すふぉるつぁんど

主に遠藤浅蜊著「魔法少女育成計画」シリーズについて書き残していくブログです。

まいにち魔法少女10日目:ファニートリック

 

さて本日のまいにち魔法少女です。ナンバーは35でファニートリックでした。

うわあlimited魔法少女。とそこまで出現を怯えているわけではないのですがファニートリック……ファニートリックか……難しい。

がんばります。

 

 

 

ファニートリック。登場話は「魔法少女育成計画limited」。黒と桃色の髪の混じる短髪で、頭からぴょんと飛び出たアホ毛が特徴的。ステージマジシャン風のコスチュームはキュートとかクールとか以前にセクシーです。網タイツはエロい。

まほいく界にとってトランプが不死の大群の象徴となってしまった今ではファニートリックの立ち絵背後に飾られているトランプカードでさえ恐ろしいです。

 

 

ファニートリックの人間体こと根村佳代ちゃんは中学二年生。芝原海ちゃんが変身したキャプテン・グレースにより「冒険を求める」ことを強制されています。

シャドウゲール、スタイラー美々あたりと並ぶ苦労人魔法少女ですが、彼女は人間体が中学二年生なだけに相方を「海ちゃん」と可愛らしい呼び方で呼んだり、口調がどこか幼かったり、まだ暴虐無人である振り回す側魔法少女ことグレースの扱い方をうまく心得ていなかったりするような気がします。未熟です。

 

「佳代はあたしがしてることに文句あんの?」「そういうことじゃないけど……」って会話はすれ違いそのものです。

グレースは佳代はなんだかんだ言って「冒険」を求めて(強調)付いてきてくれるものだと心から思い込んでて、ファニートリックのほうは海ちゃんには逆らえない、どうしようもないと諦めてついていっている。解消されないままに終わったすれ違いです。この辺はグレースの日のほうに回します。

 

 

佳代が冒険を求めていたのかどうかっていうのが大事なことで。

 

グレースが「二目と見られない無残な死に方を」して、自分でも驚くことに喜んじゃったファニートリック。彼女の喜びが真実であることは、プキンが、そしてフレデリカが認めています。さすがにこの2人が言うのなら信用していいことと思います。

ファニートリックはグレース、芝原海が死んだことが嬉しかった、嬉しく思うほどに海とは「一緒にいたくはなかった」のです。海と離れたい思いで勉強に励み、しかし付きまとわれ、「なぜここまで気に入られているのかわからない」と考えながら頭を振って諦めています。

 

それでも佳代ちゃんは心のどこかで海に憧れていたわけです。複雑な中学生の心。 「海」に憧れていたというのは「冒険」に憧れていたということと同義なんでしょうか?

自分にはあまりそうは思えません。

 

 

ファニートリックが初めて選択をし、脱獄魔法少女達に相応の報いを受けさせてやると決断した時の意思の源泉は「やつらは佳代のこれまでの人生全てを侮辱した」なんです。

そしてファニートリックをプキンとの最終決戦に駆り立てたのは、グレースが負けた相手にファニートリックが勝てば、それはグレースに勝ったことになるというイマジナリーフレンドこと脳内グレースの囁きです。

全てはグレース=海に勝利を収めるために、彼女を見返すためにおこした行動なんです。振り回されてきた自分が、海に勝つ瞬間。自己肯定。個人的な大勝利!

 

 

冒険に憧れる心というのは佳代視点では一切描写されていなかったりします。彼女が憧れているのはただ「芝原海」だけ。

虎の威を借りる狐だと思われて、馬鹿にされて、憐れまれて、蔑まれて、オマケのような扱いをされている自分と、肩で風を切って歩き、常に自信たっぷりな海。佳代にとってはこの立場差の方が、冒険よりもよっぽど深刻な悩みだったのではないかなあ。海への憧れは、冒険への憧れではないと思ってます。

(彼女が自覚のないままに冒険を求めていたとしてもこの意識はかわらないことだと思います。その場合、佳代の冒険を望む幼心を見抜いた海ちゃんはちょっと先行しすぎてたってことになりますね)

 

これはどちらかというと魔法少女ふたりの関係性、というよりも、ひとりの少女の成長物語に近い。ペチカ側の子。未成熟な中学生魔法少女

海に振り回されてきた自分を肯定してやるために、勇気を振り絞ってとんでもない怪物に挑むファニートリック。明確な「父親の仇を討つ」という意志でもってプキンと渡り合った繰々姫とはまたちょっと動機が違うわけです。すごく好きです。

 

ふたりぐみ……ふたりぐみ魔法少女。海の死をきっかけに爆発したファニートリックちゃんは難しい。個人的にグレファニはグレファニとして成立する前にグレースが脱落しちゃったイメージで。片思い。

だから自分の中ではシャドウゲールとスタイラー美々とファニートリックは同じ苦労人魔法少女だけど一切合切違う性質の子なんです。これは本当に強調したくて。ファニトの将来についてはあそこからどう転ぶか自分には全くわからなくて、ちょっと想像しにくいんですが、スタイラー美々のような性質になることはないんじゃないかなあって。

 

 

戦闘技術もまた未熟。当たり前だよ初心者魔法少女なんだから。

しかしウェディン作成のメモによれば身体能力は高いとのこと。まあ牙を隠してるレイン・ポゥ含めて身体能力底辺勢が多いから相対的に高いと言える。

ステージマジシャンとしての性能を生かして、縄抜けも出来る子ですしね。最終決戦でプキンの瞬きを見切ったのも、マジシャンの持つ動体視力(と、強い意志の力)が成し遂げたことかもしれません。ファニートリックはすごく頑張りました。繰々姫と同じく満足死勢に入ってるといいなあ。

きっと渾身のタイミングで魔法を発動した時、色々なものを見返せたんじゃないでしょうか。

 

彼女の独白に「大量破壊兵器なんて嘘っぱちだ」というものがありましたがビンゴです。でもファニートリックを始めとした初心者魔法少女勢がこの大ボラに騙されるのは仕方ないことです。

責任は7753にありますね!! いや冗談としても7753は結構世間しらずなところがあります。魔王パムを知らないとかモグリでしょう。

 

 

好きなイラストについて。問答無用で縄抜けをしようと決意を固めているシーンの挿絵です。あれはものすごくパワーのあるイラストです。涙、血、汗でぐしゃぐしゃになった顔に確かに意思の力が宿ってます。ファニートリックはすごく頑張ったと思います。

 

 

好きなセリフについて。独白が好きな子なのでセリフはなぁ。無難に「私は……私は……私は……私は……」でしょうか。フレデリカに「グレースの死を喜んでいたか」と聞かれ、否定しつつも自分の中を底浚いするファニートリック。ぐるぐる悩んでいる。未成熟な思春期の少女が変身した魔法少女が悩む対象はやっぱり自分自身についてのことであってほしい!

 

 

ファニートリックについては以上です。自分でもちょっとまとめづらくてとっちらかちゃいました。明日もがんばります。