すふぉるつぁんど

主に遠藤浅蜊著「魔法少女育成計画」シリーズについて書き残していくブログです。

まいにち魔法少女85日目:CQ天使ハムエル(QUEENS)

 

 本日のまいにち魔法少女です。ナンバーは10。CQ天使ハムエルでした。

 ハムエルさん、ACESの段階でもよっぽどかわいい上に知能派という魅力的なお人だったのがQUEENSで更にかわいい上に知能派であるところを強めてきてもうどうしたものかなという感じです。がんばります。

 

 

  CQ天使ハムエル。ACESから引き続いての登場です。ACESの段階ではそれはもうすさまじいまでのやられ役というか、主に地獄から蘇ったシャッフリンハンターさんによって酷い目に遭わされまくっていたように思います。実験場送りとかじゃなくて本当に良かった。

 でも本来ならば実験場送りとかそういう処置を受けてたっぽいので、ハムエルさんにとってのレーテ様は恩人です。実験体として使われるので傭兵魔法少女はオスク派に付きたがらないというプフレの言葉がありえたかもしれないハムエルの行く末を示唆させてて恐ろしい。マジでオスク派魔法少女使い潰してるんだなコレ、、

 

 そんな恐ろしいオスク派の魔法少女ではありますが、なんだかんだでハムエルに対しては良い上司ですレーテ様。まほいくの上司といえば基本全部クズみたいなところあるんですけどそのなかで燦然と輝くレーテ様のお人の良さ。

 ハムエルとレーテの掛け合い読んでてひたすら楽しかった。ああいう会話で人間関係を掘っていく上手さも遠藤先生の文章のすばらしさだなあと改めて。

 

「初戦はこちらの勝利かな」

「ご采配の賜物です。実にお見事でした」

「お前が褒めるといちいち鼻につくな」

「そんなこといわれたら私もうなにもいえないじゃないですか……」

 

 ハムレーテの楽しい会話劇を全文引用してたらキリがないのでこれ一つですが。はあすさまじくかわいい。

 最期のレーテ様の地の文とか、レーテ様がプク様を引き受けに行ったのを見送ったハムエルがそれでも(恐らくはもう生きてはいない)レーテを通信機の対象にセットしたあたりとか、そういうのを加味してもう一度読むと楽しいながらにしんみりとしてしまうじゃれあいです。この二人の会話もっともっと見たかったなあ。短編……(怨念)

 

 

 レーテ様とのものに限らず、ハムエルの魅力はやっぱり会話です。口を動かすのが彼女の魔法なのでそもそもにおしゃべりが上手というのはあるかもしれません。とにかくハムエルは読んでて楽しいことを喋る。あと考える。

 色々な視点からACESの事件を眺めていた読者にとってはとっくの昔こと1年3ヶ月前にわかりきっていた事実を、ハムエルさんが一つ一つ答え合わせしていく時のリアクションはちょっとコメディですらありますね。いやハムエルさん本人にとってはどう考えても笑い事ではないんですけど。

 

「(前略)私の部下だ。事が起これば私自身が率いて参戦しよう。人事部門のうらなりと侮ってもらっては困る。皆、一騎当千魔法少女だ。ここに名簿を用意したよ」

「ありがとうございます。早速拝見……ええと、これは……影絵を実体化させる魔法少女? それと……三又槍を持ち氷の力を使う魔法少女……です……か」

「強そうだろう? いや実際強いのだよ」

「ええ、はい……そうでしょうとも」

「ハムエル。顔色が悪いな」

「そんなことはありませんよ、ええ。私は健康ですとも。私の顔色よりも話すべきことがあるでしょう。ありますよね?」

 

 プク派の魔法少女がそうだった。確か嘘を吐いてそれを信じさせる、という魔法を使う。あの魔法のせいで人数分の耳栓を用意しなければならなくなった。

 こめかみに当てた手を上下に擦り、僅かに離してから、とん、と叩いた。プク派の魔法少女がなぜこんな所にいる。プフレが情報源云々といっていたのは、ひょっとするとこいつのことなのか。 

 

 あははは。ハムエルさんが手を焼いた色々な魔法少女がハムエルさんの近くをうろうろしている遺跡決戦前です。

 プフレとの会話は穏やかなように見えて腹の探り合いで心が休まる筈もないでしょうし、レーテ様はあれですし、吉岡も吉岡であれですし、ハムエルの苦労人度合いがすさまじい。この人たちみんな頭が切れるので、同じく頭がいい側の一人であるはずのハムエルさんが振り回される側に置かれているというのがちょっと知力のインフレーションを感じます。

 

 

 周りの人間と魔法少女に苦労しつつ、そんなハムエルさんのお仕事量はすさまじいものでした。

 多種のシャッフリンオーナーから預かったシャッフリンシリーズにあれこれ指示を出し、軍隊の指揮を執り、レーテのご機嫌を取り、雑にあしらわれ、周辺に気を遣い、うるるに監視を付け、いよいよプク戦が開幕して以降は周辺を低空飛行で飛び回りつつプク動画を見ないよう呼びかけたりファルを拾ったりゾンビ擬態戦法で難を逃れたり色々色々大忙し。

 縁の下の力持ちと言いますか、ハムエルさん無しでは上手くいっていなかったであろう物事はあまりにも多いです。余談ですが高所に居ると狙われるので低空飛行を維持するっていうのは魔王塾主催地獄サバイバルにおけるフレイム・フレイミィちゃんを思い出しました。

 

 余談も余談ですが、話の流れで魔王塾主催地獄サバイバルと魔法少女育成計画QUEENSについて。前々から魔法少女育成計画世界を見る・語るにあたって必読の一冊であると確信してはおりましたが、QUEENSでいよいよその重要度を跳ね上げたように思います。地獄サバイバルでこれまで登場した魔法少女達と戦ったモブ魔法少女達が、QUEENSでは味方になって帰ってくる! すごい!

 メタリィが登場した時にぱっと魔王塾主催地獄サバイバルを思い出し、その流れの果てにあの黒い魔法少女が隙間から出てきた時の「うわあお前か!」という驚きと「あれだけやって無事生きてたのかお前!!」という喜びとも笑いともつかない感情はものすごく楽しいものだった。スノーさんに速攻やられてましたけど、地獄サバイバルのあれでも生きてるなら全然生きてるでしょと思います。ゴ………モチーフだから生命力が高いっていうのはとてもありそう。生還してるといいなぁコックル。

 魔王塾主催地獄サバイバルほんっとに文庫化してくれないかなあ。楽しいが共有できないのは悲しいです。

 

 

 さて話を戻しまして。

 ACESの時はちょっと相手が悪かったとしか言いようがありませんが、多数の人に声を届けることができる魔法なので多人数戦に活かしやすいですよね、「頭の中に直接話しかけるよ」。

「嘘を真実と思わせる魔法少女」宛でうるるに声を聴かせられるあたり、対象をそこまで丁寧に絞り込まずとも声が届けられるというのは使い勝手がよさそうです。今回は大声戦法使いませんでしたね。魔法を戦闘に使っている余裕なんてなかった、というのはありそうですが。基本的に指示担当でした。

 

 そんな魔法持ちのハムエルさんですが、プク様にターゲットとして目を付けられていた結果、槍を背中から突き刺されての脱落です。

 一回見つかった時はレーテ様が引き付けてくれてはいたんですが、二度はダメだった。プク様がハムエルを視認した時の「空を飛んでいるといっても羽を潰せば落ちてくるだろう」という地の文大好き。うるるの声を拾おうとモニターにじりじり近付いた際の背後からの「何をしているのかな?」も滅茶苦茶恐ろしくて大好きです。プク様やっぱ怖い……。内臓に槍をねじこむ幼女怖い、、

 

 ハムエルは血を吐き、口から零れて耳へと流れた。通信機の設定をいじり、誰にも声が届かないようにし、ふっと意識が薄らいだ。痛みで気が狂いそうだったのに、それも薄くなる。

 広場の魔法少女達が歓声をあげた。プク・プックコールが木霊する中、ハムエルは血塗れの口を僅かに緩め、笑った。もう勝ちだと思っているなら大きな間違いだ。そんな捨て台詞を頭に浮かべ、ハムエルは目を瞑った。

 

 がああ。これです。ここ本当に良かった……。プクの魔法によって「心が侵食される」という感覚に怯え、そしてプクの手で殺されたハムエルが、最期に一矢報いて笑って死ぬという。通信機をオフにしていなかったらプク様ボイスの直接脳内アタックで全員詰んでたのでハムエルのこの最期の一手は見事としか言いようがありませんでした。

 

 

 ハムエルの死はけして満足の元には無かったでしょうが、それでも笑顔をもって死んだというのは一つ魔法少女育成計画世界では比較的穏やかな死に方であるように思います。世知辛い。

 思い返してみると笑顔で死ぬ人があまりにも多い魔法少女育成計画QUEENSです。最期に笑顔を見せずに死んだのネームド魔法少女だとグラシアーネくらいのものじゃないかなあ。まるで残酷要素が一切存在しない物語みたいですね!(?)

 笑顔で死ぬ人は色々なんですけど、その笑顔が作られるにあたっての感情は見事にばらばらなのが面白いです。

 

 

 さて好きなイラストについて。レーテ様と密談している挿絵非常に好きです。何が良いって顔が良い。良い顔と良い顔の距離が近い!

 ハムエルの外見といえばプフレ評で「出汁を取った後の鶏ガラのように貧弱な羽に勿忘草を散らし、コスチュームは全体が薄い。儚げな印象に比べて実務的な受け答えをする」という感じなんですが(ちなみに「出汁を取った後の鶏ガラ」がどんなものかを知ってるプフレが何を示唆しているかというと、誰もが御承知のことでしょうが一緒にラーメンを食べる人小路庚江と魚山護です。そんなことより勿忘草の花言葉の話ですけど暗示的ですね。以上)、彼女もまた儚げ属性もちの魔法少女なんですよね。見た目が良い。十代後半貴族風美少女のレーテ様とひそひそ話してるハムエルさんとんでもなく可愛くて耽美的で好きです。下睫毛!

 

 話してる内容といえばシャドゲ殺そうねというアレなんですけど。しかしプフレはレーテがそこまで考えることを読んだ上で動いてました。まあ読者が読んでてもいやシャドゲ殺した方が絶対早いでしょと思うようなことをプフレが零すわけがないので当たり前のことなんですが。

 

 

 好きなセリフ。ハムエルさんは好きなセリフが多いですね! ただまあファルの「うんこオスク派」というパワーワードを導いたことを含めて「所詮はマスコットキャラクター! 使えない!」を挙げます。スーパーウルトラハイスペック電脳妖精ことファルを使えないと言い切ったハムエルさんやけっぱちかわいい。うんこオスク派て。

 

 以上。ファルはなんだかんだそのうち帰ってくるんじゃないかなあと理由も無く滅茶苦茶楽観的に構えていますが(そのあたりの死まで考えだすとキャパオーバーになるという理由もある)ファル不在間のスノーホワイトの弱体化が心配です。フレデリカはスノーホワイトをどうするつもりなのかな。明日もがんばります。