すふぉるつぁんど

主に遠藤浅蜊著「魔法少女育成計画」シリーズについて書き残していくブログです。

breakdown11話感想

 

 11話読みました!! なんだかんだでほぼ1年近く連載されてるんですね……。

 今11章と考えるとだいぶ終わりが近づいてきたのかもしれない。終わってほしくないような、魔法少女育成計画の外伝が果たしてどんな終わり方をするのかが楽しみなような。そんな感じの感想です。 

 

 

ドリーミィ☆チェルシー

 

 チェルシーパートの戦闘描写については説明不要の最高でした。

 彼女の信念としての魔法少女愛が結晶化するようなオマージュ精神が、ダンスやフィギュアスケート、バレエの技術を取り込みんでかわいい自分をこれでもかと演出する強い意志が、チェルシー視点を通してびしばしに伝わってくる。強くても弱くても善人でも悪人でも、自分のやりたいことをやってる魔法少女は本当に本当に輝いてますね。全然関係ないけどリッカーベルって元気系魔法少女なんですね。

 

 チェルシーもとい夢野さんは魔法少女活動を言い訳にしてグータラしてる人なんじゃないかと一時はわりと真剣に思ってましたが(いや夢野さんがグータラしてるのは間違いないんですが)、ああ少なくとも魔法少女の姿をとっている限り彼女は本当になりたい魔法少女を全力でやってるんだなあと今回猛烈に納得させられました……。背骨の音まで可愛く鳴らしちゃうチェルシー。強い。可愛い。努力と才能と執着の可愛さ!

 

 可愛いだけじゃなくて強いのがチェルシーの物凄いところ。ただ魔法と身体能力と可愛いの混ぜ込み方が優れているのみならず、星ファンネルの精密操作、鏡から作った星を利用しての死角のカバー、太陽光攻撃などなど、戦闘に関してとにかく頭が切れる!

 

左足がより強く自己主張している。必要なのは休憩だ。戦いなどではない。というかこれ以上戦うのは無理だ。追い詰められた時にこそ魔法少女の真の力が発揮されるなんていうのは嘘八百だ。そんな時に力を発揮するのは魔法少女ではない。戦うのが大好きな魔法少女もどきだ。チェルシーとは違う。

 

 そんな戦闘に関する才覚が卓越してるチェルシーのこの独白、読んでる途中であまり本文とは関係ない想像をしてしまい思わず笑ってしまった。これ覚醒の話をしてるんだろうなと思うんですけど、作中屈指の「戦うのが大好きな魔法少女さんはチェルシーとは違う理由で覚醒拒否したのを思い出して。

 魔王塾の人達はチェルシー判断だと間違いなく全員魔法少女もどきでしょうね。ぶっ殺すが平然と選択肢に入りがちな戦う魔法少女ズを想うとチェルシーが女神を「ごめんなさいと謝らせ、警察に引き渡」そうとしてるの感動するくらい平和的(であり危険行為)だ。世界観の強固さからくる考え方なんだろうなあ。

 

 

 閑話休題。笑顔VS笑顔ほんとうに怖くてよかった。あの女神と腕力で押しあえるってとんでもなく馬鹿力なような。

 改めてこの遠距離攻撃やってよし飛んでよし近距離力比べやってよしのトンデモ魔法少女チェルシーさんに対してマーガリートさんはどう対処する心づもりだったんだろう。このチェルシーが勝てないらしい夢野母は物理無効持ちだったりするのか……?

 

 そして最後に「シェパーズパイのことを思い出してしまったせいで心が沸騰しそうになるも、すぐメリーによって覆い隠された」という描写について。今回恋々の判断によってチェルシーの洗脳は無事解けたようですが、ではメリーへの恋愛感情という覆いが外れたこれから、彼女はシェパーズパイの死と再度向き合うことになるんだろうか……。

 自分が恋々の魔法にかけられていたという自覚はあるのか、恋々式の洗脳が解ける瞬間はどういうものなのか、洗脳中の恋愛対象を解除後はどう感じるのか。恋々の魔法とその周辺については色々かなり興味があります。毎話毎話面白いな〜と言ってたけど読了後に続きが気になる!という気持ちが一番強くなったのはこの11話でした。

 

パステルメリー

 

 メリーもチェルシーと同様に洗脳解除のようで、とりあえずよかった。しかし一体彼女はどんな気持ちなんでしょう今。

 12話でメリーの視点読めたら嬉しいです。彼女の台詞や言動には以前からちょこちょこ危うさみたいなものを感じるんですが、それはどういうバックボーンから発生してるのかが気になる。雇用主も片思いの感情も失った状態で危険地帯にぽんと放り出されて、メリーはこれからどうするんでしょうね。チェルシーとは洗脳以前みたいに仲良く(?)できるのかな。

 

 ところでラギおじいちゃんを落っことした「うっかり」について、メリーはかなり自分を責めていたようですが、今回はかなり結果オーライだったんじゃないだろうか。もしメリーがラギさんを無事恋々の元へ連れて来れていた場合、アグリと同様にラギさんの身も間違いなく危うかったでしょうし。

 メリー本人はチェルシーに救出されて多分……無事っぽいのでよかった。しかし吹き飛ぶ羊の群れって光景がものすごい。

 

ネフィーリア

 

 アグリのおっぱいにデレデレしてたらしれっとアグリ家の一員にさせられてたネフィさん、色々災難。

 彼女の仕事仲間であるところの恋々はどう考えてもこれから精神がヤバいことになるだろうなという感じなんですが、ネフィはそれのフォローをできるんだろうか果たして。

 

どちらも好きなタイプのクズだった。置いていかれたくない魔法少女と、のし上がりたい魔法使いの組み合わせだ。欠けている部分を組み合わせたよう嵌り方にも見えるし、どちらかがどちらかの死因になるような危うさもある。

 

 とは9話でのネフィのアグリ&恋々への評価でしたが、ううん。組み合わせの片方が欠けたわけで、これからどうなるかをネフィーリアは楽しめるのか。

 というかネフィが女神に追われてる場合絶対に楽しんでる場合ではない。ネフィの身体能力だとターゲットにされた瞬間に即詰みそうだし……。今話でもナヴィまわりの怪しさを恋々と同様に見抜いていたり良い目をした魔法少女であることには間違いないんですが、フランチェスカ相手だと良い目ってあまり意味を成さなさそうで。厳しい。

 

らぶみー恋々

 

 はい。はあ。恋々…………。

 恋々が家族を持ち出したところで残りページ数を確認してうわあこれはこれは来るかと身構えてた……んですが、ああ……。「来る」こと自体の覚悟は多少できてもその描写のされ方がとにかく鮮やかで、浅い想像なんか塗りつぶしてしまう文章の切れ味に呻いてしまう。これは、恋々……どうなってしまうんだ。

 

「裏切るくらいなら死にます」とまでの忠誠を誓った雇用主が、そして「お母さんは生きていた」と思わせてくれた人がナチュラルに最高異常思考)死んでしまって、駒としてのチェルシーパステルメリーも失って、ネフィも消えてしまった。

 彼女はこれからどうするんだろうか。恋々はなぜ本当のお母さんを殺したんだろうか。今回のお母さんの事故死も無かったことになるんだろうか?

 

 そういえば恋々が女神の接近に気付けなかったというのはフランチェスカがマーガリートさんからラーニングした歩行法も一因なんでしょうけど、なりふり構わずに遁走してたチェルシーの移動音も(空中移動とはいえ)一切聞こえてなかったのを考えると消音石効果もあるのかもしれない。あれ地味にかなり迷惑ですね。

 

再登場魔法少女+α

 

フランチェスカ

 まずはやっぱりフランチェスカについて。超強い以外特に言うことがない。

 泉の女神が明確なモチーフである上で唯一喋ってくれる台詞であるところの「あなたが落とした斧は金の斧ですか?」「それとも銀の斧ですか?」について、今回チェルシーが原典通りの回答をしましたがそれで特に何か変わるわけでもありませんでした。うーんどうしようもない。

 これは本当に暴走しているのか、それともナヴィさんの手の内には女神を大人しくさせられる「正しい答え」があったりするんでしょうか。

 

 魔法少女育成計画に登場する規格外強者の中でもこの魔法少女は屈指のどうしようもなさがありますね。思い出すといえばグリムハートさんですけど、彼女は尊大さという弱点(であり強み)があったり、苦労人ジョーカーの目を通すことで多少の愛着が発生したりなどで結構キャラクター性を楽しむ余地があったように思います。というか好きですしグリムハートさんのあり方……。

 しかしフランチェスカはただただ恐怖しかない……と思ったんですけどよく考えたら強さの中に可愛さを取り入れようとしているあたりは恐ろしくかわいかったかもです。金髪トーガでプク様に印象が引っ張られてたけど大人っぽい外見年齢らしくてそれもかわいい。

 

 なんかもう攻略不可能なのではくらいの猛威を振るっているフランチェスカですが、これはグリムハートよろしく正面から打ち倒す以外の攻略法になってくるんだろうか。チェルシーの星攻撃で多少の血が滲むのなら、恋々の矢をチェルシーの星にくっつけるなりなんなりで「射止める」こと自体は可能かもしれない。

もうラギさんの言うように脱出口を作ってとっとと逃げちゃうのもありだ。そのラギさんはどのあたりで落っことされたんだろう。クランテイルと再合流できたらいいですね。とはいえクランテイルはネフィーリアによってラギおじいちゃんのrestartでのアレを吹き込まれてるんですけど……さすがに即敵視みたいなことにはならない……んじゃないだろうか。

 

 

曲岡統太&イオール&られ子

続いて統太くんとイオールとられ子。というかられ子! られ子視点! やったー!

ネフィ好みっぽい……いい性格の……魔法少女! 好き! 統太くんに対して小賢しいとかガキが余計なことをとか主家の娘のイオールにもお気楽なお嬢様とかごく自然に口が悪い。好きです。

 いやーほんといい……。ナヴィに利用されて恩師の死の一因となった可能性に直面し、その罪悪感に悩むより前に責任から逃れることを考える。「私のせいじゃない」と強く想い、自分本意でもがき生きること、それがられ子にとっての「前向きに生きる」への解釈でした。

 

 この……これ。11話においてのアグリの死(そして恋々の母親喪失)は強烈に頭が揺さぶられる死の描写でしたが、対してここで繰り広げられたのはじわじわと時間をかけて染み込んでいく死の描写でした。この「前向き」という話、前話こと10話でマーガリートさんが持ち出した概念でもあるんですよね。

 

前向きでなければなにもかも上手くいかなくなるのが、マーガリートの知る「魔法少女という生き物」だ。

 

 そして恐らくマイヤがられ子に伝えた「前向きに生きろ」はマーガリートのそれと同意義だったんじゃないかなと思います。

 マイヤがマーガリートにも同じ思想を伝授したのか、逆にマーガリートの考え方にマイヤが影響されたのか。はたまたベテラン魔法少女として、類友として、二人は似たような思考の持ち主だったのか。そのところは今はわかりませんが、マーガリートとマイヤとの「腐れ縁」と呼ばれる関係性を、こんな迂遠な経路で感じることになるとは思わなかった……。

 

 られ子が亡き師の教えを(多少られ子の精神性による軌道修正を伴いつつ)実行していること、られ子の「前向き」さは恐らくマーガリートやマイヤという強者として生きた魔法少女とは種の異なるものであること、二人分の死(と一人分の生)を経由してそのずれを意識すること、ちょっと伝わりにくいかもしれないんですけどすごく面白かった。魔法少女の死をもう何度も何度も見てるわけですけどこういう経路での死の実感はなんとなく久々というか新鮮だった気がする。

 

 られ子周りで一つ気になるといえばやっぱり戦闘に優れているわけでも精神性が家に忠実というわけでもないられ子を、どうしてマイヤさんが教えを施して戦闘技術も教えてお嬢様の横につけてと目をかけてあげていたのかということですね。マイヤはられ子がナヴィに情報を流していたのを知らなかったのかな。ナヴィを軽蔑し、イオールの「家」に忠誠を誓う彼女はられ子の何に価値を置いていたんだろうか。

 主の危険を差し置いても自分が生き延びようとする前向きさはある意味でいいところで強みではありますが、しかし従者適性は低いような気がするんですが。「壊れた物体を直す」魔法がすごく便利だからとかそういう可能性もあるのかな。

 

 さてこれで統太くんとイオールは正真正銘の二人きりに。環境さえ違えば少年少女の孤島大冒険でファンタジーでアドベンチャーで胸ときめきそうなシチュエーションですが魔法使いサイドの人達が既に死にまくってるのでときめきとかそういう状況にない。

 

 

ナヴィ・ル&7753&テプセケメイ&マナ

 でそのフランチェスカさんと関係ありそう……なナヴィさんと77メイマナチームについて。ナヴィさんがどういう立ち位置にあるのかわからないなあ。多分マイヤさんを排除したかったのは確かみたいですが。フランチェスカのことや契約についてどんな考えでいるんだろう……。ここが明かされたらもうほぼフルオープン感はありますが。

 ここのパートでマナさんが監査監査しているところが見られるのすごくよかった。「正しくマナだった」、いい描写だ。メイもまたいつも通りでした。「メイは死んだ」というパンチのある台詞が好き。飛行能力のあるメイなら上空に魔法の絨毯があるか確認できそうですね。

 

 7753はどうあっても他人を疑いたくなたいし不快にさせたくない人なんだろうなあ。それが一番楽だと思う。

 彼女はlimitedに至るまで魔王パムを知らなかったり元同部門所属の大犯罪者ことピティ・フレデリカを知らなかったりする具合の結構な魔法少女世間知らずで、そういう経歴だからこそ魔法少女を魔法使いを無防備に信じようとしてしまえるし、そういう性格だからこそあの魔法を持ってる上で今まで平穏無事に生きて来られたんだろうなとも思います。

 7753のこれまでを考えると、彼女にとって初めての距離感のひとであろうマナさんとはいい具合の影響を及ぼし合ってるんじゃないでしょうか。

 

 改めて7753は一般人視点で事件に巻き込まれているなあという感じですが、7753がスペシャリストなところといえばとにもかくにも自分の魔法なので早いところゴーグルが取り戻せると良いですね。ゴーグルで覗いたフランチェスカに攻略の鍵があるかは横に置くとして。

 

 

アグリ

 最後にアグリイェルレイムエイド・クォーキ、ことアグリさんについて。これはもう確実に死んでる。恋々のお母さん発言を笑い飛ばさず、更には見知って間もないふたりと家族になろうとまでアグリさんが言い切ったことには、これまでの恋々がアグリに向けてきた真摯な気持ちが影響していたのかもしれません。自分の劣悪家庭環境を金の力で乗り越えたい人なので、家族という関係性を幸福なものとしてやり直してやろうという気概もあったんだろうか。

 死した彼女の肯定はこれからの恋々にどんな影響を及ぼすんでしょう。もう既にかなり記憶の蓋が緩んでたところに駄目押しのこの死。惨そう。

 

 

以上。やっぱり一番気になるのはこれからの恋々ですね……。週刊振り返りF2Pなどを読みつつ更新を楽しみに待とうと思います。