すふぉるつぁんど

主に遠藤浅蜊著「魔法少女育成計画」シリーズについて書き残していくブログです。

まいにち魔法少女120日目:オールド・ブルー(白)

 

 本日のまいにち魔法少女です。

 今日は初代ラピス・ラズリーヌことオールド・ブルーです。うお~奇しくもラズリーヌが連続した。以下感想。

 

 

 オールド・ブルー。くすんだ青を意味するその名前は、本来の彼女のものではありません。

 クラムベリーの試験により魔法少女となった時の本当の名前はラピス・ラズリーヌでしたが、自分は一線を退いてもこの名前を将来に残すために(?)、そして名前から紐付いてクラムベリーの子供達として追跡されるのを避けるために(?)、己の名前を捨てています。こう書きましたがどこまでが真意なのか全然わかりませんね。

 

 存在自体の初登場は、魔法少女育成計画restartでの二代目ラピス・ラズリーヌの写真立てですが、ビジュアルが公開されたのはこの「白」が初めてです。正真正銘の青い魔法少女だ。

 ゴテゴテときらびやかではないスタイルは本人の年季を感じさせますが、それでも「魔法少女」的であることを考えると、アスモナと比較すれば圧倒的に「若い」魔法少女なのだろうなと思います。

 実際クラムベリーの子供たちであれば自動的に(魔王塾の古参勢というほどではない)クラムベリーよりは後輩ということになりますしね。クラムベリーの活動年数めちゃくちゃ長いのでどのくらいのタイミングで魔法少女になったかで子供達の魔法少女歴も大きく変わってきちゃうんですけど……。

 

ただ、子供達の1人であるメルヴィルがrestartにて「先代ラズリーヌはクラムベリーの試験を潜り抜けた勝者の中でも指折りの古強者だった。魔法少女になる前から一秒の油断もなく生きてきた妖怪のような婆だった」*1 と独白してるんですよね。

 メルヴィルが先代の変身前、そして魔法少女として強者であることを知っているという事実から素直に考えれば、初代ラピス・ラズリーヌはめちゃくちゃ魔法少女として長生きというわけではないんじゃないかな……という印象です。

 ただメルヴィルが実際に見たわけではなく「ファヴが残していった記録」(その場合は映像記録になるのかな)からそれを確認している可能性も全然あるので、やっぱりここでもオールド・ブルーの魔法少女歴はハッキリとはわかりませんね。

 

 

 そしてこちらも初めて開示となった彼女の固有魔法。それは「本質を見抜く目を持っているよ」。 初めて見た時ハシゴとキャタツを同一存在扱いしそうだなとちょっと思ったのは余談として、もう明らかに強そうな魔法だと感じます。

 本質を見抜くというのがどこまで「通る」ものなのかは魔法の詳細が明らかになっていないので不明ですが、ランユウィの魔法が「ここぞという状況で成長」するように管理、誘導していく様子はなかなかにえげつなく、これを躊躇なく実行してしまえるのもすごい。

 オールド・ブルーの魔法の一端はそのランユウィ関連で示されており、彼女は未来視に近い精度で「死相を見抜く」ことができるほどの心眼の持ち主です。もう目がいいとか言う次元じゃないですが、本人の勘の良さ、知性の高さなどと固有魔法がものすごい噛み合い方をしているなと思います。 

 

「皮肉なものです。陽動のつもりで確保していたシャドウゲールがプク・プックにとっての本命だったとはね」
「陽動のつもりで確保?」
 「違いますか?」
「いえ……あなたがそういうのならきっとそうなんでしょう。私はラピス・ラズリーヌがつまらない嘘を吐くような魔法少女でないことを知っていますから」
「随分と大袈裟にお褒めいただきまして」*2

 

 これは魔法少女育成計画ACESでのオールド・ブルーこと初代ラピス・ラズリーヌとピティ・フレデリカがまだ共同戦線を張っていた時のやり取りですが。オールドブルーの固有魔法が開示されてからこの会話を見ると、確かにフレデリカが「陽動のつもりで確保」という言葉に引っかかったのも頷けます。フレデリカが彼女の固有魔法を既知だったかどうかはともかく。

 実際オールド・ブルーはどこまで見越してシャドウゲールを確保しようとしてたんでしょうね。記憶を失っているプフレが、魔法なしの己の頭による推論でプクの大まかな目的にたどり着いていたことを考えると、知性と魔法の合わせ技で一足早く儀式のキーとなるのがシャドウゲールであることに気づいていてもおかしくはありません。

 

 

 ここまで厄介な魔法・知性の持ち主でありながら、普段のオールドブルーはその牙を隠しています。「優しく柔らかな雰囲気」*3とは三代目ラピス・ラズリーヌの弁。今は人事部門にいて、隙あらば嘴を突っ込んで魔法の国の革命を遂げようと狙っているジューベ曰く、

 

 他人どころか身内でさえ犠牲にする容赦のなさ、それでいて人当たりはよく、数回会話するだけでも心を掴み、彼女の信奉者が増えていく。ジューベは自分こそが最も優れた知性の持ち主などとは思わないし思えない。オールド・ブルー相手に交渉のテーブルについて取り込まれない自信は全くない。私は一協力者である、と自分は思っていても、それが事実である保証はどこにもなく、いいように使い捨てられる恐れがついて回る。*4

 

 とのこと。あまりオールド・ブルーのことを好意的に思っていないラズリーヌ候補生の0・ルールーからは、「有能な人物で、同時に間違っても人格者ではない。[…]神様ではないし、善人ですらない。不誠実な秘密主義者だ」*5と散々な言われようです。

 

 こうしてみるとメルヴィルがオールド・ブルーの本質っぽい精神性について正しく言及していたのは意外というか。クラムベリーの試験中だったからこそ、「油断ならなさ」を隠し続けられるほど余裕を持つことができていなかったのかもしれないですね。

 

 

  そう、改めての記載にはなりますが、オールド・ブルーはクラムベリーの子供達です。

 魔法少女育成計画白に登場するクラムベリーの子供たちは4人(オールド・ブルー、シャドウゲール、リップル、そしてスノーホワイト。それぞれがクラムベリーによって魔法少女になったことでめちゃくちゃ人生が変わってしまっていると思われる。

 クラムベリー事件の後処理に当たったハルナも、捜査する過程で大きなショックを受けていました。それが魔法少女学級につながり、今中学生魔法少女たちが巻き込まれていることを考えると、クラムベリーの影響力 やっぱり凄まじすぎる……。

 

 オールド・ブルーがまだラピス・ラズリーヌだった頃に受けたクラムベリーの試験は、一体どんなものだったんでしょうか。朗読劇になったりしないかな? プフレがそれに近かったのと同じように、オールド・ブルーの魔法の国に仇なさんとする大義は、クラムベリーの試験をきっかけとして組み上がったものなのでしょうか?

 

 オールド・ブルーの行動指針として、QUEENSでも同様の描写がありましたが、彼女は魔法少女という仕組み自体を嫌悪している気配があります。

 

「私の最終的な目的、魔法の国からの離脱、魔法少女システムの破壊……フレデリカは絶対に阻止しようとする」*6


 魔法少女システムの破壊! それすなわち魔法少女育成計画の終焉ではないでしょうか? フレデリカが不倶戴天とする理由もしみじみとわかる。プフレとはまあ一時共闘できそうではある。

 ただ、現時点ですでに魔法の国は相当やばい状況らしいですし、オールド・ブルーが手を出さずとも魔法の国へのテロ行為を企てようとしている勢力は割といろいろあります。そんな末期めいた状況で、オールド・ブルーは敢えて自分の手で何をしようとしているんだろう。何を思ってプリンセス・ライトニングというちょっと凄まじい戦力を生み出すに至ってしまったんだろうか?

 

 

「白」に至るまでの長い間、打倒魔法の国、打倒魔法少女システムという題目を秘密裏に掲げ、オールド・ブルーは「研究部門」で着々と武力を培ってきた……ようですね。人造魔法少女育成計画の時点では、まだ「魔法の国」打倒の戦力確保の手段として理解しやすいものではありましたが(その結果JOKERSで無辜のピュアエレメンツが3人死んでるんですけど……)、ライトニング増殖バグみたいなあのあれはいよいよ禁忌に手を染めていないだろうかと思わなくもありません。

 そんなライトニングを駆り出してまで手に入れたい遺跡の遺物にはどんな力があるのだろう。そして中学校にライトニングを大量投入して2年F組生徒をどうするつもりなんだろう。自分の後継を探すに当たっても「青い魔法少女」を条件の一つとし、とにかく「青」に拘っていた様子のオールド・ブルーが、ここで切り札として作り上げた人造魔法少女が青要素の一切ない「プリンセス・ライトニング」達というのもちょっと不思議です。

 

 こうして登場人物欄の舞台に上がってきては居ますが、まだ固有魔法の詳細やその行動指針に謎の多いオールド・ブルー。とりあえず今のところ自分は魔法を生かした彼女の戦闘シーンが見たいな~と思っています。

 中学校での、遺跡での彼女はここからどう立ち回るんだろう。ラズリーヌ候補生ランユウィがオールド・ブルーに容赦なく使い捨てられている現状、出ィ子やライトニング(♡9)、そして0・ルールーにオールド・ブルーが目をかけるとはそう思えませんが……。でも中学校にやってきたオールド・ブルーはランユウィの冥福と出ィ子の無事程度は祈ってるんですよね(ライトニングは……?)ホムンクルス化している出ィ子や確固たる個性を獲得している♡9ライトニングとオールド・ブルーが遭遇した時、彼女がどう応対するのかも気になるところです。

 

 「黒」以前の登場人物であり生存者の中で、目的のためには手段を選ばないといった様子のオールド・ブルーによって、人生が大きく変えられてしまった魔法少女の筆頭といえば……勿論プリンセス・デリュージです。

 JOKERSから田中先生に見捨てられたっきりの彼女が、オールド・ブルーに向かい合う日は来るのだろうか。今のところはフレデリカ本拠地と中学校ですれ違っちゃってるので、出会うにはデリュージが中学校に向かわないといけないんですけど……。

 

 ところで自分はスノーホワイトが将来的に魔法少女からの卒業」を選ぶのではないかとちょっと思っていました。でもオールド・ブルーがそれを目指しているとなると、スノーホワイトはまた別の選択をするのかなあ。

 この世界一体どうなっちゃうんだろうか。やばい人が三賢人になっちゃったりもしてるし、もういよいよシリーズ自体がクライマックスというような気配もしますよね。スノーホワイトの物語が一区切り付いたとして、まだ魔法少女ってやっていけるものなのかな……。オールド・ブルーのことについて考え始めると疑問はつきませんね。

 

 

 さて好きなセリフ。好きというか印象的なセリフですが、フレデリカの本拠地に奇襲をかけるにあたっての、

「最悪の場合、遺跡から遺物を奪われたとしてもかまいません。ピティ・フレデリカさえ排除してしまえば悪用されるにしても想像の範囲内に収まります」*7

  という言葉には少し驚きました。つまりはピティ・フレデリカが使用する場合、遺跡の遺物は想像の範囲外の使い方をされる可能性があるということです。

 本質を見抜く魔法の持ち主である彼女が想定外を考慮している。自分の魔法に胡座をかかず、本当に一切油断していないなと思うと同時に、 フレデリカの奇想天外な発想力というか行動力ってやっぱりすごいんだろうなと思います。フレデリカが三賢人になっちゃうことや、出ィ子がホムンクルスになることなどは、オールド・ブルーの予想の中にあったんだろうか?

 ただ……これが適当言っているだけという可能性も十分あります。フレデリカを襲うのが目標なようでいて、ランユウィの命をかけた扉をつなぐ魔法の発動により中学校側に降り立ったオールド・ブルーからしたら、実のところ「ピティ・フレデリカさえ排除してしまえばいい」というスタンスの表明自体が偽りで、本命は実は遺跡の遺物側だったのかもしれません。実際自分を囮になんて全然してなかったし……。

 

 好きなちょっとした描写。これ描写というか好きなセリフパート2みたいなものなんですけど、中学校勢を囮にしてるんじゃないかとやんわり講義する三代目ラピス・ラズリーヌに対するオールド・ブルーの、

「囮とか、見殺しとか、そういうことを考えているのでしょう? きっとそんなことにはなりません。あなたは魔法少女学級に送られた仲間達の戦力を見誤っている。侮っている」*8

 このセリフ相当すき。いけしゃあしゃあと言ってる! ランユウィの死相を見てる上でこのセリフを言っているということがそもそも大嘘な上に、真の囮はフレデリカ側に向かわされた三代目側であるという言外の嘘があり、もう嘘のミルフィーユです。

 この人の言う事本当に全然信用置けないな。上にこうだろうと書きはしたけど本当に魔法少女システムの破壊したいんだろうか……。

 

 以上。こういうタイプの魔法少女にはありがちですが、セリフ全ての裏を勘ぐりたくなって困ります。ではまた明日。

 

*1:遠藤浅蜊 魔法少女育成計画restart(後) P.184 宝島社,2019.8.23(ebook

*2:遠藤浅蜊 魔法少女育成計画ACES No.3416 宝島社,2019.8.23(ebook

*3:遠藤浅蜊 魔法少女育成計画「白」P.118 宝島社,2022.2.10(ebook

*4:遠藤浅蜊 魔法少女育成計画「白」P.20 宝島社,2022.2.10(ebook

*5:遠藤浅蜊 魔法少女育成計画「白」P.66 宝島社,2022.2.10(ebook

*6:遠藤浅蜊 魔法少女育成計画「白」P.227 宝島社,2022.2.10(ebook

*7:遠藤浅蜊 魔法少女育成計画「白」P.227 宝島社,2022.2.10(ebook

*8:遠藤浅蜊 魔法少女育成計画「白」P.227 宝島社,2022.2.10(ebook