すふぉるつぁんど

主に遠藤浅蜊著「魔法少女育成計画」シリーズについて書き残していくブログです。

まいにち魔法少女106日目:テティ・グットニーギル

 

 本日のまいにち魔法少女です。ナンバーは2。テティ・グットニーギルでした。

 テティ! 「黒」の表紙を飾る魔法少女です! 彼女はもう色々な魅力に溢れており怖い。以下感想。

 

 

 テティ・グットニーギル。1班班長であり2年F組の級長です。リーダーの中のリーダーですね。14人を率いて級長らしく指揮などをしていたシーンはありませんでしたが。

 テティの内面等について触れていく前に、まず彼女の外面的魅力についてどうしても触れておきたい! ので書きます。 

 

 まず「テティ・グットニーギル」という名前が好き! 「黒」の魔法少女で間違いなく一番好みです! 「テティ」って名前単体だと単純にキュートなのに、「グットニーギル」というお洒落感とギリギリで両立した駄洒落ネームと合わさるとあっ……手手ィね!? と笑ってしまう。良い。

 この名前は「魔法のミトンでなんでもつかめるよ」と掛かってて、更にミトンが似合う西洋の給仕風なコスチュームにもマッチしてて、もう取り合わせが超良いですね。好みすぎる。

 

 そして魔法も良い。「魔法のミトン」というファンシーな名称で隠しきれない「なんでもつかめる」の暴れ魔法感。その期待に違わず、テティの魔法は……凶悪です!

 

 一班のアタッカーはドリィとテティ。ドリィが突っ込んでホムンクルスを散らし、逃げたところでテティがホムンクルスを掴み、掴んだ場所をむしりとる。腕を掴めば腕を千切り、頭を掴めば頭を潰すと絵的に大変えげつない。本人は作業的に淡々とやっていた。[……] *1

 

 テティがグッとガッツポーズしただけでホムンクルスが5体くらいちぎれた。メピスが羨む戦闘向き魔法です。掴むと言うより「グッと握る」の握り潰すの方が近い。

 これ掴んだ部位が部位なら一発で即死に持っていける、超接近戦に向いた魔法ではあるんですが……リーチが腕の長さとイコールなので、字面からパッとイメージするよりは凶悪ではないのかなと思います。

 防御の面においても、優れてはいますが壊れ魔法というほどではありません。将軍ホムンクルス戦で具体的に示されていたように、テティは両手を塞がれるとどうしようもないんですよね。魔法を活かす場合武器を使うわけにもいかないし。超近距離なら有利とはいえ、まず超近距離戦の土俵を作るのが難しいやつです。

  それでも掴んでしまえばちぎれるという点は浪漫的な殺傷力に満ちており良い。ビジュアルから魔法まで、個人的にテティはトータルですごく魔法少女育成計画魔法少女」に感じるときめきを突いてくるスペックの魔法少女でした。

 

 

 さて本編の彼女について。テティ・グットニーギルを見る上で、メピス・フェレスとの関係は特に意識しなければならないものでしょう。

 メピス・フェレス≒佐山楓子は、テティ・グットニーギル≒遠山藤乃にとっての小学校で初めての友達。そして同じ試験で魔法少女に採用された同期であり、魔法少女学級で再会した幼馴染です。

 ただ、今のテティとメピスの関係はあまり良いものではありません。この理由についてはカナに語る形でメピスの口から明かされていますが、テティはまだそれを知りませんし、恐らくは気付いてもいません。

 

 喧嘩っ早い不良生徒、メピス・フェレスと、班長であり級長のテティ・グットニーギル。この二人は一見すると対照的なように感じますが――そうでもないのがテティの面白いところであるように感じます。

 

 一緒に魔法少女になったメピス・フェレスはつまらないことをいうなと食ってかかった。テティはそんなメピスを宥めながら、内心では彼女と同程度に反発していた。 *2

 

 テティは試験官の前でこそ大人しくしていたものの、心の中では反骨精神が荒れ狂っていた。魔法少女になるからには絶対に魔法少女一本で食っていく。そしてゆくゆくはアニメ化を目指す。[……] *3

 

 こういう。元々魔法少女で食っていこうとして上申書送りまくるガッツのある魔法少女でしたし、幼少期からの反骨精神については、

 

勝ちたいという気持ちはあった。二班を競うべき相手と考え、一班を対等な相手と見ていないライトニングにもむっときた。[……] *4

 

 現在も失われたわけではないっぽいのが明らかになっています。

 つまりこう、性質が真逆で馬が合わない(もしくは、真逆だから馬が合う)ふたりというわけではないんですよね。むしろ気質としては近いものがある。メピスからするとそれが不満なのかもしれませんが。

 この「似ている」点については、二人共相手にはっきり言葉にして伝えたことはないんじゃないかな……と思います。だからあまり要領を得ないまま関係性がもやもやしているんじゃないだろうか。一度腰を据えて会話してみてほしい。会話を……。

 

 

 ここまではテティとメピスの似ている点について挙げてきましたが、テティにはメピスと大きく「違う」部分もあります。反骨精神を表に出すか否かという部分が違うのは当然として、

 

 急な実習が入ったことでぽっかりと時間が空いた。掃除洗濯部屋の片付けと休みのうちにやっておきたかったことを済ませてしまうとやることもなくなってしまう。魔法少女活動をするには日が高すぎ、魔法少女一直線に生きてきた藤乃には趣味らしい趣味もない。 *5

 

 これ。この「趣味らしい趣味もなく」一人ぼっちで時間を持て余すテティ視点、カナとメピスが「漫画」という趣味(「屑鉄のナックルダスター」)で仲良くなった直後のシーンなんですよね……。そういう繋がり方もあって、この描写はすごく印象的でした。

 

 また、魔法少女一筋だったテティは魔法少女一本で食っていく」と決意していたものの職業魔法少女にはなれないまま、2年F組に推薦されてやっとのことでチャンスを得ます。対して、魔法少女ものよりもヤンキー漫画が好きなメピスは、当然のように2年F組以前から職業魔法少女をやっています。

 この点については、メピスはテティに無いものを明確に持っています。テティはこのことをどう思っているのか。それもテティからメピスの感情に関する謎の一つです。「黒」では一切触れられなかったこの差異は、次巻以降で掘り下げられるのか気になります。

 

 

 そんなこんなで積み上げられたテティとメピスのわだかまり、次巻以降で解けてほしい。ほしいん……ですが、この二人についてはもう弩級の不穏さが滲んでおり、考えるのが怖い。それはもう怖い。

 

「あ、あれって」

「警備用のホムンクルスだよ。普段は目につくこともないけどね。こうして私の手助けをしてくれることもあるし、忍び込んだ不心得者を捕まえることだってできる。いや、怖がらなくていいからね。悪いことをしなければ恐ろしい存在じゃないから」

[……]

「知らなかった……」

「生徒に教えることじゃないからねえ。まあ、こういう諸々があって安全が保たれていると思ってくれていいよ。だから中庭には許可なく入ることができないんだ。で、さっきいったプレゼントの話だけど、この庭をメピスさんにも見てもらうというのはどうだろう」 *6

 

 

 怖い!!! 情報局が善意でこんなことを提案するわけがないのは情報局が遡ればグリムハートが配属されてて人造魔法少女技術を握り潰しにやってきた組織である時点で明らかですし、メピスでさえ情報局が「すっげーやべえ所」 *7 と知っていますし、というかJOKERSの電子版あとがきにて想像以上に恐ろしい組織であることが確定しています。ひーー。

 テティは自分の母親に謝ることができず死別してしまった過去があります。その上で、メピスの時は「今度こそ」が叶うのか、そうでないのかが、このシーンで一気に不透明になってきてます。怖すぎる。この辺はもう……次巻を怯えて待つしかないですね。怯えて待つやつが多すぎる。

 

 

 さて好きなセリフ。セリフ……メピスをホムンクルスから守ってしまった時の「いや、あのね。身体が動いたっていうかね」 *8 が好きです。

 「助ける」がメピスの地雷っぽいこと自体はわかってるけどうまいことはぐらかせはしないし、なんで地雷なのかについてはわかってなさそうでかわいい。

 

 好きなちょっとした描写。

[……]ミス・リールが肩に手を置き、ラッピーが袖を引き、しかしテティは彼女達に従おうとせず、メピスに向かって一歩踏み出し[……] *9

 ここ。テティとメピスが「似ている」話をする時に書きそびれましたが、メピスの方はこのシーンの直前に2班メンツに両手両足を拘束されて押し止められてるんですよね。班員から制止されるし制止を振りほどこうとする暴れん坊班長2人。危うい。

 

 以上。直接関係してるわけでもないんですがふと「秘密の花園」が読みたくなりました。また明日。

 

 

*1:遠藤浅蜊;マルイノ.魔法少女育成計画「黒(ブラック)」(このライトノベルがすごい!文庫)(Kindleの位置No.1585-1587).宝島社.Kindle版.

*2:同(Kindleの位置No.783-784).

*3:同(Kindleの位置No.792-794).

*4:同(Kindleの位置No.1765-1766).

*5:同(Kindleの位置No.2866-2869).

*6:同(Kindleの位置No.1882-1889).

*7:同(Kindleの位置No.2074).

*8:同(Kindleの位置No.1623).

*9:同(Kindleの位置No.2500-2501).