すふぉるつぁんど

主に遠藤浅蜊著「魔法少女育成計画」シリーズについて書き残していくブログです。

まいにち魔法少女100日目:クミクミ

 

 本日のまいにち魔法少女です。ナンバーは7。クミクミでした。

 今日でまいにち魔法少女の更新が(号外等を除くと)100回目となりました。大台!

 追って見てくださっている方がいれば、100回分お付き合いいただいているわけで大変だ。ありがとうございます。これらのエントリが魔法少女育成計画の再読契機になっていることがあれば大変嬉しいです。以下感想。

 

 

 クミクミ。2班所属のカスパ派「近衛隊」勤務魔法少女です。

 どういう経緯で近衛隊に選ばれたのかは謎ですが、小学生の頃からサラリー魔法少女をやりつつちゃんと小学生にあたる年齢を生きて卒業しているすごい魔法少女です。「黒」は小学生魔法少女卒業者が多くてすごい。

 

 メピス・フェレス、およびクラシカル・リリアンとは近衛隊所属からの旧知の仲。この二人に対して、クミクミの口から「メピスが怒っている時の汚い罵倒は鳴き声のようなものなので誰も気にしない *1 」とか、「はっきりいって存在そのものが鬱陶しい *2 」とか、「なんという教え甲斐のない女だろうか *3 」とか、「こいつ常に魔法少女でいてくれないかな *4 」とかの辛辣な発言が飛び出すのは……付き合いの長さによるものでしょうか。

 と思ったらカナに対する「行動の一つ一つが大間抜けのものにしか見えない *5 」、「案外メピスよりはマシなのかもしれない *6 」、テティの魔法について「絵的に大変えげつない *7 」など、近衛隊外においてもすっと出てくる言葉が歯に衣着せてない。悪意や敵意が地の文に滲み出ているというよりは、ナチュラルに言葉選びがうっかり抜身な印象です。かわいい。

 

 クミクミはだいぶぼんやりした魔法少女ですが、考えるのが遅いだけで何も考えていない……というわけではありません。考えながら喋るせいで言葉がつっかえがちなのかわいい(ちょっと話は逸れますが、クミクミやランユウィのようにぼんやり気味の魔法少女が画一的ぼんやりの仕方ではないの好き)

 勢いで突き進むメピスをリーダー、自分たちのことを「戦うことだけが得意なタイプ」と自称しつつ、メピスと比較して慎重に考えたり気を回したりする努力はするクミクミをサブリーダー、積極性に欠けたり思考が浮世離れしつつあれど細かい気配りはできるリリアンをサポーターに据える近衛隊三人組の構成は、なんだかんだ良いバランスなんじゃないだろうか。

 2年F組以前の近衛隊時からいつでもトリオで動いてたのかな。カスパ派の近衛隊ってどういう組織なのかいまいち不明なんですよね。式典の時にだけ出番があると言われていますが、ではどんな出番があるのか、そしてどういう基準でメピクミリリの三人は近衛隊にスカウトされたんでしょうか? この三人の過去短編が読んでみたいです。普段を知りたい。

 


 さて「物体を壊したり組み立てたりできるよ」という彼女の魔法について。「立野玖美子」という人間態名と「組み立てる」魔法の両方に「クミクミ」という魔法少女名が掛かっててシンプルにいい。

 魔法少女名からは要素が省かれていますが、彼女の魔法は主として無生物(≠無機物?)を立方体型に「壊す」方に活用されていました。

 敵の武器とかも打ち合うだけで壊せるのなら近距離戦に有利そうですけど、そこは「壊す」魔法の押し付け力次第だろうか。あと「魔法のツルハシで~」という表記ではないあたりを考えると、もしかしてやろうと思えば素手でも立方体状に無生物を破壊できたりするのかな。

 

 「壊す」と対になる、「組み立てる」魔法によって発生したのは……「パワードクミクミフォートレスモード」です!ホムンクルスメアリの手榴弾を2発平気で耐える防御力。かたい。

 魔法も身体能力もオリジナル以下であることが明かされている魔法少女ホムンクルスですが、具体的にどのくらい弱いのかはあんまり掴めないので「黒」の魔法少女の相対的な強さってまだあまり把握しにくいように感じます。ただパワードクミクミフォートレスモードが尋常でない守備力を誇るのは間違いないと思う。

 そういう……優れた防御力の持ち主だからこそ、防御力を無視してくる魔法少女が天敵になるわけで……。

 

 右腕部を見た。拳部分が消失している。黒い屑となって宙に散っていく。
 今殴ったはずの相手を見た。攻撃してきた様子は無い。ただそこに立っている。クミクミはそれを殴り、触れた拳が消え失せた。ヘットドレスで頭部を覆い、それ以外にもひらひらふわふわとしたアクセサリーで飾り立てている魔法少女だ。黒一色にも関わらず、コスチュームのそこかしこが継ぎ接ぎで補修してあるのが見て取れた。
 クミクミは左腕部を継ぎ接ぎの魔法少女にぶつけた。ぶつかった箇所は黒い屑になって消失する。魔法少女が心から楽しそうににっこりと笑みを浮かべた。 *8 

 

 ここ……本当に……怖かった。

 魔法少女一人が場の有利を取りすぎるとかえって不安になるのはあるあるだと思います。このシーンでもそういった例に漏れず、パワードクミクミフォートレスモードが無双していた時、なんならクミクミが長い説明を入れ始めた時から怖かった。というかすぐ手前でホムンクルスプキンが出てる時点でホムンクルスソニアも絶対出るだろう、そうなるとクミクミが貫通して死にうるなと思い、思ってたら即ソニア出てきてもうだめだと思った……。

 クミクミが即座に鎧パージしたのすごすぎる……。ただそれでも、カナが居なければ終わっていた場面だと思います。無事で良かった。

 

 

 さてエピローグ。裏山戦にてあわや自分の身代わりになったかと思われたカナも無事で、それを見て泣きながらカナにタックルしていたクミクミ。あそこ好き。そういう感じで「黒」の時点ではめでたしめでたしなんですが……。

 彼女にはなんと、生ピティ・フレデリカと接触して何らかの頼み事をされているという不穏さがあります! もうほぼ確定で髪を握られている。そういえば会議してるところ覗かれてたし。怖い。

 フレデリカいつからカスパ派の偉い人になったんだ。この視点は怖いというより気持ち悪いが強かったです!! 何が起きてるのかもう色々わからなくて……。

 

 フレデリカに接触されたとはいえ、クミクミが頭の方を弄られたりしてるわけではないと思うんですが(洗脳カード持ちが誰かと接触する際まずとりあえず洗脳の有無を検討するようになってしまった)。それでも何かしらフレデリカの思惑を満たすお願いをされていたり、魔法少女学級は『魔法の国』救済のためのサブプラン」という爆弾がサラッとぶちかまされてたり、もうこの情報から平和に卒業して出世できたらいいなあというクミクミの願いは叶わなさそうで……。

 次巻以降のクミクミ……そしてメピス、リリアンの近衛隊三人組がより深刻にカスパ派暗部に巻き込まれていきそうでこわい。そこはスノーホワイト陣営が……悲劇を防ぐために頑張るんでしょうか。もう全方位大変だ。

 

 

 好きなセリフについて。クミクミのたどたどしい言葉遣い好き。色々好きなんですが、たどたどしさとしては「ルールについては……もう一度……いや一度より多くてもいいか……とにかく確認しておいてほしい。ええと、少なくとも……その、二班のメンバーにはルールを守ってもらわなければ困る。一人の、軽率な行動によって班全体に迷惑が――*9 が好きです。言葉が右往左往してる。 

 

 好きなちょっとした描写について。「トイレは一緒に行くという中学生らしい習慣を持つ者は二班にはいない *10 」が好きです。

 クミクミは2班の気風を「中学生らしくない」としていますが、そう考えること自体が中学生らしいような、そういえば同じクラスの中学生にも一緒にトイレに行く集団とそうでない集団それぞれが居た気がするなあとか思い出してしまう。

 1班2班3班の毛色がそれぞれ違う感じなのすごい好きです。非中学生も紛れている2年F組ですがなんだかんだでトータル中学生感な気がする。

 

 

 以上。クミクミの魔法がマイクラモチーフっていう説にはなんとなく説得力を感じてしまう。中学生だからかな……。また明日。

 

 

*1:遠藤浅蜊;マルイノ.魔法少女育成計画「黒(ブラック)」(このライトノベルがすごい!文庫)(Kindleの位置No.622-623).宝島社.Kindle版.

*2:同(Kindleの位置No.587).

*3:同(Kindleの位置No.2348).

*4:同(Kindleの位置No.2378).

*5:同(Kindleの位置No.1013).

*6:同(Kindleの位置No.1022).

*7:同(Kindleの位置No.1587).

*8:同(Kindleの位置No.3250-3257).

*9:同(Kindleの位置No.1003-1005).

*10:同(Kindleの位置No.995).