すふぉるつぁんど

主に遠藤浅蜊著「魔法少女育成計画」シリーズについて書き残していくブログです。

まいにち魔法少女33日目:テプセケメイ

 

 本日のまいにち魔法少女です。ナンバーは40。テプセケメイでした。今気づきましたが前日のチェルナー・マウスと合わせて動物魔法少女が連続しました偶然。

 チェルナーとメイはどうぶつ魔法少女ですが雰囲気は結構違いますね。がんばります。

 

 

 テプセケメイ。登場話は「魔法少女育成計画limited」。アラビアンナイトの踊り子をモチーフとしたような外見の魔法少女です。かわいい……。頭の花は蓮かな。あまり詳しくはありません。コスチューム的に足・靴が確認できないことが残念です。魔法少女の靴を見るのは楽しい。(追記:魔法少女育成計画スクールカレンダーで形態変化するとぺたんこ靴を履いてることがわかりました。かわいい。嬉しい)

 メイの透き通った空のような眼の色はかなり印象的です。青い目魔法少女勢のなかでもかなり薄い青。細瞳孔勢。うーんかわいい。

 

 

  魔法は「風と同化してどこへでも行けるよ」。響きが好きです。

 ちょっと遠回しな魔法表現です。実態はかなりかなり凶悪。ストレートに「肉体を周囲の気体と同化させる」というもので、同化させた結果、物理攻撃は完全無効、切断も無効だったり、風を飛ばして攻撃したり、透過したり、分身したり、果ては巨大化、小型化、なんでもござれ。

「あまりにも大きくなったり多数に分裂したりすると存在が希薄になってしまう」という制約はありますが、それでも「空気」そのものになれるという力は異様です。強い。

 

 そんな凶悪魔法を持つメイですが、取られた攻撃手段としては「空気ごと凍り付かせる」「空気ごと密閉する」「空気ごと消し飛ばす」とそういう感じ。物理主体の魔法少女には厳しい相手ですが、搦め手を使っていけば無理ゲー……という程でもないのかな。

 

 

 limtiedでメイは中学生魔法少女サイドに立って戦いますが、その本質は中学生ではありません。彼女(彼という可能性もありますが、今回は「彼女」呼びで統一します)の元の姿はエジプト陸ガメのメイ。

 これまで知性もなく、考えることもなく、ただ生きていたメイは魔法少女となることで、他の誰よりも多くの物を手にします。初めて知能を得てあれこれ試したり飛び回ったりつついたりするメイはとてもかわいい。

 

 

 動物魔法少女仲間、チェルナー・マウスと比較して。

 メイも思考は単純で不器用でやはり動物的なものなのですが、それでも短絡的、というか、あまり何も考えていないように見えるチェルナーよりはまだずっとずっとあれこれ考えている子です。

 チェルナーはrestart終了後に「動物魔法少女」だという事実が明らかになった子ですが、メイは初っ端の独白で動物魔法少女であることを示唆させてくれます。実際に「エジプト陸ガメのメイ」だという事がわかるのは、監査グループを撃退して以降、中学生魔法少女たちが自分の魔法を確認するために集まっていた夜のことですが。

 

 あの描写を見たところ、ちょっと誤解していましたが、メイは自由意志でカメに戻ったり魔法少女になったりできるようですね。どういう仕組みになってるんだろう。

 一般的に魔法少女は人間体には性格や容貌の変化は起きない筈なのですが、動物魔法少女は動物体にある程度の「知識」が備え付けられるんでしょうか。

 

 ともかくそんな出自がカメのメイは、魔法の力に喜んでいる中学生と一緒に、もっと色々なことを考えています。「笑顔」を知らないので、作中でたびたび笑顔の練習をしています。笑顔の練習!

 

 

 さてそんな集合した魔法少女たちの会話から好きな部分を引用すると、 

「メイは一生這い上がることのできない地獄の底にいた。そこが地獄の底で苦痛しかないことにさえ気がつかなかった。気がつくというのはそういうことだ」

(中略)

「お前達は気がついていないのか?」

「ええと……なにが?」

「素晴らしいものを得た。手放したくはない。だから戦う。そのために全てを用いる。根にあるのは命。メイがメイであるということ。メイがメイであるということを守るためには死ぬわけにはいかない。死ぬのはとても怖いことだった。メイは知らなかった。でもお前達は知っているはずだ。そうだな?」

 

 いやー素敵です。哲学的なカメですね。メイはメイを守るために戦いを選んでいます。中学生魔法少女たちと協力して、誰が何なのか、何がどうなのか、はっきりと理解することはないままに動いています。

 ただそれでも、メイは、ウェディンのことは結構はっきりと認識していたように思います。名前を呼び違えずに呼んでいたし、リーダーだと認識していたし。メイのウェディン、それから仲間達への気持ちは、魔法少女になってから確かに育っていたのではないでしょうか。

 

 

 外から見て一切何を考えているのかわからないメイが、自分を守るために、得たものを手放したくないために戦うと言っていたメイが、泣いた。それはウェディンの、仲間の喪失を思ってのことだったのでしょうか。

 メイが泣いているシーンは、limitedでも一二を争う程に好きです。好きです……。

 

血の雨が降る中、せめて礼を言わねばと7753がテプセケメイを見上げると、彼女は涙を流していた。唇を少しだけ突き出し、まるで泣いていることが気に入らないとでもいわんばかりの表情で涙を流している。

「あの……レイン・ポゥは?」

「死んだ。ウェディンも死んだ。みんな死んだ」

全員、死んだ。レイン・ポゥも、ウェディンも、繰々姫も、ファニートリックも。

 

「メイは今笑ってる?」

「いえ……泣いています」

「泣くのは練習しなくてもできる。なんでだろう」

「なぜでしょうね……」

 

 メイの涙でlimitedの本編は締められます。全てが終わり、涙の意味も分かっていないメイと、ただ茫然と座り込んだ7753の二人が残されます。はああ。

 しかしこの部分を読んで感じる「寂寥感」「虚しさ」「安堵」といったいろいろな感情が、ページを捲ったエピローグでもう本当にめったんめったんに踏みつぶされるまでが「魔法少女育成計画limited」です。張り巡らされた謀略の数々に呆然とし、真の「虚しさ」を知る。メイの流した涙が遅れてもう一度心をえぐる。

 

 よくもよくもという気持ちですが、あのどんでん返しは本当に見事でした。limitedは読んでいると苦しくなります。一番苦しくなる。

 

 以降のメイは7753ハウスで仲良く同棲生活をしているようでまほいくの癒しです。7753とは結構うまくやっているようです。とてもかわいい。二人が何だかんだで立ち直ってくれて本当によかった。

 

 

 さて好きなイラストですが、うーん、limited後編、フレデリカと合流した後協力関係を築こうとするときの挿絵が好きです。皆がフレデリカを睨んでいて、別に特段恨みはないんだけど雰囲気に便乗してにらみつけるメイ。かわいい。

 

 

 好きなセリフ。セリフ。「泣くのは練習しなくてもできる。なんでだろう」はものすごくものすごく好きですが、一度引用したので別のセリフをあげるとすると「メイのランプはきれい」が妙に頭に残っています。かわいい。メイはセリフが好きなタイプの魔法少女です。

 

 以上。明日もがんばります。