すふぉるつぁんど

主に遠藤浅蜊著「魔法少女育成計画」シリーズについて書き残していくブログです。

まいにち魔法少女94日目:ブルーベル・キャンディ(QUEENS)

 

 本日のまいにち魔法少女です。ナンバーは8、ブルーベル・キャンディでした。

 来た問題児。なにがブルーベルだ! いや知ってたんですけど。やっていきます。

 

 そういえばbreakdownの嘘予告自己紹介ページが発表されてましたねこのライトノベルがすごい!文庫 スペシャルブログ : 『魔法少女育成計画breakdown』5人の魔法少女。一月中の始動は叶わなかったようですがしばらくは月一遠藤先生短編ライフですし、待つことにも慣れてますし、嘘予告楽しいので笑顔で待ってますはい。遠藤先生がハードワークの結果として腱鞘炎になったりしないことを心からお祈りします本当に切実に……というのはほどほどにしてブルーベルがんばります。

 

 

 ブルーベル・キャンディ。正式名称はラピス・ラズリーヌなので、ブルーベルがブルーベルじゃないことを思い出して以降の彼女についてはネタバレ上等ブログらしくラピス・ラズリーヌと呼びます。なんだかいよいよ二代目との呼び分けが困難になって参りました。

 というわけでブルーベルはラズリーヌです。ブルーベル・キャンディがラズリーヌの名を襲う前のラズリーヌの名前だったりしたんでしょうか。良い名前ですけど未練とかそういうのは無かったのかな。二代目は無さそうでしたが。

 

 ACESのブルーベルまいにち魔法少女2日目:ブルーベル・キャンディ - すふぉるつぁんどといえばとかくデリュージを守ろうと走り回って飴を与えに与えていた印象でしたが、QUEENSに入ってから、デリュージはブルーベルの飴を受け取ってくれなくなってしまいました。それでブルーベルは途方に暮れてしまいます。彼女にとってデリュージに飴をあげる、というのは行動原理の一つだったりしたんでしょうか。

 ここでのブルーベルの飴。舐めているとデリュージちゃんが視野狭窄状態になりシャッフリンへの憎悪が加速することお墨付きのあれですが、果たして本当にブルーベル・キャンディが即時用意していたのか、それともあらかじめ準備していた飴を取り出しては渡していたのか、そのあたりはまあ曖昧ですが少なくともブルーベルがデリュージに与えたかった「心が穏やかになる」成分以上のものが含まれていたことは間違いなさそうでしょうね……。

 

 そこからブルーベルは流され流れて遺跡にまでやってきます。「宙ぶらりんでなにも持たず流されるまま来てしまったのはブルーベルしかいない」という彼女の独白はまさにその通りであるために痛ましい。

 記憶を取り戻して以後のラピス・ラズリーヌがブルーベル・キャンディのことを他人めいて表現している(私の中のブルーベルがそう言ったから)だけに、ただただデリュージを救いたい一心だったのに結果的に彼女を一番追い込んでしまったブルーベル・キャンディという魔法少女は、もしも自分のやった(やらされた)ことを理解したらどれほどショックだっただろうかなんて無益なことを考えてしまいます。

 はーブルーベルはもういないんだ……。かつてなく名前付き死者の少ないQUEENSではありますが、ブルーベルの消失もまた一種の死なのかもしれませんね。とはいえ一応ブルーベルは復活できるんですけど。

 

 記憶の再取得と共にこの世からさくっと消滅したブルーベル・キャンディではありますが、しかし彼女のあり方が後世に何の影響も及ぼさずに何もかもなくなったというわけではなく。

 デリュージにとって、ブルーベルにひたむきに愛されていた記憶は……全部が嘘だったとしても、それでもかつては救いとなったものだったでしょうし、ラズリーヌにとってのブルーベル・キャンディは間違いなく一つの感傷の種となりました。ラズリーヌはブルーベルを他人的な調子で見ているのに、それでもどこか割り切れていないようなそんな気配があります。それこそがラズリーヌの魅力かなあ。弱点でもあるように思いますが。

 

 

 ところでブルーベル・キャンディがラピス・ラズリーヌであるがために、話に大きく関わってくるのは初代ラピス・ラズリーヌです。別名田中先生。

 中盤においてブルーベルの口に飴玉をねじこんでテントに引きずり込んだ存在は初代であることがラピス・ラズリーヌの言葉で明らかになっており、じゃあ初代はどうやってあの遺跡に潜り込んだんだろう、というところがまた一つ謎として残っています。傭兵魔法少女として来たのか、それともオスク派ないしカスパ派からの伝手か(カスパ派があんなことになっているのでこちらのほうがありえそうですね)。

 誰も気付かないままにこんな不穏分子が潜り込んでいたとは。アーネがもうちょっと疲れていなかったら気付いていたのかなあ。直後の彼女が爆死していなければ、ブルーベルの不在等にはもっと早く気付けていたかもしれませんね。気付いていたからなんだという話ですが。

 

 その空きテントにて初代とラズリーヌは何らかの打ち合わせをしたんでしょうか。初代はその後しばらくラズリーヌと合流しなかったらしいですが何をしてたのかな。

 一度は姿をくらましておきながら、敵をばったばったと薙ぎ倒して(あとレーテ様の死にぎわブーストを借りパクしたりもして)わざわざ敵だらけの遺跡の最奥までやってくるラピス・ラズリーヌはどういう意図で以てやってきたんだろう。

 なぜラズリーヌが魔法の機械のある遺跡最奥までやってきたのか。それはプク様を止めるという魔法少女共通の目的だけによる行為だったのか? それは謎です。穏便に読むことも不穏に読むことも可能な部分だと思います。ラズリーヌに関しては語られていることよりも語られないことの方が圧倒的に多くて困ります。

 

「敵じゃない、敵じゃないって。唐突に出てきて驚かせたかもしれないけど、そういう魔法だから許してよ。いや、私の魔法じゃないけどさ」

 

 このセリフもラピス・ラズリーヌの謎の一部ですね。何らかの手段で他の魔法少女に魔法を使ってもらったのか? 何かしらのマジックアイテムを使用したのか? そこも一切語られることはありません。余談ですが、遺跡内の転移は人間(魔法少女)離れした空間認識能力が必要というのが識者の見解だったわけなんですが、それを当然のようにやってのけてますラズリーヌ。石投げ石ジャンプといい、終盤のラズリーヌ無双本当にすさまじいなぁ……。

 

 彼女が取り出した大量の赤い飴玉(あれはレーテの記憶を大量複製したんだろうか、それとも色々なところに居る死にかけ魔法少女の死にぎわブーストを貰いまくってたのかな。もし記憶の複製が可能だと魔法の活用方法がいよいよ跳ね上がるんですが(絶対に勘弁してほしい……)ラズリーヌの魔法の詳細はわからないままです)さえあればもう少し楽にプク様の魔法に対処することが可能だったというのは火を見るよりも明らかですし、彼女の魔法と身体能力があればプク派に転んだ魔法少女達だってワンタッチで即洗脳終了です。有能すぎる!

 ラズリーヌの魔法、戦闘に超絶役に立つことに加え、拷問にかけずに人から情報を抜き出せたりもして、更にその気になれば洗脳的行為もできるとわかってて便利極まりないです。魔法で対処できる魔法少女の数がとんでもなく多い。

 ここまで凄い子が生き残ったのは初めてな気がします。なんだかんだ便利すぎる魔法持ちは〆られることの多い魔法少女育成計画

 

 

 今わかっている彼女の魔法ができることを挙げただけでも、「何でもできる」という印象の強いラズリーヌだからこそ、何でもできてしまう彼女がこれからどうするのか、どうあるのか、というのはQUEENS以降の見所ですね。

 感傷を嫌うラピス・ラズリーヌにはしかし確かに感傷があります。ブルーベル・キャンディだった時代を経たことで、デリュージに多少の愛着があり、彼女に上手くやってほしいという想いがある。また、プフレがシャドウゲールを抱きとめる時の目を思い出しては「苦い気持ち」になっているわけですが、その気持ちを上手く表現することが出来ていない。

 その描写の数々は若いラズリーヌに(初代と比較して)まだどこか人間的要素が残っていることを意味しているように思います。初代は魔法少女を憎んでいるそうですが、三代目はそうでもなさそうな印象、というのも面白い。三代目はどれほど初代の思惑を教えて貰っているのでしょうか。少なくとも二代目よりは初代が薄暗いところに居ることを理解してそうですが。自分が初代に切られることを冗談風味とはいえ口にしているあたりも興味深いです。

 

 QUEENS以降の彼女はどうなるかなぁ……。感傷持ちのラズリーヌが、やろうと思えば確実に「そんな自分の想いさえ自分の魔法で消してしまえる」というのがわかっているからこそ以後の展開は読めない。彼女は自分の記憶や人の記憶を継ぎ接ぎしていくらでも「なりたい自分」になれてしまうわけで……次に見た時のラズリーヌがデリュージのことをさっぱり忘れてしまっている可能性だってあるわけです。怖い。

 でも、とりあえずQUEENSの時点の彼女はまだプフレの目を見た時に感じた苦さを「言葉で言い表そう」と努力していたり、湿っぽいのを嫌だと思いつつもデリュージのことを内側で留めておきたがっていたり、そこまで自分自身を喪失することに対して割り切った考え方を持っているわけではないように読めるので……自分の人格に執着の無いところまで感傷が擦り切れたラズリーヌは居ないと見ていいかなぁ。

 ラズリーヌはできるかぎり自分の知っているラズリーヌのままでいてほしい。自分の知ってるラズリーヌの情報あまりにも少ないんですけど……。

 

 

 好きなイラスト。ラズリーヌ無双時の超然とした挿絵。美しいなぁ。ひらひらと立ち回りつつ、その気になれば赤子の手をひねるように暴力で無力化できるであろうプク派魔法少女達を記憶取り出しでのしていくラズリーヌは、「殺したの!?」「しないよそんなの」というやりとりも含めてそれほど血に飢えた子ってわけでもないのかなーという印象です。いい子だなー! いや普通かこれ……?

 

 

 続いて好きなセリフ。これ! と言うわけでもないのですが「なんだか悪いね。ちょっと間に合わなくて」について。ラズリーヌがハサミ刺殺阻止に間に合わなかったことが意図的か非意図的かについては見解の分かれるところなように思います。

 うーんどうなんだろう。上記のように血を嫌うラピス・ラズリーヌであるというところに信用を置いたとすれば、もしラズリーヌ派閥がプフレを用済みとして切り捨てたかったとしても、手段を選べるのであれば三代目ラズリーヌは血が流れない方向を選びたがったんではないかなぁ……。彼女の魔法は殺さない方向で彼女を無力化することができるわけですし。それが死ぬことより優しいかどうかはともかくとして。

 

 でもどうしても初代にとってプフレには死んでもらわなきゃいけないという意向だったとしたら三代目もやむなく見殺ししそうではありますが。個人的印象としてはエピローグの彼女からプフレを意図的に見殺しにした感は無かったかなぁ。「プフレが死んだ原因」の要素に自分の存在が一切入ってないですし。

 本編内のラズリーヌについては本気で間に合わなかったんじゃないかなと思いつつ、じゃあもし仮にラズリーヌが現場に間に合ってシャドゲを止めてたとしても、プフレに何も手を加えずよかったよかったで解散してたかといえばエピローグの初代発言的にそれはないんじゃないかなあ……となるのでこう、自分があの時のラズリーヌの意向をどう読んだかについては上手く言葉で言い表すことが難しいです。あはは。

 

 

以上。明日は早いものでまいにち魔法少女extra最終日です。がんばります。