すふぉるつぁんど

主に遠藤浅蜊著「魔法少女育成計画」シリーズについて書き残していくブログです。

まいにち魔法少女41日目:CQ天使ハムエル

 

 さて本日のまいにち魔法少女です。ナンバーは76。前回と連番。CQ天使ハムエルでした。

 好きですハムエル。うまく言えませんがかなり好きです。がんばります。

 

 

 CQ天使ハムエル。登場話は「魔法少女育成計画ACES」。

 名前の語源は無線通信用語CQと、アマチュア無線家を意味する「ハム」だそうです。自分は無線について一切知識がなかったので、「CQ天使」という名前を見た時はさっぱり意味不明でした。ピーキーエンジェルズに次ぐ天使勢ですが、その外見は全く天使らしいものではありません。

 

 初見であのビジュアルを「天使」と思えた人、居るんだろうか。天使の光輪と言える部分には中心を割くようにして電波受信マークが走り、天使の翼があるべき場所には骨…骨なのかな。ともかくピーキーエンジェルズの片翼のふわふわ感とは一切合切趣旨を違えた武骨なものが生えている。

 

 更に尻尾!あの尻尾の形状は天使と言うよりも自分はどちらかと言えば悪魔をイメージします。眼のキラキラ感はウェディンを彷彿とさせます。身体にちょいちょい生えてる花は何かな。アジサイ(追記:QUEENSプフレ曰く勿忘草)

 立ち絵のポーズがポーズなのであまりコスチュームの全容はわかりません(おまけにACESでハムエルの挿絵が無い)が、恐らくは高露出魔法少女です。

 

 

 さてそのハムエルがACESでどういう立ち位置にいるかを一言で言えば、観光客です。いや……それはあまりにも可哀想です。うーん。しかし、ハムエルは……本当にACESでは大きな活躍の少ない子でしたね……そんな状態でもキャラクターとしては非常に好きなんですけど。

「地獄から蘇ったシャッフリンハンター」という毎日読み上げたい美しい日本語を生み出してくれただけでもすばらしい業績を残してくれたと言えます。

 

 ハムエルはオスク派の魔法少女魔法少女を使い捨てると言われているオスク派のなかで、魔法少女が少ないならチャンスは少なくないはず」「使い捨てにされないよう立ち回れば問題ない」と考えて動く頭の切れる自信家です。

 今回、ACESの舞台・W市には、内容自体にはあまり気が望まないながらも、上の命令に従い、シャッフリンⅡを伴って、部隊の指揮官として参戦します。結構いい立場の子なのかな。実際戦闘能力はあまりないらしいため、本当に立場としては参謀程度の物です。

 

 

 彼女の頭が切れるところは、ACESの序盤――主に序盤で示されています。シャッフリンによる包囲網を予めスノーホワイト・うるる・宇宙美の周囲に作り上げ、それによる失敗をただの失敗に終わらせず、特に思い悩むこともなしにうるるの魔法「嘘をつくのがとても上手いよ」の魔法を対策しています。

「可愛い部下」ことシャッフリンについてはあまり犠牲を出さないように、と考慮しています。意思の存在さえ薄く、あの皮肉っぽくかわいいジョーカーちゃんも居なくなってしまったシャッフリンⅡを、魔法少女を使い捨てる思考のオスク派に所属していながら使い捨てようとしないのは非常にえらい。

 

 JOKERSでオスク派筆頭グリムハートが見せた「交渉の余地なし、戦力ですべて押しつぶす」というプレイスタイルに対して、ハムエルのそれは「戦力を要所で使いつつ、妥協点を探して可能なら交渉も考える」というもの。オスク派も一枚岩ではないのだ。というか、オスク派が全員魔法少女のこと蛮族だと思ってなくてよかった。

 

 頭が切れ、安全圏から的確な判断を下し、スノーホワイト達をきっちりと監視し……という隙のない姿には、この人はいずれ真綿で首を絞めるような嫌らしいやり口でスノーホワイトを苦しめるんじゃないかなあ……という不安が胸を過りましたが(初読時)、上空から路上で遊ぶ子供達を発見し、警告をするコミカルなシーンではやや和みました。かわいい。

 

 

 さてそんなこんなでハムエルさん、無事スノーホワイト一行を泳がせてプレミアム幸子の所在を突き止め、後はシャッフリン達に確保させる、というところまで行ったは良いんですが。

 突如現れた地獄から蘇ったシャッフリンハンター含む多数の魔法少女に襲撃され、シャッフリン達が悪魔と地獄(略)の手によって無残にも蹂躙され――ハムエルの計画はずったずたになります。そんなの予想してない。あたりまえです。

 

 詰将棋めいたハムエルのシャッフリン配置はものすごく好きだっただけに、初読以降の感想としては結構可哀想だなあという気持ちが強いです。本当に、デリュージ一行さえ来なければあの完璧に近い布陣はスノーさんにもひっくり返せなかったんじゃないだろうか。横槍を想定できなかったのがハムエルの痛いところです。

 

 何だかんだで負傷しつつ、「拡声器で脳内に直接叫ぶ」というあまり強力ではないもののガード不可能という意味では悪質な魔法を展開したのち、ハムエルはシャッフリンに撤退を命令。それが地獄(略)さんの心に燃え盛る復讐の炎に油をだっぱだっぱ注ぐ行為になるとは知る由もありません。当然です。

 ここで撤退すれば最悪「実験場」行きとなる、と独白するハムエルさん。実験場って響きはちょっと魔法少女のきらきらから遠ざかりすぎてないですか。今更か……。

 

 

 後は地獄(略)さんの執念のシャッフリン狩りが始まり、ハムエルも

考えに考えた末、諦めた。

これまで、幾多の窮地を知恵を絞って乗り越えてきたハムエルだが、やってやれることとやれないことがある。これはやれないことだ。

 

 とまあそんな感じでちょっと種を蒔くだけ蒔いて撤収することにします。

 転んでもただでは起きない、その姿勢が素晴らしい。タフです。今までで一番屈辱的で最悪な負け戦だったでしょうが、それでもめげない。偉い。そういうところが好きです。

 

 

 で、ハムエルは撤退準備を整えつつスノーホワイトの頭の中に直接話しかけます。

 ちょっとここは強調したいんですが、困った声、ではなく、意思をもって語り掛ける声、をスノーホワイトが魔法的に聴きとるのは本当に珍しいことなのではないでしょうか。ハムエルは距離を置いているので、スノーホワイトの読心魔法も通用しない。そのため、スノーホワイトにとってはハムエルの言葉が嘘か本当かもわからない。スノーさん的にはとんでもなく珍しいタイプのコミュニケーションです。

 

 そういう意味も含めて、スノーホワイトにとっては、この様々な意味で特別な一方的会話は印象深いものだったと思います。というわけで、

 

スノーホワイトはプク派に所属していたとしても間もなく、プク・プックの力を長く浴びてはいないはずだ。ほんのちょっとした疑念の種くらいにしかならなくても、なにも無いよりきっと意味がある。

(中略)

案外、スノーホワイトと協力する未来は近くに来ているのかもしれない。

 

 これも、スノーホワイトに濃い印象を残したハムエルならありうるかもしれません。単巻退場でも申し分のない強烈なキャラクター性のハムエルでしたが、再登場してくれたらうれしいなあ。好きなので。

 

 

 さて好きなイラストについて。立ち絵しかない。

 

 好きなセリフについて。「お前の長広舌のせいで夜眠れなかったなんて怒られてはかないませんのでこの辺で」というさよならの挨拶が好きです。

 安全圏でかなりいろいろ見通してるプフレと、現場で頑張りつつ情報を手にしきれていないハムエルの立場差よ。なんだかんだプフレは入れ違いで前線に来ましたが。

 しかしやっぱりよく考えている子は好きです。ハムエル。好きです。

 

 以上。意外と長くなりました。明日もがんばります。