すふぉるつぁんど

主に遠藤浅蜊著「魔法少女育成計画」シリーズについて書き残していくブログです。

episodesΔ感想④

 

 魔法少女育成計画「黒」の発売日(10月10日)がもう明後日というところに迫っています!!!

 電子書籍でも発売されるようでなにより。本当になによりだ。発売日に購入できるかどうかやきもきしなくていい。その代わりに夜を徹して読みます。

 

 というわけで滑り込みでΔ感想最後のパートです。なぜこんなに遅れたかというと「黒」までにまず再読を終えようと思ったからで、そして再読を無事終了したので「黒」発売前に思ったことなどを少し書き足しつつ魔法少女暗殺計画」「マジカルボーイズエレジーについての感想を書きました。

 電子版あとがき情報を踏まえた上での再読は、また今までとは違った楽しさがあってよかったです。 再読においての感想や新しい気付きなどに関してもまた別で……書くかな?

 別枠で書きたいとしたもの大概書いてないのであれなんですが、短めの自分用メモを残したりする……かもしれません。でも多分「黒」の興奮で全部うやむやになるな……。

 

 新魔法少女の人数やまさかの人間態ラフ公開やきな臭さ全開のあらすじの時点で色々と予想を超えていた「スノーホワイトの物語」、かつ「新章」。『「正しい魔法少女」を育成する』というワードに途方も無い不穏さを感じますね。今日明日には嘘予告も来たりするだろうかとか考えてたら今日来ちゃった!!!

 

blog.award2010.konorano.jp

 

 やっぱり自分はテティ・グットニーギルの名前もミトンという可愛さの融合も好きで読前イチオシ魔法少女という感じです。でもやっぱり謎の新キューティーヒーラーも気になる! ダークキューティーがどういう反応するのか知りたいから巡りあってほしい! なにはともあれとても楽しみです!!!

 以下Δ感想。主に暗殺計画について。(前回記事:episodesΔ感想③ - すふぉるつぁんど

 

 

魔法少女暗殺計画

 

 つ……つらい! 楽しい!! つらい!!!

 は~~好きです魔法少女暗殺計画。苦しく、それ以上に楽しかった……。ワッと出てきた与太者魔法少女たちとの連戦連戦。多種多様に展開される悪質な魔法の数々と、スピーディでハイペースな戦闘と、その内側で繰り広げられるスノーホワイトの恐怖制御と、更にその内側に押し込められていたスノーホワイトの戦闘への忌避感や葛藤。読むのが滅茶苦茶楽しかった……!

 

 こういうよくわからない魔法少女がドカドカ出てきてばったばった戦闘する短編もっと読みたい! 地獄サバイバルでのレディ・プロウド周辺みたいなの! 好きなので!!!

 

 

 戦闘への好きはともかく、こんな過酷な段階を経て「魔法少女狩り」が構成されていたのかと思うとすごい。捕縛されてなおスノーホワイト育成のために経験値魔法少女を差し向けた(疑惑の)ピティ・フレデリカは改めてすごい。

 怯え泣く姫河小雪を叱咤し、「以前のスノーホワイト」はもういない、いなくなったと心のなかで唱え、格上相手の戦いに身を投じるスノーホワイト。こういう自分対自分の内面描写何度読んでも好き。何度これを繰り返した果てに魔法少女狩りがいたんだろうか。

 

 誰かを後ろから殴りつけるのも、自動車が追突するとわかっていて放っておくのも、ビルの中に人がいると知りながら戦いの場にするのも、ラ・ピュセルやハードゴア・アリスの姿に攻撃を加えるのも、他人の大切な人を使って心を乱すのも、魔法少女の肉や骨を刃物で斬るのも、殺し合いをするのも、なにもかも、やりたくないことだった。魔法少女のすべきこととは思えなかった。それでもやらなければならなかった。これからもやらなければならないことだ。*1

 

 この描写を読んだ時まず思い出したのは、「魔法少女育成計画JOKERS」での

 

 人質が生贄にされ、シャッフリンが補充されていることをスノーホワイトは知っていたが、最後まで誰にもいわなかった。デリュージやインフェルノが自殺的な行動に出てしまうことを防ぐためだった。インフェルノは、テンペストの無事を祈って死んでいった。なにも教えようとしなかったのは他の誰でもない、スノーホワイトだ。朱里の手を握り、彼女の想いを、願いを知りながら、真実を話すことなく彼女を見送った。*2

 

 ここでした。「それでもやらなければならなかった」の先にこんな……こんな「やらなければならないこと」があるか!?

 どちらもやりたくない気持ちを圧し殺してやるべきを遂行して勝利をもぎとっているのは同じなんですが、スノーホワイトに降りかかる事件の規模が大きくなるにつれて彼女の殺す気持ちも増えていくわけで。QUEENSで破裂するのも道理だ。

 

 

 この短編時系列上ではまだ身体的にも精神的にもぐるぐるで分化途上のスノーホワイトですが、リップルに対する感情だけは「魔法少女暗殺計画」の中で一つ特異に澄んだもので。

 短編を締めくくる「リップルの心の声」を聴いたスノーホワイトが微笑する描写からは、「魔王塾主催 地獄クリスマスパーティー」に通じる微笑ましさと、スノーホワイトに確かな心の拠り所があることへのちょっとした安堵と、そしてlimited、ACES、QUEENS、そしてその先へと続く未来への難儀さを感じます。

 

 こんなに精神的支柱にしてる人が自分の進む道を支えるために事件に巻き込まれて死にかけたり洗脳されてピエロになったり人殺しになったりしてるの改めて厳しすぎる。QUEENSでそのあたりの苦しさを一旦振り切って「フレデリカに関してだけは魔法少女狩りでありたい」としてまた歩みを進めてるの、本当にすごいな……。

 

 QUEENSエピローグ時点でのスノーホワイトは、リップルはフレデリカを狙うはずなので、リップルがフレデリカに辿り着く前にスノーホワイトがフレデリカを狩る」という指針で動いていました。

 順当に考えるとフレデリカを追い動いた先が市立梅見崎中学校なんでしょうか。「黒」でのスノーホワイトが何を求めているのか、どう動くのか、リップルはどこに居て何をしているのか、というところは気になるばかりです。

 

 

 はい。スノーホワイトの内面の話はこれくらいにして、スノーホワイトと戦った魔法少女たちについてちょっとだけ振り返ります。

 

イカニス

 ライカンスロープっぽい。体感だとちょっと珍しい(?)ケモミミ持ち魔法少女魔法少女態でも熊耳らしかったということは、ユナエルやクランテイルのように多種多様生物に変身できる魔法ではなく、固有の大熊態に变化妖怪する魔法の持ち主なのかもしれない。

 

ヘッドショッ子

スノーホワイト泥仕合演じかけた魔法少女。石化銃については、ま……またリボン・オブ・スタッフド・ドールみたいな状態異常中の意識の所在が気になる魔法が出てきたな……て思ってたんですが、なんと

 

 

 元々はもっと物騒だったらしい。電子版あとがきにもちょいちょい出てくるボツ裏話好きです。電子版あとがきを読むと遠藤先生&S村さんコンビが現実に存在していることへの畏敬の念が増します。

 ところでジェノサイ子とヘッドショッ子ともな子とられ子は名前にツーペア感があります。(追記:黒の出ィ子も入れてフルハウス感になってしまった……)

 

メルン

 多分ハーメルン。N市民をゾンビみたいにできてスノーホワイトが曇る便利な魔法。心を操る対象は有象無象の人間に限るんでしょうか。

 

ムレーナ

 群を成す。群体の円錐形になる魔法めっちゃ格好いいし絵として綺麗だしビジュアル綺麗なのに殺傷力高いしでこの一連の魔法少女内では一番好きな魔法です。名前も好き。

 

華刃御前

 なんか名前の由来あるんだろうか。寡聞不知。スノーホワイトへの経験値がでかそう。

 ルーラや四次元袋、兎の足と比較してスノリプに所有権が渡ってからの処遇が不明だった透明外套ですが、スノーホワイトが半歩を稼ぐ半ばで斬り裂かれていたことが明らかになりました。なるほど。これでもう使えなくなっちゃったんだろうか。

 

 固有魔法は自分を相手の大切な人の外見に錯覚させるとかそういう感じなのかな。

 リップルに変化しなかったことを考えると死者限定とか後悔の対象とかの条件があるのかもしれない。一連の暗殺魔法少女の中では唯一挿絵がある魔法少女ですね。魔法の影響でラ・ピュセルに見えますが。

 

A級焼女

 なんか音の文字に覚えがありこれはちゃんと心当たりあるやつだなと頑張って考えてB級少女(「美少女を嫌いなこれだけの理由」応募時タイトル)思い出した時のあはは感がすごかった。セルフパロディになるんでしょうか。

 焼女という名前、Blazing Rayという技名、実際に華刃御前が火傷を負って煤けていたことを考えると、ファン・リート・ファンの言う「魔王塾崩れ」はまあ順当にA級焼女を指しているのでしょう。燃やす系繋がりでフレイム・フレイミィと仲が良かったりしないだろうか。

 

 ところで「滾れあたしの恋心」(ブレイジング・レイ)という技名についてちょっと。推定元同門の袋井魔梨華の理想存在・理想の袋井魔梨華の技名に「ブレイジング・ガーベラ」(ドラマCD音声につき当て字不明)というものがありました。

 ブレイズという単語はそう珍しいものでもないから特に二人の間に関連性がなくても驚かないんですが、それはそれとして「滾れあたしの恋心」という美しい日本語を読んだことでブレイジング・ガーベラの当て字が一層気になりました。

 


 暗殺魔法少女たちについてはこれくらいにして、監査部門繋がりでファン・リート・ファンさんが出てきたのはちょっとした登場ながらすごく嬉しかったです。やっぱりF2Pの魔法少女達が遠藤先生の文章として世界に存在していると嬉しい。

 札付きの魔法少女たちと渡り合ったスノーホワイトがなお勝てないと思わせるファンさん、本当に強い人なんだなあ。なんというかF2Pでとんでもない死に方をした面目躍如なような、エイミーが一人で初見殺し殺ししてレジスタンスボコってたのが印象としてごつすぎたような……。

 

 ファンがちらっと言及していたスノーホワイト殺害依頼を仲介した闇サイトを運営している人物」についてはこれからまた出てきたりするだろうか。サイト運営というとインターネット繋がりでキークのことを思ってしまいますが、スノーホワイト殺害依頼についてはむしろ断罪する側だろうし。

 そういえばちょっと戸惑ったんですが「港南地区」は「城南地区」の誤記……なんでしょうか。「魔法少女vs.鮫」あたりでも同様の表記がされてるのを見ました。あとヘッドショッ子の人間態の人(20代半ば女性)は中学生と高校生どっちの制服着てたんだろうとかもある。中学生コスプレだった場合ひょっとすると珠とか亜子あたりと同じ制服着てたかもしれない。

 

 

マジカルボーイズエレジー

 

 エレジーと言う割にそれほど悲哀感のない爽やかな短編。

 Δはほろ苦いオチの短編の割合が比較的低かった印象もあってか、13分の11の短編が既読だったためか、読後感がわりと軽やかでした。それはマジカルボーイズエレジーがシメだったのも影響してるかなと思います。それだけに暗殺計画のほろ苦さを相対的に高く感じたんですが……。

 

 マジカルボーイズエレジーは楽しいながら色々衝撃の話で、まずΔの表紙を飾るラ・ピュセルとステラ・ルル二名に接点があったことに驚きました。これまでの「episodes」系列の表紙を飾るふたりぐみ達(トップスピード&二代目ラピス・ラズリーヌ、プキン&フィルルゥ)は表紙上のみの絡みだったので。

 確かにレジスタンス経由の潜入だとN市に魔法少女がうろついてても音楽家周辺に角が立つことはないのか……?と思いつつリップルVSリオネッタに出張してくる音楽家なのでルルが変身を解かず頑張っていたらあるいは音楽家とぶつかったりしちゃってたのかもしれませんが)、短編の後付けでルルに窃盗されてたことになったカラミティ・メアリの不憫さには笑ってしまう。

 16人の日常でもピーキーエンジェルズになりすましされてたりもしてたし、N市に堂々ダーティー存在がメアリしかいないせいでこう……多少の被害を受けてたことにしてもいいという割を食っている気がする。窃盗被害のストレスをメアリは何で発散したんでしょうか。

 


 そして第2の衝撃は、ステラ・ルルの魔法少女活動期間が自分の想像よりも長かったことです! 無印の頃から既にレジスタンスやってたのか。そしてF2Pでの仮の衣装だと思ってたスタジャンは結構長いこと着てたのかー!

 大盾だとか猫足スケルトンパソコンだとか魔法のアイテムを潤沢に抱えているのは変わりませんね。F2Pでうず高く積もっていた魔法のアイテムの山も今回のような地道な蒐集簒奪活動で積み上げられたものだったんだろうか。

 ルルがメアリの武器を盗みつつ、それでもラ・ピュセルの剣を奪わなかったというのも印象として新鮮だった。等しく壊れた存在であると思っていた小山内姉弟ですが、姉のほうが弟というただ一人の信仰対象があるだけにその他に対して容赦がないのかもしれません。

 

 レジスタンスといえば、電子版あとがきで故トットポップが率いていた反体制派魔法少女いつかメインキャストになるかもしれない……という言及がありました。

「黒」にメインキャストとしているかどうかはともかく、その時はステラ・ルル率いるレジスタンスチームと関わることがあるのかもしれません。F2P連載再開しないかな!?

 


 話は戻ってラ・ピュセルです。一人の魔法少女としてカラミティ・メアリに対して義憤を燃やし、「これでだいたいどうにかなるはずだ」でメアリとのイメージ戦闘を終えるラ・ピュセルはこう……今となっては珍しさすらある「戦う魔法少女」側の戦闘経験の少なさを感じさせて良い。

 4000文字の改心説得演説を作っちゃうあたりも真っ当に中学2年生魔法少女だ。原稿用紙10枚持ってって読み上げるつもりだったのかな……。

 

 死者は年を取らないので印象がずれますが、なるほど岸辺颯太は小山内馨より歳上……な感じなんですね! そしてなるほど二人は「変身前が男性の魔法少女」であると同時に「魔法少女愛好家」としての共通点があったのか。キューティーヒーラーとひよこちゃんは微妙に趣味が違う感がありますが。そうちゃんもギャラクシーのエンディングには思うところがあったんだ……。

 

 変身前男性魔法少女同士としてシンパシーを得つつ、そうちゃんが馨の歩き方についてプロ魔法少女として女子の歩き方を実践してると思ってるの面白かった。あれ以後ちょっと女子的動作を意識してしまうそうちゃん/ラ・ピュセルとかもあったのかもしれない。

 まあ女子の歩き方についてはマジカルアイテムの数々がそうさせてただけだったんですが……。マジカル火器はともかくマジカル睡眠薬はこう武器の物騒さとは別方面で悪用されそうですごい。


ステラ・ルルのこれからとF2P連載再開が待ち遠しくなった素敵な短編でした。パムに稽古をつけられるラ・ピュセルに対する心の準備は永遠にできそうにありません。

 

 


 Δの感想は以上! 

 書くものは書いたし、再読も終えました。これより先は黒に備えます。2年10ヶ月ぶりの魔法少女育成計画本編だ……!

 

*1:遠藤浅蜊;マルイノ.魔法少女育成計画episodesΔ【電子版あとがき付】(このライトノベルがすごい!文庫)(Kindleの位置No.2757-2761).宝島社.Kindle版.

*2:遠藤浅蜊;マルイノ.魔法少女育成計画JOKERS【電子版あとがき付】(このライトノベルがすごい!文庫)(Kindleの位置No.4994-4998).宝島社.Kindle版.