すふぉるつぁんど

主に遠藤浅蜊著「魔法少女育成計画」シリーズについて書き残していくブログです。

まいにち魔法少女78日目:ヴェス・ウィンタープリズン

 

 本日のまいにち魔法少女です。ナンバーは15。ヴェス・ウィンタープリズンでした。

 無印魔法少女について書くのは彼女が最後です。最後にウィンタープリズンというのは、何だか感慨深い。実は自分が初めて無印を読み終えた後、一番好きだった魔法少女は彼女、ウィンタープリズンだったのでした。間違いなくまほいくにハマる一つのきっかけでした。がんばります。

 

 

 ヴェス・ウィンタープリズン。登場話は「魔法少女育成計画」。 

  無印にはマフラー魔法少女が2人いますがウィンタープリズンはその1人です。もう1人は言わずと知れたリップルですね。

 ウィンタープリズンのマフラーは彼女の意思で動かすことができるようです。ひえ。そういう要素は何気にまほいくでは珍しい気がします。ウィンタープリズンにはこれといったコスチューム付属武器が無いので、武器はマフラーと言えるかもしれません。

 

もう一つの彼女の武器としての固有魔法は「何もないところに壁を作り出せるよ」

高さ2メートル、幅1メートル、厚さ30センチという壁が視認できる速度で地面から生えてくるそんな魔法です。端的に言ってク……クズ魔法……いや使い所はあるんですがしかし使い所が厳しい魔法だ……。

 

 戦う魔法少女というものは200メートルをほぼ一瞬でかっ飛んで来たり10メートルをたった一挙動で詰めたりする生物です。その魔法少女に、地面から競り上がる壁が何の効果を持つでしょう。クラムベリーさんにもワンパンでぶち壊されてましたからね。

 しかしまあ視界を遮断するという意味では有用です。魔法少女の魔法には「視界内」が発動圏内の魔法がちょくちょくありますから。

 

 うーん壁の魔法を生かした戦闘がもっともっと見たかったなあ。クラムベリーVSウィンタープリズンはACESまで刊行された今となってもお気に入りのバトルです。「音を上げるまで殴り続ける」とウィンタープリズンが思った瞬間に、クラムベリーが魔法縛りを開放した、言い換えれば「音を上げた」っていうのが微笑ましいです。

 クラムベリーとウィンタープリズンさんはいつまでもにこやかに殴り合っていてほしい。クラムベリーのことを最初に「クズ」「狂人」と呼んだのはウィンタープリズンです。実際クラムベリーさんはクズだし狂人です。

 そういえば無知なのでクラムベリーさんの「やはり採石場には長いマフラーがよく似合う」っていうセリフの由来が未だにわかっていません。映画か何かが下になっているのかな。ご存知の方はぜひ教えて下さると嬉しいです。(追記:ありがたくも仮面ライダーであるというご指摘を頂き解決しました)

 

 クラムベリーさんと並ぶと露出度の差がものすごいことになるウィンタープリズンさん。彼女はまほいく魔法少女の中で一、二を争う地味コスチュームの持ち主です。コートにロングブーツ。マフラー。以上!ド派手髪色が跋扈する魔法少女達の中では珍しく大人しめな髪色。そして短髪。目の色は茶髪を薄くした茶色、らしいです文章上では。

 いや本当に、魔法少女にしては異常なほどに大人しい格好です。FANBOOKに収録された短編「トリック・オア・マジカルガール」ではほぼコスチュームそのままで芳子の前に登場していますが、それでも魔法少女と見抜かれていませんでした。ところでコートの中は隠れ巨乳だそうです。雫ちゃんは結構いいもの持ってましたしそりゃそうなのかもしれない。

 

 

 そんなウィンタープリズンの人間体は亜柊雫というお名前の神秘的な(神秘的な!)高身長女子大学生です。酒が強い。幼少期から天使だ妖精だと謳われた、女性にもてるタイプの美人さんです。実際両性とお付き合いした経験があるようです。

 現在は大学でゼミを同じくする女子大生・羽二重奈々、すなわちシスターナナとお付き合いしています。今までは余り長続きしなかったお付き合いも奈々が相手だと例外的に長く続いているようです。

 何故なら奈々は雫の運命の相手だからです。いやこれは間違いなく。まほいく界には数名が認めるところの運命というものがあり、そして奈々と雫はきっとそんな運命の元に巡り合った二人です。

 

 雫はその、あの、奈々の体形が体形であるためにデブ専だのなんだのと不名誉な謂れを受けています。しかし雫のアレはまず奈々を第一とする超然とした愛があり、その上に出来ればおっとりとにこにことダイエットなどに苦しまずいて欲しいという理想が反映されてあの理想ナナが存在していたのだと思います。思います……。きっと。

 

 

 ウィンタープリズンが抱くナナへの愛は非常に純粋なものです。ウィンタープリズンは性質として短気で神経質という要素があるのですが、ナナを前にするとそんなものは消し飛びます。一点の穢れもなく、ただただまっすぐにナナを慈しみ、守ろうとし、ナナが望む「王子様」として、ナナを守るためには命も惜しまないと、本当に一切の躊躇いもなく言い切ってしまえる子です。


 シスターナナの形をしているものは、たとえ偽物だとわかっていたとしても、攻撃できない、なんて。自分に今まさに致命傷を加えた存在にさえそんな事を考えています。彼女のナナへの信仰の深さは、揺るぎのなさで言えばまほいくワールドでもトップクラスのように思われます。

 ナナはシスターの格好をしていながら信仰心のない存在でしたが、ウィンタープリズンはそんなナナをただただ信仰していました。素敵です。何の見返りも求めない、ひたすらに超然とした愛情です。最後の最後まで「どうかどうか無事でいてくれ」と願うその姿は、一種理想の信仰スタイルでもあります。

 

 ナナがアレであるということを含めて、ヴェスナナの関係性は素晴らしい。ナナもウィンタープリズンも、すれ違っていることはどうしようもない事実なのですが、しかしウィンタープリズンの愛が驚異的に深いため(そしてウィンタープリズンが、シスターナナの歪みに気付けない盲目さを運命的に持ち合わせていたため)(追記:もしかしたら奈々が指摘したように、気付いていた上でなおそんな奈々を愛していたのかもしれません)に、すれ違っている二人としては考えられないほど良い具合に、二人ともが比較的満足な終息を迎えたのでした。

 自分は女の子が王子様をしているというシチュエーションにすごく弱いんだなあということをこのたび改めて自覚しました。というわけで好きです、ウィンタープリズン。

 

「この溢れ出る力は奈々から与えられた。ならば奈々のために使うべきだ」という最高の一文。これがウィンタープリズンの在り方そのものです。基本ひねくれた魔法少女ばかり好きになるんですが、ストレートに一直線なウィンタープリズンも大好きです。

「王子様」としての魔法少女、現行だとウィンタープリズンただ一人なんですよね。モチーフとしてのお姫様、女王様はシリーズを問わず一定数存在しているのですが。

特異な存在です。ウィンタープリズン。彼女の「王子様」としての在り方は非常に自然なもので、そこに葛藤というものは存在しません。いいね……。素敵です。

 

 

 さて好きなイラスト。episodesでの短編「ロボットと修道女」の挿絵が好きです。ウィンタープリズンさん、耽美が行き過ぎて絵的に浮いてます。かわいい……。あれで雫より小柄っていうのがもう本当にかわいい。

 

 好きなセリフ。「奈々はコロコロとしている方が健康的だし、なにより可愛いよ」がやっぱり印象的ですね……。雫はあまり努力しないままに美貌を持て余している感じの子な感じです。かわいい。多分無印の無自覚系美人と言えば華乃と雫です。

 

 以上。明日もがんばります。