すふぉるつぁんど

主に遠藤浅蜊著「魔法少女育成計画」シリーズについて書き残していくブログです。

まいにち魔法少女121日目:プシュケ・プレインス(白)

 

 本日のまいにち魔法少女です。

 今日はプシュケ・プレインスです。おそらく当初の想定よりよっぽど大事に巻き込まれてそうな苦労人フリーランス魔法少女です。以下感想。

 

 

  プシュケ・プレインス。2年F組では唯一のプク派派閥から差し向けられた雇われ魔法少女です。フリーランスなんてのは多かれ少なかれ脛に瑕持ってるもんだよ」*1 とのことで、清廉潔白とはいかない様子なものの。それでもやってることがド真っ黒だったり、壮大に邪悪だったりする登場人物がちらほらいる中では、相対的に白めと言っても過言ではない存在だと思います。

 いや視点で明かされてないだけでプク派の密命を帯びている可能性もなくはないんですけど。一応校舎調べたりとかはしてるみたいですし……。何せ最初に遺跡の危険性と異物の重要性を認識していたのはプク派なわけですから、所属派閥としての怪しさは十分すぎるほどあります。

 ただとにかくプシュケがそんな崇高な使命を帯びてそうではない。首領たるプク様も死んでしまったし、プク派の影響力は現状あんまりなさそうです。

 

 そんなプシュケですが、カナの魔法少女評価によれば、「破壊力、耐久力、敏捷性、知性、自己主張、野望/欲望、魔法のポテンシャル全てが♡3」という驚くべき平均的魔法少女。逆に珍しい。

 魔法のポテンシャルを除けばグラシアーネと全く同じ数値になります。つまりは超戦闘向きというような魔法少女ではないということですね。単純なフィジカルだとどうにもならないので搦め手を使って立ち回るような感じ。

 人間態名は水田稚奈です。水鉄砲使い魔法少女らしく(?)名前に水要素がある。彼女の好きなものに FPS があるのはちょっと面白い。プレイ中めちゃくちゃトキシックだったりするのかな。

 

 

 ところで10歳でこのネーミングなの相当カワイイと思う。その由来でここまでカッコいい名前になるのもすごい。

 

 

 さて、「黒」ではキューティーヒーラーシリーズをこき下ろしてサリー・レイヴンの地雷を踏んだプシュケですが、あれから本当にキューティーヒーラーシリーズの視聴を続けているみたいです。

 地味に律儀だ。キューティーヒーラーっておそらく 1シリーズ1年のアニメで、結構重たいと思うんですけど、シリーズ何個かをもう見終えているぽくてすごい。魔法少女の体力による技だろうか。まあみっちゃんもダークキューティーの家でキューティーヒーラーギャラクシー一気見してましたしね。

 

 そこでのサリーとの相談を兼ねたお茶会では、髪留めの乱れやリップの荒れ対策などから周囲を気にして心労を感じている風なことを指摘されていました。わざわざ乾燥するから冬が嫌いと嫌いなものに記載があったように、唇が荒れやすかったりするのかな。ただでさえ2年F組近辺でのストレスが多いから影響も強そう。

 そう、プシュケ周りといえばやっぱりこのサリー・レイヴンとの交友関係が見ていて面白かったです。プシュケはフリーランス魔法少女、サリーは広報部門所属のキューティーヒーラー候補生と立場は違いますが、2人共フレデリカVSラズリーヌという二大陣営には(推定)所属していない、どちらかというと蚊帳の外側の魔法少女たちではあります。

 その空気を悟ったかどうかは定かでは有りませんが、この2人は既にごく自然な成り行きとして同盟関係を結んでいます。

 

まともな学校生活は魔法少女になる十歳までのこと、なって以降は学校生活を切り捨てて魔法少女活動に邁進していた。そうでなければフリーランスとして身を立てることは叶わなかったし、後悔をしているわけではない。*2 

 

 こういったバックボーンを持つプシュケのことですから、(起点はややビジネス的な同盟関係ではあれど)同年代で一緒にお茶をするようなクラスメイトというのは……サリーが初めての存在ではないでしょうか。

 サリーはいい目を持っている魔法少女です。プシュケが悪口を言っていてもそれほど周囲に悪感情を持っているわけではない、むしろ実は周囲を気遣っていたりするということをしっかり見抜いていて、相性の良さを感じます。

 口が悪かったり無愛想だったりはしますけど、同じ班の魔法少女たちのこともつまらない奴らではないし、むしろ面白みは強い*3 と実は好意的なんですよね。サリーは短い付き合いながらもわかりにくいプシュケのことを汲み取ってくれている。

 

 かつては友達の悪口を言いまくってグループから排斥された過去を持つプシュケ・プレインス。そんな彼女が、2年 F 組のクラスメイトの一員として、また3班の一員として創立祭の準備に勤しむ様子は微笑ましくもあり、そしてその創立祭が実行されることなく中学校が急襲されたことを思うと悲しくもあります。

 フリーランスというプロ魔法少女の1人ではありますが、なんだかんだでプシュケは中学校生活を割と楽しんでいたように思います。創立祭の準備時点でもうだいぶ浮かれていたりと年相応の精神性を見せていたりもする。その途中でサリーはリアルが充実していそうで学生イベントも色々慣れていそうと考えているのが若干すれ違ってて面白い。そちらはそちらで学園祭などはあまり経験していない側なんですが。というか2年 F 組の割と大勢はそういう人たちだったんですが……。

 

 

 プシュケが友人たちとの学生生活を楽しんでいる、その上で、話はフレデリカ陣営急襲時点に移ります。サリーとプシュケは前巻「黒」の時点で助け合う約束をしていました。というわけで、クラスを強襲され教室に爆弾を投げ込まれた時もプシュケは即座にサリーの腰を抱いて廊下へ逃走しています。

 

 さらっとやってますけど、リンゴ爆弾が投げ入れられてから爆発するまではスノーホワイトがカルコロとテティをかばうことができないくらいのごく短時間です。もちろん自分一人で逃げた方が生存率は高いわけで、「逃げるという選択肢が頭にきていたプシュケはいち早く反応することができた」*4 と独白するプシュケは、言外のこととして「サリーを確保して」逃げることを想定して動いていたんじゃないかなあ。

 この2人どっちが身体能力高いかといえば実は総じてサリーの方がフィジカル強そう(耐久力はどっこいかもしれませんが)な数値なんですが、その上でサリーよりプシュケが先んじたのは、フリーランスとして経験を積んできた上での判断力や対応力がものを言ったのかな。

 

 さて、サリーをかっさらい、渡り廊下の屋根を突き破って残骸の中に不時着し、そこでサリーと「このまま逃げる」「戻って戦う」で意見が割れた時。

 プシュケは舌打ちをしつつ、サリーとともに走ります。合理的な判断だと理論を並べてはいますが、これは……サリーと友好関係を築いてきた上での判断だったのではないだろうか。有り体に言ってしまえば絆されている。プシュケは、フリーランスとしての自分の判断よりも、サリーと肩を並べクラスメイトの力となることを優先したのではないかと思います。

 

 その結果プシュケは暴力のプロっぽい魔法少女と鉢合わせてしまい……おそらくは声量を魔法とする魔法少女の絶叫をモロにくらいます。

 

――早っ……!

 ここまで近寄られてしまうと水鉄砲は役に立たない。距離をとろうと後ろへステップし、敵はぴたりとついて離れず、距離を詰めたままプシュケの肩を両手で掴んだ。サリーが叫ぶ。カラスが急降下した。敵の胸が不自然に膨らみ、中の空気を全て吐き出す勢いで叫んだ。

 なにも聞こえない。意識が遠くなる。視界の隅でカラスが飛んでいる。プシュケは膝から崩れ落ち、耳と目から温かな液体を流しながら受け身も取れず倒れた。*5 

 

 ううん。これは……明らかに格上だ。まともにぶつかるとどうしようもないような「戦う魔法少女」。彼女らと正面からかちあってしまったらプシュケの勝ち目は薄いですね。結果論的にはなりますが、「逃げる」ことを選ぼうとしたフリーランスとしての彼女の本来の判断は正しかったのではないかと思います。

 

 これ多分鼓膜破れてますよね。神経あたりもぐちゃぐちゃになってそうな。まあその程度で済んでたらもはや御の字というか、この後普通に流れるようにとどめを食らっててもおかしくないような状況ではある。

 目と耳からおそらく血を流して倒れるってだいぶ内部的損傷がすごい。近くで同じ絶叫を耳にしたであろうサリーのダメージはどの程度なんでしょうか。プシュケの命が助かるかどうかは、サリーがここに介入できるかどうかにかかってきそうですね。

 ただプシュケは生きてるにしてもかなり絶望的状況ではあります。生死がわかるのは赤の登場人物欄にいるかどうかかな……。

 

 

  不穏な引きにはなりますが好きなセリフについて。

 「まあそうなったらそうなったで諦めるしかないね。校長の悪口で盛り上がりながらお別れパーティーでもすりゃいいんじゃない?」*6 

 これ好きです。なんだかんだでクラス自体に愛着を持っているっぽいプシュケが校長のやっていることを知ったらもう悪口言うところじゃなさそう。 

 

 好きなちょっとした描写。「黒」ではおそらくキューティーヒーラーのことをろくに知らなかったであろうプシュケが、フレデリカ陣営に中学校を急襲された際には

 渡り廊下の向こう側から飛び出してきた魔法少女はキューティーパンダのお面を被り、猿のように長い尻尾の魔法少女だった。*7 

と、キューティーヒーラーの識別ができていたところが地味に好き。世界にはキューティーヒーラーが識別できる魔法少女とまだできない魔法少女に分けられます。7753とか……。

 

 ここで言及されていたキューティーパンダといえば、短編魔法少女のお約束」スノーホワイトがポージングを披露していた「キューティーヒーラーストライプ」シリーズの登場人物です。

 キューティーヒーラーストライプはゼブラとパンダとオルカとペンギンでチームを組んでるちょっとおもしろキューティーヒーラーです。オルカとペンギンが一緒に居て良いのか? と見る度に思う。パンダの口上は「竹林を統べる白と黒のメルト」。かっこいいんだかかっこよくないんだかという感じですね。このキューティーヒーラーを認識できているということは、つまりプシュケは既にストライプまでは追ってるということになるのかな……。

 

 以上。2年 F 組の生徒に関してはホムンクルス化していないというだけで少し安心するようなところすらあります。全然プシュケ生死不明なんですけど……。ではまた明日。 

*1:遠藤浅蜊 魔法少女育成計画「白」P.53 宝島社,2022.2.10(ebook

*2:遠藤浅蜊 魔法少女育成計画「白」P.166 宝島社,2022.2.10(ebook

*3:遠藤浅蜊 魔法少女育成計画「白」P.167 宝島社,2022.2.10(ebook

*4:遠藤浅蜊 魔法少女育成計画「白」P.262 宝島社,2022.2.10(ebook

*5:遠藤浅蜊 魔法少女育成計画「白」P.265 宝島社,2022.2.10(ebook

*6:遠藤浅蜊 魔法少女育成計画「白」P.55 宝島社,2022.2.10(ebook

*7:遠藤浅蜊 魔法少女育成計画「白」P.264 宝島社,2022.2.10(ebook