すふぉるつぁんど

主に遠藤浅蜊著「魔法少女育成計画」シリーズについて書き残していくブログです。

まいにち魔法少女77日目:スノーホワイト(JOKERS)

 

 本日のまいにち魔法少女です。ナンバーは65というわけでスノーホワイト(JOKERS)でした。

 JOKERSのスノーさんはこれ以上なく重い……。がんばります。

 

 

 スノーホワイト。登場話は「魔法少女育成計画JOKERS」。16人の魔法少女たち枠では無印以来の登場です。

 彼女は無印から顔立ちがものすごく変容しましたね……。きりりと引き締まった眉。むすっとした無表情。左手に握るは、かつてハードゴア・アリスを屠り、そしてリップルの左目と左手を奪っていった魔法の国の日用品こと凶器ことルーラです。
 もしかしてスノーホワイトは左利きなんだろうか。ちょっとその辺りは曖昧ですが、立ち絵では左手にルーラを持っていることが多い気がします。頭を飾る蕾が少しだけ膨らんでいます。あと花がひらひら散っています。怖い。

 

 

 JOKERS開幕前、正しくはlimited終了前の時間軸におけるスノーホワイトは、restart時からあり方そのものは変わっていません。
 かつての師、ピティ・フレデリカが名付けた魔法少女狩り」の名に相違なく、悪の魔法少女を狩り、狩り、その合間も人助けをし、学校を時々サボったりしつつ魔法少女活動を続けています。明らかにオーバーワークではないかと思うのですが、そこはスーパー電子妖精ことファルのサポートで何とかなっていると思いたい。スノーさんはファルとの二人三脚でJOKERS開幕までになんと27人もの魔法少女を摘発したそうです。どう考えてもおかしい。


 そんなスノーホワイトさん、いつの間にやら監査部門から独自の捜査権を頂くまでに名を上げていました。「外部職員の扱い」ということだそうですが、お給料は貰っているんだろうか。「魔法の国の名誉住人」という謎のスタンスも相俟って『魔法の国』内でも中々に知名度が高いお人になっているのではないでしょうか。

 学生しながら人助けしながら監査部門から外部職員として扱われつつ魔法少女狩りをするスノーホワイトさん、やっぱり働きすぎです……。

 

 

 そんなオーバーワークは、無印で芽生え、ピティ・フレデリカにより育てられた「自分の信念」を貫きたいがための行為なのですが。しかしその我武者羅なあり方が、リップルをlimited事件に巻き込ませるに至ってしまったと知り、スノーホワイトは大いに動揺します。

 それは動揺するのも当然だ。スノーホワイトにとってのリップルは二人きりの生存者であり、修行仲間であり、かけがえのない友人だったはずです。

 

 スノーホワイトが修羅の生き方を歩むと決めた時、リップルはそれを引き留めたのですが、スノーホワイトはそれを振り切って道を選び取ったのです。だからリップルスノーホワイトのフォローをしようとして危険な目に遭ったのなら、それはスノーホワイトが遠因となっているわけで。
スノーホワイトは大切なものを守るため力を手に入れ、しかし大切なものは掌から零れていった。」という言葉の通り、リップルというかけがえない友人は、彼女が自分の意思を通したがために行方をくらませてしまいます。


 そんなわけで彼女はJOKERSが開幕する以前から非常に心が乱れています。自分の在り方に自信を無くし始めています。しかしそれでも、JOKERS本編ではきっちりと最善を尽くした行動をとるのですから、つくづくスノーホワイトの精神力は恐ろしい……。

 

 第一章でファル視点からさっくりと拾われただけの、このスノーホワイトの傷。考えれば考えるほど、JOKERSでのソツの無いスノーホワイトの活躍が不思議に思えてきます。リップルが生きているかもしれない、という辛うじての可能性が、彼女に再び武器を取って立ち上がらせる力を与えたのでしょうか。

 

 

 という訳で一章から先の本編スノーホワイトについて。基本的に心を読んでの大立ち回りを見せてくれます。

 スノーホワイトが一人いると自動で出てくる情報量が多くてすさまじいですね。味方、敵、両方からどんどん情報を仕入れて最善の行動をとっています。戦闘でも活きる魔法なので本当に強い。まほいくワールドに最も適応した魔法と言っても過言ではないかもしれない。

  restart,limitedでよく見られた、読者側と魔法少女側の情報格差メルヴィルが明らかに音楽家意識のコスチュームであること、メルヴィルの魔法そのもの、トコの言う「悪い魔法使い」が実際は悪い魔法使いではないこと等々)がJOKERSではあまり見られません。というかスノーホワイトの方が明らかに情報持ちで、読者側に彼女の葛藤は最後の最後まで伏せられたままだったりします。

 

 そう、スノーホワイトは読者側にも明かさないままに、JOKERS本編中で、元々揺らいでいた自分の在り方を更にぐらつかせるような行為をしていたのでした。

 それは、テンペストとクェイクが既にクビヲハネられていることを、インフェルノとデリュージに明かさなかったということ。大局的に見れば間違いなくそれは最善の行動でしたが、しかし人質が殺されていくのを見殺しにしたということでもあります。

 

 インフェルノに最後までその事実を伝えないまま、手を握って彼女を見送った。そんな自分には悪人を裁く資格があるのだろうかと、全てが終わった後のスノーホワイトは一人考えていました。降りしきる雨が彼女の精神状態を示しているようで苦しい。

 ああ……。スノーホワイトはどんどん深みに嵌っていっている気がします。大丈夫だろうか。彼女の理念が理念であり、そしてその理念には自分が守れなかった、自分が選択できずにただ殺されていくのを見ているだけだった、そんな魔法少女たちの思いが絡みついているのでどうしようもない。スノーホワイトの在り方は既に自縄自縛の域に達しているのかもしれません。この悩みが、苦しみが、スノーホワイトをじわじわと追い詰めてしまっています。

 

 

 ところで「極限状況下で、誰にも告げないままに魔法少女を見殺しにした」、というのは、まほいくで初めて聞く出来事ではありません。

 ここのリンクがすごくいい具合にまほいく人間関係を複雑化させているのですが、resrartでのプフレもまた、ラピス・ラズリーヌを、本来この場に居るべき魔法少女ではないと知った上で、それを止めなかった、そんな魔法少女でした。

 実際あそこでラズリーヌを止める理由はプフレには無いんですよね。あの段階でのrestart、ものすごく戦力が枯渇しているので。確定白のラズリーヌを戦力として扱わなければ詰みは近い。しかしまあ、止めるべきを止めなかったことは確かです。

 

 JOKERSで人質を助けに行くことを提言できなかったスノーホワイトだからこそ、自分の取れる最善のために他の魔法少女を犠牲としていく、そんなプフレを、シャドウゲールから記憶を託されてなお一思いに裁くことが出来なかったのかなと考えています。プフレはもっともっと、自分の目的のために意図して魔法少女を犠牲にしているので、スノーホワイトとは実際全然立場が違うのですが、しかしスノーホワイトが悩んでしまう理由もよくわかります。

 自分にコンタクトを取ってきたシャドウゲールが、ただただプフレを守ろうとして放った「なにかあれば、私を殺してください」という言葉も、ただ一人で立ち、守るべきリップルを失ったスノーホワイトに刺さったのかもしれません。というかまず間違いなく刺さると思う。知らないとはいえシャドウゲールの言葉選びよ。

 

 

 スノーホワイトの葛藤がこれからどういう解決を見せるのか、それはわかりません。わからないうちに「魔法少女」そのものの存続さえ危うくなってたり、リップルがすごいことになっていたりして、もう彼女の精神値は限界に近いかもしれない。以後でどういう着地を見せるのか、それが非常に気にかかるところです。スノーホワイトとプフレの対話が結構山になってくると思うのですが、どうでしょうね。

 しかしうーん、かえすがえすもスノーホワイトは主人公的存在なのに視点が本当に少ない。ううう。もっとスノーホワイトの感情を拾わせてほしい。

 

 

 さて好きなイラスト。高校生になった姫河小雪ちゃんの挿絵が好きです。素朴だけど可愛らしい。

 

 好きなセリフ。「私は敵でもない相手に刃を向けたくない」が好き。格好いい……。

 

以上。重い。明日もがんばります。