

 

 

クランテイル

 そしてクランテイル。おじいちゃんの世話を焼く彼女を見ているのは心温まるような……ラギおじいちゃんの容体が思わしくないのでそうそう和んでもいられないのですが。しかし言葉を介さない気配りなら(人間とのコミュニケーションを苦手と自称する)クランテイルもするっとやってしまえるのは素敵です。本人が認めるかどうかはわかりませんが人間とのコミュニケーション不得意っぽいラギさんと凸凹ながら素敵なコンビであるように感じる。

 6話ではクランテイルさんの豹形態がお目見えでした。豹といえばrestartではプフレ&シャドウゲールとの最終決戦時にとった形態でもあります。彼女の魔法大好きなのでこうして変身シーンが見られてとても嬉しい。変身時に「光に包まれる」という描写は初めて見たような気がするんですが……もしかしてrestartで既出だったりするかな。ちょっとrestartのクランテイル周辺描写よく浚っておきたい。

 

 

 6話感想は以上です。この6話で前編1冊できるくらいのページ数が溜まったんじゃないかなーと思ってるんですが、breakdown前編が先に発売されたりしないかなー。今年本が出るとしたらbreakdownくらいだろうとぼんやり思っているので発売されてほしい。