すふぉるつぁんど

主に遠藤浅蜊著「魔法少女育成計画」シリーズについて書き残していくブログです。

breakdown10話感想

 

 あけましておめでとうございます。いやあけましてでもなんでもないんですけど、以前の記事で2017年クリスマスから脱出できないとかほざいてたらなんやかんやあって本当にずっと2017年のままになってしまった……。

 というわけでbreakdown読みました。は〜〜滅茶苦茶面白かった。breakdownもいよいよ佳境という感じがしてきて緊張です。以下感想。常の如く冗長です。もう本当にどうにかしたいと書き終わってからいつも思う。

 

 

ミス・マーガリート

 

 はい。マーガリートさん……マーガリートさん。自分は脱落描写だと思っているんですけど(単刀直入)、偶然魔法少女が通りがかってくれたりしたらまだ瀕死で救出されるくらいはある……かも……しれませんね。運良くクラリッサがサーチ系魔法少女ですが、しかしマーガリートさん自身が警戒を怠らない魔法少女であるがためにクラリッサが噛みつけてないだろうというこの悲しさ。

 これこのままマーガリートさんが出てこれないままだと周囲からすると行方不明のまま処理されることになっちゃいそうですけど、そこはさすがにどうにかなるんだろうか。

 

 そう、死に瀕したマーガリートさんの地の文。あれを読んで、ああ〜好きな文章……と思ってしまうのもやっぱり事実で。魔法少女として努力と鍛錬を怠らず、あの島でトップクラスの実力と武力を持っていたであろう彼女が、強制的に変身を解かれ、人間として泥の中で推定溺死する。溺死は苦しい。描写が苦しい……。

 そこに至るまででマーガリートVSフランチェスカの目まぐるしい攻防が見られていただけに、ここの急ブレーキ、そして急速な危機的状況はしんどかった……。「もはやなにも無い」という一文は魔法少女育成計画restartの章題を思い出します。好きな章題です。

 

 

 それはそれとして泥に沈んで追っ手の足音を頭上に聴きながら死ぬというのは死に方としてあまりに息が詰まる……。

 直近の最新刊であるところの魔法少女育成計画QUEENSにはこういった唐突に突き落とすような死は少なかったというか、話が大詰めの三部作最終巻でなおかつほぼ戦場が舞台であるがために死に至る経緯を読者が比較的噛み砕きやすかったところがあったように思うんですが、こういう……魔法少女育成計画の死って時にはこういうものだったな……ということを思い出しました。必ずしも壮大で何かを成した後に訪れるドラマチックなものではないという死のあり方が好きです。全部死で全部好き。

 

 マーガリートさんの死(にかけるところ)を見ていて改めて感じたのは、この「強制的に魔法少女状態を解除することができる」という仕組みは魔法少女にとって巨大な脅威であるということです。これ使われると魔法少女ってひとたまりも無いですよね。

 プフレと初代が「魔法の国」への対抗手段として人造魔法少女を生み出したのにはこういう技術の対抗手段というのもあるのかな。推定人造魔法少女であるところのフランチェスカは薬を服用することでこの島のシステムと関係ない魔法少女活動ができてるわけですし。あの薬って普通の魔法少女が服用しても魔力増強の効果あるんだろうか。

 

 

 さて魔法少女の死とその魅力について以外の感想なんですが、「コスチュームの一部である細剣は再利用することができる」という描写は魔法少女コスチューム事情を見るのにかなり有用で嬉しかったです。こういうあれこれ考える足がかりになるような短い描写は本当に楽しいですね……。

 

 マーガリートさんに限らず、「魔法のアイテム」ではない武器や所持品は結構な前例があります。代表的な武器持ちであるところのリップルの無限クナイはlimitedの描写をみる限り投げたものがすぐさま「再利用」されているわけではない(本当にどんどん出てきてる)ので同様の処理がされていると言えるかはわかりませんが……ある程度コスチュームの一部が身体を離れると同じものを元の場所に複製できるようになるみたいな仕組みなのかもしれません。今に始まったことではないけれどエネルギー保存を平然と無視する魔法少女たち。

 あと美々の無限武器はどちらかというとコスチューム付属品というよりコーディネート魔法由来で発生した無限性っぽい……と解釈してます(巨大カットバサミがコスチュームに元々付属してるかどうかという話)。チェルナーの無限ヒマワリの種とかメルヴィルの無限銛とかはとても「再利用」っぽいかな。

 

 ピティ・フレデリカや7753が困っていたあたり魔法の発動とかなり密接に関係している「魔法のアイテム」は簡単に再利用再生産というわけにはいかないんでしょうね。魔法のアイテムが完全に破壊されてしまった場合は再生産できるんだろうか。

 コスチュームの一部なら即座に再生産できるということは服が弾け飛んだラ・ピュセルも念じれば女騎士姿には戻れたのかもしれませんが推定下着ボティペイントで走って帰ったみたいですね。とりあえずこの描写によって魔法少女ってコスチューム破れたらどう修復されるの問題はかなり片づいた気がします。

 

 

 そしてやはり(最後以外で)読んでいて胸を打ったのは言うまでもなく「まるで自分に言い訳と誤魔化しを施しているかのような論法だが、前向きでなければなにもかも上手くいかなくなるのが、マーガリートの知る「魔法少女という生き物」だ」という描写でしょう!過去に何度もこのような思考法で自分の才能や能力を伸ばしていく魔法少女の描写が見られ、そしてマーガリートさんも同様に魔法少女の心の力を認識している方でした。

魔法少女という生き物」、素敵な響きです。魔法少女は感情によって強くなりもすれば弱くなりもする、後ろ向きになれば何もかもうまくいかなくなり、しかし強い感情の爆発が死を引き寄せることもある。舵取りを損なえば却って身を危うくしかねないのが感情というパワーで、それは魔法少女と感情の関連に発生する巨大な魅力の一つだと感じています。

 

 マーガリートさんの地の文でこういった魔法少女の精神のあり方について軽く触れられたからこそ、人間に戻り死につつある彼女が「自己満足のためだけに魔法少女として死」んだアンナマリーに想いを馳せる描写がここまで深く刺さるのだと想います。マーガリートはアンナマリーの死によって生じた自分の感情を埋め立てて、過去を思い出さないようにしながら生きていました。その彼女が人間として恐怖の中で死にゆく折にアンナマリーのことを想う。

 このような形でアンナマリーという死者の要素が物語に差し込まれるとは、と溜息が出るような構造の結び方。「死は死だ。終わりだ」。感情と魔法少女と死。結局最後の話をしている……。

 

らぶみー恋々

 

 はい恋々。知ってた。いや知ってたとは到底言えないんですけど、恋々のこう……ぼんやりとした薄気味悪さのカーテンがじわじわめくれていくようで、ああ〜〜好きになってしまう。魔法少女のぐちゃぐちゃな思考大好き。お母さん死んでるんだろうなあこれ。

 

 恋々の試験を担当したのは何か素敵な価値観を持ってそうな魔法少女試験官で、試験官といえば合格者の試験についての記憶を封じるもの(語弊)ですが、では恋々がお母さんの(推定)死の記憶が曖昧になっているのは試験官の記憶封印によるものなのでしょうか。

 これまでに出てきた多数の記憶喪失者を振り返ると、「思い出そうとしても靄がかかったようになる」「そもそも思い出そうとしない」というケースが多く、「私を置いて出て行った」という偽りのエピソードで整合性を取っている例は珍しいように思います。そして更に謎なのは恋々の深いお母さんへの愛。もしかしたら恋々本人が殺したかもしれない対象へのこの無条件の「好意」、どこからきたものなんでしょうかね! 謎ですね!

 

 謎と言えば恋々のアグリに対する感情も大きな謎です。「もうただの雇い主とは思えない。大切な人だ。恋々にとってはお母さんと同じくらい大切な人だ」この好意こそ全く出所がわからない。愛を扱う魔法少女本人の愛が一番わからない……いやどうなっても楽しいだろうな。というかお母さんを殺したかもしれない恋々にお母さんと同じくらい大切判定されるのあんまり穏やかじゃなくていい。

 

 それはそれとしてチェルシーとメリーは、扱いの上ではアグリの仲間だ。ナヴィの連れがアグリの仲間を傷つければ契約に引っかかる」という言葉が11話でどうなっているのかが非常に気になります。クラリッサの発言を見るに女神はほ……とんど確実にナヴィサイドの存在なんですけど、ナヴィさんが契約を込みで落ち着いているということは女神は暴走しているというわけではなく全て折り込み済みってことなんだろうか。それだとあまりにも悪ですけど……。女神はどうにか契約の範疇からは外にあるのかな……。

 

パステルメリー

 

 メリーはかわいい。「わからない、わからないけど……わからないってなんだっけ……ええっと」がかわいい。混乱したメリーは頭がバグりがちでかわいい。11話で戦場に巻き込まれそうですが無事でいてほしい。

 

ドリーミィ☆チェルシー

 

 二人の魔法少女は落ち着かない有様ながらもどうにか聞き入れてくれたらしく、パステルメリーの生み出した羊が穴を掘り、チェルシーが変わり果てた姿のシェパーズパイを抱き抱え穴の底に寝かせた。シェパーズパイに触れたチェルシーは、酷く悲しそうな顔で「冷たい」と呟き、ぽろりと涙を流した。ラギはそれを見てより苦々しく歯を噛み締めた。

 

 ここ好きです。マイヤさんの亡骸を埋葬しないのかというごく一般人的な提案をしたシェパーズパイくんを埋葬するチェルシーが、死者は冷たいのだという当たり前のことを読者に思い出させてくれる。

 

 うーーんそれで11話チェルシーの本気戦闘が……見られるかな!? フランチェスカのスタイルが戦闘相手の動きを吸収するというものなのでチェルシーの戦い方が学習された場合それはもうとんでもないことになるのではないだろうか。ちょっとわくわくしてしまう。

 チェルシーが女神相手にどれほど立ち回れるんだろうか。とりあえずチェルシーの灰色の実が潤沢であるということはよかったですけど、マーガリートさん視点を見るに灰色の実の効力が尽きるペースは段々速まっているようなので安心はできませんね……。

 

ネフィーリア

 

 いない!どこにいるんですかね。アグリに同行してるんだろうな。でも女神に遭遇とかはしてなさそうでよかった。

 ネフィーリアがけしかけたクランテイルはバチバチに警戒モードに入って無用な戦闘が発生しちゃったんですけどそんなことは知る由も無いでしょう。

 

再登場魔法少女

 

クラリッサ&クランテイル

 まずはやはりクラリッサVSクランテイルについて! クラクラコンビ! キャットファイト! 好き! というかクラリッサが今回で大好きになってしまった……。小学生魔法少女にはわりとよくあることですが、小学生とは思えない鋭いものの見方をする(そして口が悪い)クラリッサ・トゥースエッジ、いい。

「噛み痕をつけた物の位置を探知することができる」という使い勝手が良いような悪いようなな魔法も好きです。思いっきりマーキングだ……。2話で恋々が目撃した倒木の歯形はクラリッサのものだったのかな……いや寧々ちゃんと死闘を繰り広げた野犬かもしれない。というかほんとになんだったんだあの野犬……?

 

 

 で事故的に発生したクラクラコンビの戦闘ですが。あ〜〜最高! breakdownは贅沢に戦闘パートを読むことができる気がして、とても嬉しいです。「聖夜の魔法少女ども」ではぽやっとした読み違いによりシャドウゲール本気のソロクリスマスパーティーをプフレへのサプライズパーティーと思いこんだクランテイルですが、クラリッサのさりげない動きには気付くこの鋭い洞察力! 同一人物のそれか!?

 クランテイルは本当に戦闘に対する才覚が研ぎ澄まされているんだろうなあ。シャドゲ相手だと普段以上に脱力してる説もある。

 

 しかし本当にクランテイルの戦闘能力が……高い! 無印生存勢であるところのスノーホワイトリップルはコンビの鍛錬で戦闘技術を高めたわけですが、restartの生存者はプフゲルクラ、プフゲルが戦闘技術を殊更に磨いている様子はあまりなかったので……もしクランテイルがこれを独学でやってるとしたら凄まじいことですね。豚汁おにぎりやクリパで繋がった魔法少女と稽古してたりもしたんだろうか。

 

 噛み痕を付けることによる空間把握と戦闘はソラミの魔法をどこか思い出します。その魔法+樹上というクラリッサホーム戦場(ここのクラリッサの自分のモチーフに対する自信も大好き)でなお優勢を保つクランテイル。強い。クラリッサがそもそも非力寄りの魔法少女として戦う魔法少女をやっている気配もしますが(クラリッサは所詮歯(トゥース)であり牙(ファング)ではない(大好き!!!))、それにしたって強い……。「子供相手に痛い目を見たことがあるのか」についてはそうですねという感じ。

 

 劣性を悟り、位置情報から推察してられ子に救援を求め、られ子が飛び出し、それに対して「思っていたより動きが早い」と安堵したクラリッサはどこまでられ子のことを知っているんだろうか。統太くんパートで(結果的に自分から手を出したのに)しれっとクランテイルに襲われたというふうに話を作ったりネフィーリアの灰色の実売りに困ってみせたりするクラリッサは小ずるくてかわいい。

 

 いやあ興奮するパートだった……。あと書いた以外で気になる描写といえば「いくつかある目的の中で、もっとも面倒臭いだろうと思われるもの」の正体ですかね。マイヤさんかなあ……。

 そういえばクラリッサパートで初めてボーンヘッドという言葉とその意味を知りました。まほいく読んで度々知らない言葉にぶちあたって検索してはあ〜となる無教養人間です。まほいくで学ぶ日本語。

 

 

7753&テプセケメイ&マナ

 続いて77メイマナチームについて。一時は生死を危ぶまれたメイは平然と生きてましたね……いや死んだんですが。本当にメイは多芸で、タフで、「あれで生きてるていうんですから大したものですねえ」だ……。ただ分身が死ぬと時間が経つまで多少の弱体化とかあるんだとしたら大変そう。7753の言い方的にメイは3人に分裂してるっぽいですが、残る一人の分身は今どこにいるんだろうか。

 分身について、「お互いの知覚を常時接続しているわけではない」というのは分身魔法の使い手であるところのエイミーも似たようなものなんだろうか。多分メイの分身はサイズが縮んでいるあたり力の分割なのかなと思うんですけど、エイミーは単純増幅っぽいのでやっぱり本業で分身の人は違いますね。

 

 マナさんの指示により本館に戻ることになった三人。これはちょっと面白いというか、多分このよくわかんない状況の一端は故サタボーン氏によるものなのでその手がかりとかがあったら素敵ですね。そんなものがあったらもう見つかってそうではありますが。あと遺品がどんなものなのかが普通に気になる。

 

 

ラギ・ヅェ・ネント

 さてラギさんについて。チェルメリコンビをどうにか上手く動かそうと試行錯誤するラギさんすごい良い……。恋愛脳VSおじいちゃん。心が安らぐんですけど11話はそう和んでもいられなさそうですね。女神ほんと怖いな……。

 シェパーズパイくんはこの魔法少女戦闘に巻き込まれて死んでしまったわけですが、ラギさんはどうにか難を逃れて……ほしい。瓦礫が飛ぶだけで魔法使いは死にうるから厳しいけど……。もしフランチェスカがナヴィの制御下にあるとしたらラギを殺すのは本意では無さそうですが。

 

 

 フランチェスカ

 人造魔法少女であることがほぼ確定したフランチェスカ。そのまんま斧(&人名)なお名前とクラリッサの物言い的に考えると恐らくは斧の女神=フランチェスカだと思うので10話感想ではとりあえずそのように扱います。

 いやほんと過剰戦力すぎる……。なんなんだこの人。人造魔法少女にしては技術的に出来がよすぎるというか、もしこれがJOで技術流出して即体系化してたとすると凄まじいことになってしまう。研究所出身のよくわかんない試作品か、それともサタボーン師が作った遺品……ナヴィさんがアグリとの契約の時に持ち出した「爺さんがこっそり持ってる誰にも知られてねえ新しい技術」なのか。

 引用してて思いましたがもしももしもフランチェスカがナヴィさんにこっそり掘り出されたサタボーン師の「技術」である場合、アグリ側メンバーがその「技術」を攻撃して破壊することも契約違反になりそうでこれチェルシーVSフランチェスカ戦双方大丈夫なのか……?

 

 

 曲岡統太&イオール&られ子

 最後に統太くんイオールられ子について。られ……られ子!

 元々のイオールのおうちがナヴィさんと関連がある時点で多少黒いものを抱えてる可能性はあったわけですが、られ子、どうなんだろう……。られ子さんに戦闘技術を教えたであろうマイヤさんに信を置くとするならられ子はイオール自体を裏切るわけではないとは思うんですけど、まあナヴィさんとも何らかの関係を持ってたりするのかな。

 どちらにしたって思っていたよりも統太くんはられ子にとってあんまり大事ではなさそうな……気がする。そして統太くんは本当に知性が高いですね……。マーガリートさんもいなくなって(?)しまって、これからどうするんだろう。誰に頼ればいいんだろうか……。

 

 

 このあたりで感想は終わり。2月中に11話更新を予定!? されている!? とのことで、ただでさえ2月は短いのに大丈夫なんだろうか!? 先月遠藤先生が体調を崩されていてとても怖かったのであまり無理のないスケジュールで連載されてほしいです。でも続きが読みたいので2月更新されたらやっぱり嬉しくなってしまう。

 あとbreakdownが書籍になってお金払えるようになったら滅茶苦茶嬉しくなってしまう……。breakdownを購入したい代替としてまほいくを買っています。以上。