すふぉるつぁんど

主に遠藤浅蜊著「魔法少女育成計画」シリーズについて書き残していくブログです。

まいにち魔法少女101日目:ランユウィ

 

 本日のまいにち魔法少女です。ナンバーは15。ランユウィでした。

 ランユウィ!! 「黒」で初見時一番名前の由来がよくわからなかった魔法少女でした。金魚の品種でググり倒して紆余曲折あって藍魚の中国語読みと知った。

 ブルーのブルーコメット、インディゴの出ィ子(?)、藍のランユウィと、ラズリーヌ候補達はラズリーヌ以前から名前に青を帯びてますね。案外ブルーベル・キャンディも元々の魔法少女名に近い名前だったりするのかもしれない。以下感想。

 

 

 ランユウィ。3班所属のちょっとぼんやり気味魔法少女です。場の理解力が一巡遅れたり「業腹」の意味がわかってなかったりします。でも中学2年生と考えると語彙力的にはまあ普通の範疇な気もする。

 変身前はポニーテールの可愛い子。同じ班に化物級可愛いと読モ的可愛いがいるので隠れがちですが、ランユウィもしれっと顔立ちが整っているような気がします。

 

 彼女の魔法は「扉と扉を繋げることができるよ」。この魔法が活躍したのは音楽家ホムンクルス戦の一瞬だけなので、詳細部分はまだよくわかっていません。

 この「扉と扉を繋げる」魔法について。こういう漠然としつつ魔法の絵面を想像してわくわくするような魔法呼称好きです。座標を認識した「入口」と「出口」を任意に接続できる感じなんだろうか。

 この魔法は、戦闘に便利というよりは普段遣いに便利そうだなという印象です。自宅の扉を学校なり職場なりお店なりに接続できるなら滅茶苦茶素晴らしい魔法だ……。

 普段遣い以上にも、隠密行動や移動時間の短縮、個人用の「門」、物資調達とか考え出すと結構有用ですね。「入口」と「出口」間の距離に上限があるのかどうかは不明ですが、無制限遠距離を接続したり異世界に繋いだりできるなら魔法の重要度がかなり高そう。

 

 ただ、戦闘中に「入口」と「出口」を繋いで戦闘に活かすのは想像するにも難易度が高い。裏山では、魔法の対象にできる木の隙間を潜ることで、疑似ワープを行い場を撹乱していました。

 彼女の魔法が戦闘用途で活躍する環境は、当然ながら裏山などの自然空間ではなく、「扉」に溢れている屋内や市街地ではないでしょうか。というわけで退院したランユウィが文明フィールドで戦っているところも読んでみたいです。

 

 

 さてランユウィの所属陣営について。無所属の公的機関から推薦されたらしいランユウィですが、それは出自をごまかす偽装工作。彼女は奈落野院出ィ子と同じく、三代目ラピス・ラズリーヌに選ばれず、なおかつ初代ラピス・ラズリーヌの手伝いをしている魔法少女です。

 

 ラズリーヌに選ばれたかった。皆が「ランユウィはその器じゃない」と思っているのは知っていた。でもなりたかった。何者かになりたくて、ラズリーヌこそがその何者かであると信じていた。ライトニングのような自信が欲しくて、でもどうしても得られない。足掻けば足掻くほど掌から零れ落ちていく。ラズリーヌのように振る舞おうとし、ラズリーヌのような口調で話しても、意味なんて無い、と知っている。知っていた上でやめられない。同じラズリーヌ候補でも出ィ子はあっさり諦めることができた。それも評価された上で、師匠から直接指令を受ける立場にあるのだろう。知っていてもランユウィは諦めない。三代目が無理なら四代目だ。今回の任務を成功させれば、きっとそれに近付く。*1

 

 す……好き!!

 出ィ子の時にも書きましたが、こういうラズリーヌ関係者が出てくるとは思わなかった。まさかラズリーヌに「なれなかった」魔法少女が居るなんて、考えたこともありませんでした。ぼんやり一子相伝(ではない)だと思ってた……。

 

 魔法少女育成計画への好きの一つに、魔法少女が己が価値を置く「何者か」であろうとし、同時に「何者か」である難しさと向き合う、そんな瞬間を読めるところがあります。

 それは己の信じる「魔法少女」たろうとするスノーホワイトやウェディンだったり、最後の最後に仲間のために動くことができたペチカだったり、必要とされるのも悪くないと笑うフィルルゥだったり、海を殺すことで佳代の人生を侮辱した奴の仲間を殺して海に勝とうとするファニートリックだったり、異常な信念のもと動くダークキューティーだったりします。

 

 その「何者か」にあたる部分に、「ラピス・ラズリーヌ」という単語がやってきた!それは驚きであり、納得でした。やっぱり自分は「青い魔法少女の記憶」が大好きなんですよね……。

 あの短編の登場人物・谷津三春にとって、ラピス・ラズリーヌはかけがえのない「何者か」でした。青い魔法少女に魅せられたのが彼女一人ではなかったという事実は、あのわくわくと寂しさの短編を読んだ上だと個人的に納得という他ない。

 まあランユウィは二代目個人を尊敬していると同時に、ラピス・ラズリーヌという概念自体に憧れてそうですが。そういえば三代目の真似したりはしないのかな……。

 

 

 「黒」の話に戻ります。彼女はラピス・ラズリーヌになりたかったものとして、出ィ子と共に、森の音楽家クラムベリーを模したホムンクルスと戦います。最終盤のこのシーンが……もう……すごく良かった! 大好きです!

 初代の「怨敵」としての音楽家はとっくの昔に死んでしまっていて、ランユウィが相手にしているのは実際のところ無機質なホムンクルスでしかない。そんな敵に対してランユウィの「何者か」(≒ラピス・ラズリーヌ)でありたい気持ちが乗っかってくるのは……言ってしまえば感情の独り相撲に感じるんですけど、

 

 景色が切り替わっていく。目に入る風景は夜の山中ではない。地平線まで見通せる、ただ青い空と青い床が延々と続いているだけのなにもない場所だ。ラズリーヌのいるべき場所だ。そこで出ィ子とクラムベリーが戦い、周囲ではホムンクルスが踊り狂っている。*2

 

 ここまで見事に踏み切られてしまうと、もう! これは独り相撲だからこそ発揮される良さであるように感じてしまう。

 魅力的な視野狭窄です。明らかに異常な「見え方」を堂々通してくると……好きになってしまう。その結果死にかけるのもすごくいい視野狭窄は危険なので……)魔法少女育成計画はとにかく状態異常が楽しい。仕方ない。

 この異常な視点があった上で、次巻以降にランユウィの「続き」があればそれも楽しいです。ここで音楽家ホムンクルスに一歩及ばず、スノーホワイト&うるるに命を救われる形で生き延びたランユウィが、これから先はどう動いていくのか。読みたい。あとどうにかしてライトニングと仲良くなってほしい。怖いので……。

 

 

 好きなセリフについて。裏山戦での「ナメんなァ!」*3 が大好きです!

 これは敵に叫んだのか、それとも「お前の泣きそうな顔が面白い」と笑う出ィ子に叫んだのか。両方かな。いいですね……。二代目ラズリーヌエミュが剥がれかけているランユウィとてもいい。付き合いの長い出ィ子はランユウィの素口調知ってたりするんだろうか。

 独白で言えば「金魚の生命力をナメるなよ」*4も大好きです。これはもう「黒」でのベスト台詞(独白)を争うくらい好き。こうして並べてみるとナメられたくないランユウィのことが好きな傾向にありますね。

 

 

 そして好きなちょっとした描写について。ランユウィはほんとに好きなちょっとした描写が溢れてて選ぶのに困るな……。

 ラズリーヌならどうする。友情に生きて損を知りながら止めるか、それとも冷酷に友達の生命を切り捨て任務を最優先するのか。
 駄目だ。放ってはおけない。[……] *5

 ラズリーヌ周辺の描写全部好きと言っても過言ではないんですが、ここはやはり二代目ラピス・ラズリーヌの生き様を強く思い出した分すごく印象的でした。ここで迷いながらもライトニングを助けようとしてしまうランユウィは、(力不足な分)二代目よりもなお危なっかしく、ただ二代目を尊敬するものとしてはもっともな動きだと思います。その後ライトニング奇跡の復活に興奮してるのはぼんやりでかわいいな以外無いんですが……。

 

 そしてこれは好きというより気になる方の描写なんですが、テティ・グットニーギルからランユウィへの、「彼女は三班の中でも特に排他的なところがあり、夜間行軍の時も絶対に班員から離れようとはせず、距離を詰めて話しかけてもろくに返事さえなかった」*6 という印象について。

 ランユウィ視点では「排他的」を意識してる感じってあまり感じられないんですよね……。というか身内ですらあんまり仲良くなれてなさそうだし。出ィ子に手で制されてやっと気付くランユウィとか、サリーから可哀想なものを見る目で見られてたりとか、あの辺の描写を見てると、テティが話しかけても返事がなかったのって普通にぼんやりしてたからなんじゃないだろうかと思わなくもないです。

 

 以上。書きそびれましたがランユウィの水草装飾が好きです。また明日。

 

 

*1:遠藤浅蜊;マルイノ.魔法少女育成計画「黒(ブラック)」(このライトノベルがすごい!文庫)(Kindleの位置No.1942-1948).宝島社.Kindle版.

*2:同(Kindleの位置No.3441-3443).

*3:同(Kindleの位置No.3447).

*4:同(Kindleの位置No.3467).

*5:同(Kindleの位置No.2329-2331).

*6:同(Kindleの位置No.328-329).