すふぉるつぁんど

主に遠藤浅蜊著「魔法少女育成計画」シリーズについて書き残していくブログです。

まいにち魔法少女97日目:奈落野院出ィ子

 

 本日のまいにち魔法少女です。ナンバーは11、奈落野院出ィ子でした。

 「黒」の中で名前が一番尖ってる魔法少女だと思います。個人的に出ィ子の発音は「でいこ」なのか「でぃこ」なのか気になります。つい「でいこ」で発音してしまう。以下感想。

 

 

 奈落野院出ィ子。3班所属のミステリアス魔法少女。内輪密集女子集団の毛色が強い3班ではわりと浮いた存在のような気がしています。普段どういう感じで集団行動してるんだろう。

 出ィ子については本当に一つ知るたびに驚きばかりでした。まず公開された魔法少女ビジュアルラフで驚き(今となっては有り得ない話ですが、キャララフ公開時はすわ出ィ子かリリアンがラツムカナホノメノカミか?!と戦々恐々としていました)、嘘予告で明らかになった魔法少女名のインパクトで驚き、そしてこの人間態ビジュアルで驚きました。

 

 頭部右サイドをツルツルに剃り上げ、そこから頬にかけて複数の動物をミックスした妖怪──「鵺」のタトゥーが水墨画のようなタッチで描かれている。左サイドは剃り残した髪で円状のファイアパターンを描くというモヒカン[……]*1

 

 いやモヒカン顔面鵺タトゥー女子中学生には読者全員驚いたと思いますが……。人間態ラフ公開の時点でモヒカンが居ることはわかってたものの、それが出ィ子変身前だとは思わなかった。順当に(?)古風スケバンなカナの中の人かな~とか思ってました。

 そして更にあの攻め攻めのビジュアルで真面目に読書感想文書く人なのにも少なからずびっくりしました。これは偏見だな……。常に驚いている。純文学って何読んでたんだろう。出ィ子の推薦図書知りたい(魔法少女の推薦図書常に知りたい)。

 

 出ィ子は前回書いたミス・リールと同様視点パートを持っていないので、彼女が何を考えて動いているかは実際不明なんですが、他者からの評価で真面目さが浮き彫りになっています。

 入学にあたってヤンキーなビジュアルを改めた不良生徒のメピスとは対称的に、出ィ子は真面目さを有しながら外見がぶっ飛んでいます。何を思ってあのビジュアルに行き着いたのか。そしてあのまま学生することに躊躇いはなかったのか。気になります。

 

 

 さて彼女の魔法について。魔法の呼称は「一瞬だけどこにもいなくなるよ」というかなりわくわくするものです。ただ第一印象としては「魔王塾主催 地獄クリスマスパーティー」でのもな子の「もな子は一瞬姿を消し、怒りを露にした表情で美々を睨みつけながらソファーのあった場所に膝立ちで姿を現した」*2という描写を思い出してました。なんならもな子の変装なんじゃないかとか読む前思ってました。

 もな子の魔法も外から見れば「一瞬だけどこにもいなくなる」に近いですが、出ィ子は移動先の異空間すら存在しないほどの「どこにもいない」なんでしょうか? 一瞬だけあらゆる干渉を無効化するとか……? 

 描写されている範囲での彼女の魔法は、

 

[……]出ィ子はにぃっと笑い、胸のメダルが変形、有機物のようにぐにゃりと歪み、中央部分に大きな眼を開いた。一つ目のメダルが開眼した瞬間、出ィ子が姿を消した。メピスは舌打ちを入れて身を翻す。後方へ走り出し、遅れて出ィ子が出現、メピスの前を走っている。出ィ子の魔法だ。彼女は一瞬だけどこからも消え失せてしまう。レクリエーションの鬼ごっこではこの魔法によって好き放題にされてしまった。*3

 

 こういうものでした。消失中に現実での座標を移動させられるのはもな子と同じっぽいですが、錫杖使いのもな子とはまた違った魔法の発動機序ですね。ところでカナも触れてたけど出ィ子は変身後笑顔のシーンが多くて楽しい。

 

 出ィ子の魔法に関する描写では、裏山戦でのランユウィの「この世から消え失せる」*4という表現が大好きです。

 消失している間の出ィ子の意識はどこにあるんだろう。「いなくなる」「消え失せる」という表現はちょっとおどろおどろしくて楽しいです。出ィ子視点で魔法の発動中どうなってるか読んでみたい。

 

 

 そう、丁度触れましたが出ィ子といえばランユウィです。奈落野院出ィ子とランユウィはラピス・ラズリーヌになれなかった魔法少女であり、それでもラピス・ラズリーヌ陣営に与している魔法少女です。

 ……まさかラズリーヌ不採用者という形で、新たなラピス・ラズリーヌフォロワーが登場するとは思いませんでした。それも2人。そこも本当にびっくりしました。

 ビジュアル公開時点では青さを意識もしてませんでしたが、出ィ子についてはインディゴブルーに掛かってそうな魔法少女名と上衣の色味に「青い魔法少女」性を感じます。

 

 出ィ子はラズリーヌ陣営ではありますが、推薦元派閥としては「奈落野院出ィ子は第三者を介し、カスパ派の有力貴族に金を積むことで魔法少女学級に推薦してもらった」*5とのこと。

 なので名義上出ィ子はカスパ派なんですが、フレデリカに手を入れられたか何からしくカスパ派配属先の2班から弾かれて3班所属となっています。結果、ラズリーヌ関係者が判明してるだけでも3班に3人集合しています。

 

 ただ当代ラピス・ラズリーヌ視点から、出ィ子とランユウィには捨て駒感が漂ってるのがなんとも……。ランユウィは視点が多い分特に自分の状況に疑問を持ったりせず任務を遂行しているのが伝わってきますが、出ィ子のほうは初代ラピス・ラズリーヌの不穏な思惑をどのくらい意識してるんだろうか。

 ラピス・ラズリーヌという「何者か」に執着しているランユウィ(この辺についてはランユウィの日に書きます)と行動を共にはしていますが、出ィ子が何を思ってラズリーヌになろうとしたのか、今何を考えているのかは謎のままです。実は同陣営であるライトニングのことは、現状どう思っているんだろう。この辺は次巻で明らかになるのかな。

 

 ラン出ィ、付き合いの長さも「青い魔法少女」という概念の通年的魅力もあって、そういう意味でもすごく……次が楽しみです。ちょっとぼんやり気味で頭より体力の方が優れてそうなランユウィと、彼女に長いこと付き合ってきた出ィ子。この2人がどうなるのか。まずエピローグではお休み中のランユウィがどのくらいで退院できるのかという話ですが。

 

 

 さて好きなセリフについて。厳密に言えば発声されていない言葉(?)らしいのでセリフではありませんが、

 

 泣きそうな顔が面白いだと、とランユウィが凄む。出ィ子がまた笑う。なんだ、いい顔ができるじゃないかと笑う。そっちの顔の方が、よほどお前らしい。*6

 
 こ……これ! 当然好き!!!

 この初代ラピス・ラズリーヌの弟子VS音楽家ホムンクルス裏山戦についてはランユウィの日に持ち越したいと思いますが、とにかく……とにかくよかった。普段二代目ラズリーヌを拙く模すことで強く生きようとしているランユウィに対して、あの瞬間の出ィ子が「お前らしい」ことを笑うっていうのがもう単純に関係性だし……。

 

 この2人による「二人で一つの生き物」な戦闘とてもいい。ラズリーヌ不採用組とはいえ、やっぱり勘はいいし戦闘能力に優れた2人なんだろうなと思います。ランユウィが退院したらコンビ戦またやってほしい。普段から目と目で会話したりしてるんだろうか。かわいいな。

 

 

 最後に好きなちょっとした描写について。ランユウィの部屋を訪ねたシーンでの「出ィ子が顔を上げた。ランユウィは紺色がかった瞳を真正面から見返した」*7が好き。

 これ変身してないので、出ィ子は人間として「紺色がかった瞳」を有しているということになります。地で紺風味なのかカラコンユーザーなのか。どちらにせよラズリーヌ関係者という出自だけに、青色を帯びた彼女の目は印象深い。

 彼女の瞳の色が描写されているのはこのランユウィと見つめ合っているシーンだけです。そういう部分も好き。椅子をわざわざ直して出ていく几帳面さとか、近しい人の視点で見えてくる細やかな描写すごく好きです。

 

 

 以上。ラン出ィ好きだしラズリーヌが群れてる過去編見てみたい。魔法も身体能力も存在が反則気味な三代目と競争しなきゃいけなかったランユウィと出ィ子本当に難儀だったな……と思います。ではまた明日。

 

 

*1:遠藤浅蜊; マルイノ. 魔法少女育成計画「黒(ブラック)」 (このライトノベルがすごい!文庫) (Kindle の位置No.319-322). 宝島社. Kindle 版.

*2:魔王塾主催 地獄クリスマスパーティー p.22

*3:遠藤浅蜊; マルイノ. 魔法少女育成計画「黒(ブラック)」 (このライトノベルがすごい!文庫) (Kindle の位置No.1512-1517).宝島社. Kindle 版. 

*4:同 (Kindleの位置No.3464).

*5:同 (Kindleの位置No.2176-2177).

*6:同 (Kindleの位置No.3443-3444).

*7:同 (Kindle の位置No.1932).