すふぉるつぁんど

主に遠藤浅蜊著「魔法少女育成計画」シリーズについて書き残していくブログです。

まいにち魔法少女81日目(最終日):スタイラー美々

 

 本日のまいにち魔法少女です。ラスト。最後!

 80日間続いたまいにち魔法少女もついにこの魔法少女でおしまいです!よくよく考えると1年の4分の1欠かさず魔法少女について考えてきたという訳で、まほいくすばらしいなあという気持ちです。楽しかった。というわけでナンバーは63。スタイラー美々です。

 スタイラー美々は自分がものすごく大好きな魔法少女です……。具体的に言えば並べていって上から4番までに入るくらいに好きな魔法少女です。美々を語るためにがんばってました。

  本当に自分でも説得力がないなあと思うんですけど、誓って生成した乱数表には不正はありません。乱数回した当人が不安になる程に凄い巡りあわせでした。まさかスタイラー美々を最後に喋ることになるとは。がんばります。

 

 

 スタイラー美々。登場話は「魔法少女育成計画JOKERS」。

 「スタイラー」という名が示すように美容師モチーフの魔法少女です。刺繍入りエプロンが非常にかわいいです。露出度はわりあい高めだろうか。

 コスチュームとしてはショーウィンドウの中のおしゃれマネキンっぽさもあります。黒髪部分はウィッグで、地毛は白髪です。目つきがややキツい。比較的外見年齢が高めに感じる美人さんです。背中に背負ってるクッションはどういう具合でくっ付いているんだろう。

 

 魔法は「魔法のコーディネートで身だしなみを整えるよ」。生物をコーディネートして好きなように外見を変化させられる魔法です。対称は魔法少女から草まで様々。迷彩魔法としての運用も可能です。

 付属効果として、無限に生成されるカットシザーや剃刀や香水やらを出すことができます。リップルメルヴィルと同じく、美々も無限武器所持勢です。

 

 昨今の魔法少女アニメと、パフやらコロンやら、そういう「おしゃれ」要素って結構根っこで絡み合ってる気がするのですが、実際そういう要素とまほいく魔法少女の融合はスタイラー美々が初めましてです。しかし美々はおしゃれをする側ではなく、させる側なんですよね。自分が主人公になる気は無いというか、「美容師」というありかたからしてちょっと邪道を行く魔法少女のように感じます。

 

 

 ところでスタイラー美々は袋井魔梨華とセットです。相棒です。ふたりぐみです。どんなに美々自身が上っ面で否定しようとも、それはどうしようもない事実です。

 彼女は戦いに適さない魔法揉め事や厄介事を避けたがる性格のため、平和的な生き方を求める平和的な魔法少女だそうですが、しかしまあどう考えてもそれは嘘っぱちですね。スタイラー美々は、言葉の上では袋井魔梨華を拒絶し、戦いを嫌がり、常識人を気取るのですが――一枚薄皮をはがしてみれば実際のところ彼女は誰よりも袋井魔梨華の相棒に相応しい、戦いの場でこそ輝く一人の「戦う魔法少女」なのでした。

 

 そこがとても可愛い。可愛い……。ずるい。美々は本当に可愛いです。

 彼女は一応礼儀正しく平和的であろうとしていますが、割と簡単に化けの皮が剥がれてしまっています。例えば魔梨華の不意打ちを受けても一切動じずにそれをいなしたり。スタンチッカを追って廃工場のトタン屋根をぶち抜いて以後、何の示し合わせもなく魔梨華と背中合わせに立って臨戦態勢を取ったり。

 平静を保っている時の美々は敬語口調で、袋井魔梨華に対しても「あなた」とか「袋井さん」とか呼んでいますが、気が立ってくると「あんた」になります。袋井魔梨華を第三者に紹介する時は「うちの馬鹿」「この馬鹿」とか呼んでます。魔梨華が絶望的な戦況下でへらへらしていた時は「死ねよクソ花女」という至言が飛び出ました。

 

 そんな感じで、美々は本当に、上っ面さえはがせばものすごくクズっぽい要素がばんばか出てきて困ります。後にも先にも「相棒が物知りなので反感を覚えた」とかいう理由で地面に唾を吐く魔法少女は居ないんではなかろうか。平気で「クソッ」て悪態吐くし。平穏を愛する魔法少女とは。

 大麻果実を貰って多少回復し、袋井さんにお礼を言いに来たデリュージとインフェルノにイライラして、「彼女達に毒を吐くわけにはいかない。それを弁えるくらいはまだできる」と独白してる美々さんを見るに、やっぱり意図して冷静さを作ってるんだなあ……。

 

 

 しかし……しかし。「常識人に見せかけた利己的なクズ」でおさまらないのが、スタイラー美々の恐ろしいところです。平穏を愛する魔法少女であるという皮(とても薄い)(袋井魔梨華の相棒ではないという体)を捲って、クズであるという皮(分厚い)(嫌々袋井魔梨華の相棒をやっているという体)をさらに捲ったところに彼女の「内心の更に奥底」があります。

 その要素が窺えるのは、JOKERSの最終盤。彼女の脱落シーンですね。

 

砂山の向こうに砂煙を見た。

それが何かを考える前に身体が動いていた。

しゃがみ、両掌に砂を溜め、袋井魔梨華に向かってそれを浴びせた。(中略)

魔梨華を砂漠に溶けこませ、次は謎の魔法少女に砂を浴びせ、同様の砂漠迷彩を施した。(中略)

 次は自分に砂を浴びせようとしたが、先に砂煙が到着した。スペードのエースを先頭に、クラブのキングとクィーンが後ろからついてきている。

――間に合わ、

 

 付き合うのが本当に嫌なら途中で帰ってしまえばいい。そんなことはわかっている。魔梨華は本気で嫌がっている相手を誘ったりしない。彼女はああ見えても案外繊細な目で他人を見ている。美々はそれを知っている。

自分自身が付き合わされることを本心では嫌がっていないことも知っている。

 

 ううううう……。美々は魔梨華を理解して、魔梨華も美々を理解して、そしてここまで行きついていたのでした。それがJOKERS最終盤の描写で一気に明かされるこの素晴らしさ。うぐう。魔梨華が美々のありようを許していたのと同じように、美々も魔梨華を拒まずについていってたんですよね。相棒です。とてつもなくふたりぐみ魔法少女なんです……。

 JOKERS本編中で自己保身が最初に来ていたふるまいの多かった美々が、「何かを考える前に」魔梨華を助けようと動いたということ。そして、魔梨華の次に迷彩を施した存在が、自分自身ではなく、今の魔梨華が最も必要とする「太陽光」を与えてくれる魔法少女だったということ。その2つがスタイラー美々をはっきりとあらわしています。

 

 はーー。ずるい。ベテラン魔法少女ふたりというのは本当にずるい。この理解し合いの関係性があるうえで、美々が魔梨華を守り、安らかな顔で目を閉じた横で、魔梨華がぐるぐると動揺しているのがすごくよい。ここの魔梨華の動揺は、自分にこの上なく脱落の悲しさを伝えてきました。

 魔梨華の「嫌がる美々を連れてきて殺してしまった」という考えは美々と少しすれ違っていて、魔梨華もそれを冷静なところではわかってはいるのですが、それを訂正してくれる存在はもうどこにもいないのです。

 このむなしさが、自分はとても好きです。美々のことを考えるとすごく胸がぐっと詰まる……。平生の美々も好きですが、それに輪をかけて彼女の死にぎわが好きです。

 

 

 さて好きなイラストについて。悪魔と戦っている美々が好きです。あれはJOKERSで一番好きな挿絵だなあ。美人だ。

 

 好きなセリフについて。「馬鹿じゃないか。何が戦いだ。あんた地下に向いてないんだよ。太陽の光もないのにどうやって戦えると思ってたんですか」が好きです。だいぶ本性が剥き出しになってる。基本魔梨華思いですね。

 

 

 

 以上。終わった。終わった……! 明日もがんばります、じゃないですね。これにて魔法少女は現行分みんな喋り終えたことになります。楽しかったです。他の人の魔法少女トークもぜひ聞いてみたいので、誰かやってくれはしないだろうか。

 

 明日はまいにち魔法少女を終えての感想でも喋ろうかな。ここまでお付き合いしてくださった方がいらっしゃったら、ありがとうございました。