すふぉるつぁんど

主に遠藤浅蜊著「魔法少女育成計画」シリーズについて書き残していくブログです。

まいにち魔法少女103日目:雷将アーデルハイト

 

 本日のまいにち魔法少女です。ナンバーは10。雷将アーデルハイトでした。

 好きです!!! そりゃもう、好き! エセ関西弁の身長170cm超ハーフ魔王塾卒業生常識人ふたりぐみ魔法少女片割れ(決めつけ)、なんなんだ!? 何から何までお砂糖でスパイスで素敵なものすぎる。以下感想。

 

 

 雷将アーデルハイト。2班所属の外交部門職員です。確定はしてませんけど推薦部門は外交部門なのかな。

 カナの転校以前は近衛隊3人+アーデルハイトの班構成だったわけで普通孤立しそうなものですが、5月までの間にもううまく馴染んでた感がありますね。明らかにコミュニケーション能力が高い。

 

 「雷将」の二つ名が示すとおり、彼女は魔王塾卒業生です。ラピス・ラズリーヌ視点から魔王塾はラズリーヌ一派に与していないことが判明しており、ピティ・フレデリカ視点では、

 

 応接室らしきソファーのある部屋で魔法使いと魔法少女が向かい合っている。魔法使いの方はカスパ派のエージェント、魔法少女の方は魔王塾の古株だ。双方とも腹黒い。

[……]

「『魔王塾』の卒業生で手が空いている方を紹介していただきたい」

「またあ?エイミーともな子を紹介したでしょ。それにアーデルハイトだって」 *1

 

 アーデルハイトがカスパ派に「紹介」されていることがわかっています。読んでいて感じるクリーン寄りな印象に反して、彼女は明確にカスパ派に手を貸している魔法少女なんですよね。

 この辺すぱっと仕事として割り切ってやってるんだろうか、それとも魔法少女学級に入学しているとはいえ、特に何か密命を受けたりしてるわけではないんだろうか。どちらにせよ、アーデルハイトが邪悪意思に直接関与している……という印象は薄いです。

 上記のやり取り、こうして改めて読むとちょっと面白いですね。雷将アーデルハイトの名前が、魔王塾不良卒業生であろうエイミーともな子と同じ行に登場してるのじわじわ来る。なぜならアーデルハイトは……、

 

「魔王塾はやっすい喧嘩なんぞ買わんねん」  *2

「生き死にのかかった戦いなんて楽しくともなんともないやろ。なんで襲われたかもわからんとか恐怖でしかないわ。あいつなに考えとんねん」 *3

 前には敵がいる。後ろにも敵がいる。味方は少ない。魔王塾生にバトルジャンキーは多いが、それでもこれで喜べるのはきっと少数だろう。

 といっても弱音を吐くつもりは毛頭なかった。戦場と承知で飛び込んだのだ。思っていたより激戦地だったからといって逃げる気は無い。[……] *4

 

 

 滅茶苦茶……まともな魔王塾生だからです!!! いや……びっくりした!

 一番最初に本編に登場した魔王塾生が歴史に名を残すド犯罪者、次に登場したのも犯罪者リスペクトの犯罪者、その次に登場したのが戦闘欲求に支配された狂犬だったためか、いつのまにか魔王塾生ってほ……とんど全員異常者なんだと思ってた。短編に出てくる塾生達もわりとなかなかかなりおかしいし……。考えてみれば葱乃あたりは普通に「ちょっとユニーク」くらいの範疇だったような気もしますが。

 こんなまともなこと言う魔法少女が本編に出てくるなんて。かなり衝撃でした。しかも彼女は、

 

 アーデルハイトには、小学校に関する思い出が、ほぼ無い。ろくに通っていないのだから思い出を作りようもない。魔王塾卒業生だった母は、娘の才能を知るなり魔王塾に送り込んで義務教育とは切り離した。どうかと思うことも多い母だが、それでも魔王塾に入れてもらえたことについては感謝している。

 アーデルハイトは魔王塾で全てを学んだ。[……] *5

 

 

 かつてなく純粋培養魔王塾生! その結果常識人に!! どういうバグ!?

 本人も言っているように、「魔王塾にバトルジャンキーは多い」んですよね。そりゃ多い。その群れの中でどういう成長過程を経た結果常識を得ることができたんだ。まあ……まともな人は思ってたよりも魔王塾に居るんでしょうが、それにしても彼女の母親も含めてかなり価値観の偏った集団であることには間違いないのに……。

 異常人の群れのなかで正気を保つのはそれはそれでおかしいので、アーデルハイトも異常といえば異常なのかもしれない。小学生時代のアーデルハイトに興味がありすぎる。ガラの悪い先輩たちとどう関わってたんだろう。アーデルハイトも水着でビーチバレーしたことあるんだろうか。

 

 アーデルハイトの良識性は、読者のみならず魔法少女からも意外なもの(?)として取り扱われています。ライトニングに煽られたりメピスに煽られたり。

「魔王塾らしくない」という揶揄を受けるの、想像するにも一度や二度ではなさそう……なんですけど、それに一々目くじらを立てたりしないアーデルハイトは器が大きい。流石にライトニングに魔王が草葉の影で泣いているとまで言われた時は苛立ちを見せてましたが……。

 

 

 アーデルハイトの魅力は、そんなフランクな関西弁に織り込まれる魔王塾生にあるまじき常識人感にとどまらず。彼女は良識ある魔王塾生として、良識ある魔王塾生だからこそ、夜の学校にてプリンセス・ライトニングと刃を交えます。

 「黒」の開幕戦と言えるような、魔法少女同士初のガッツリした小競り合い。これがまた良かった……。魔法少女の小競り合い大好き。コメカミめり込む勢いで打撃食らわすのが小競り合いの範疇に収まるかは不明ですが。

 魔法少女の死に怯えつつも、戦闘が開始するとやっぱりワクワクしてしまう。対戦カードは「吸収したエネルギーを再利用できるよ」という固有魔法を持つアーデルハイトと、恐らくは雷攻撃を吸収する特性を持つライトニング。雷属性だけではなく吸収できるという点でもキャラが被っている。

 キャララフが出た時点で雷被ってるな……どうなるんだ……と思ってたら登場人物も被りを気にしてるとは思わなくてちょっと面白かったですここ。

 

 魔王塾生としてアーデルハイトが披露した技名は、ライトニングに披露した「閃手必勝<カイザーシュラハト>」、「禁城鉄壁<ジークフリートリーニエ>」、そして裏山戦での「獅風迅雷<ブリッツクリーク>」の三種類。か……格好いい。統一感もある。

 エネルギーを吸収して即軍刀で返すのが閃手必勝、あえて背中で攻撃を受けてある程度エネルギーを蓄積させてから返すのが禁城鉄壁、エネルギーを足に回して超加速の一撃を繰り出すのが獅風迅雷。これら(正しくは閃手必勝と禁城鉄壁の2つ)をライトニングに見せた結果、あのとんでもない技名爆誕したんだから魔法少女同士の関わり合いってすばらしいですね。

 

 そう、アーデルハイトとライトニングの関わりは夜の学校での一戦に収まらず、「黒」の最終盤までもつれ込みます。一度やりあったアーデルハイトとライトニングがなんだかんだで最終的に共闘するんだから……好きの盛り合わせです!!

 この共闘についてはライトニングの日でも書きますが、あの人を食ったような性格のライトニングが、一度は小馬鹿にしたアーデルハイトの魔王塾としての技名宣言に影響を受けて楽しくなっちゃってるのが良すぎる……。育ちが異様な中逞しく育ち飄々としつつ常識人なアーデルハイトと、全体的に謎だけど我儘お姫様って気風は本物っぽいライトニング。良い。また共闘してほしい。

 この二人、ほぼ確実に敵対陣営所属なのが困る。そもそもライトニングは底が知れないのでアーデルハイトと仲良くなるかなんて不明なんですが、それにしても吸収&吸収でお互いに相性の悪い戦闘カードかと思われてからの裏山の吸収&吸収おんぶ合体攻撃があまりにも楽しかったので……仲良くしてほしい……。連携技いっぱい生み出してほしい……。

 

 

 好きなセリフ。「資源泥棒やねえ!」 *6 が好きです。

 アーデルハイトのキツすぎない関西弁すごい好きなんだけど脳内再生が難しい。敬語のアーデルハイトもいつか見てみたいです。

 

 

 好きなちょっとした描写について。ちょっとしてるか……はともかく、「ホムンクルスが守る管理部門を襲った魔王塾卒業生数十名が激戦の末全滅したという昔話は今でも語り草だ *7」は初読時超笑顔になりました。「魔王の在り方」を読んでいると楽しいやつ!

 ただ気になるのは、アーデルハイトは本当に魔王塾卒業生を全滅せしめたのは誰だったかを知らなさそうなところです。いやどう考えても身内(?)の恥なので袋井魔梨華大暴れ事件が伏せられるのは自然なんですが、その場合つまりアーデルハイトは「魔王の在り方」のお話に全然関わっていないことになります。

 「魔王の在り方」扉ページの時系列紹介テキストとしては「『魔法少女育成計画』の物語が始まる少し前」なんですが、そのくらいで「昔話」になるものだろうか。アーデルハイトがノータッチなことも込みで考えると、ひょっとして思ってたより昔だったりするのかな。魔王存命以前以後で隔世の感があるだけかもしれません。

 

 以上。そういえばアーデルハイトとマイヤに接点があったら名前的にちょっと面白いなと思ってしまう。また明日。

 

 

*1:遠藤浅蜊;マルイノ.魔法少女育成計画「黒(ブラック)」(このライトノベルがすごい!文庫)(Kindleの位置No.1653-1658).宝島社.Kindle版.

*2:同(Kindleの位置No.2243).

*3:同(Kindleの位置No.2366-2367).

*4:同(Kindleの位置No.3333-3336).

*5:同(Kindleの位置No.2208-2211).

*6:同(Kindleの位置No.3401).

*7:同(Kindleの位置No.2217-2218).