すふぉるつぁんど

主に遠藤浅蜊著「魔法少女育成計画」シリーズについて書き残していくブログです。

F2P12話感想

 

 本日、月刊魔法少女育成計画の更新がありました!

 

konomanga.jp

 

 本当に久々ですね……。遠藤先生がインフルエンザだったとのことでお大事になさってほしいです。アニメファンブックは3月17日発売。対談からポスターから諸々楽しみだ―。というところで12話感想いきます。

 

 

 12話。12話は……「魔法少女育成計画F2P」という外伝を読むことの重要性を何倍にも跳ね上げる重要な事実が明かされた回でした。スピンオフとはいえ侮れない物語であるということは話の規模やら明かされる『魔法の国』の情報の多さなどで何となく察されるところがあったのですが、ここまで「魔法少女育成計画」本編に生きる魔法少女達も揺るがしかねない魔法・魔法の道具が出てくるとは!

 

 その件については一まず置いておいて。冒頭は眼の下に隈のある下崎さん。晶との会話を経て彼女にも何かしら思うところがあったのでしょう、比較的与しやすげな水琴とお話をして反乱軍の反乱を止めさせようと試みます。が……

「ダメだよそれじゃ 裏付けがないもん 保障にならない」という言葉でバッサリ切り伏せられます。当然といえば当然。下崎さんが本気で「私が保証する」が通ると本気で思ってたならちょっと甘すぎるところがありますが……アルマは『魔法の国』所属のサラリー魔法少女と言ってもまだ新人。『魔法の国』の非常さを知らないところを中学生に苦笑と共に指摘されても仕方ないところがあります。

 

 そんな不器用で交渉下手な彼女だからこそ、水琴は晶と馨と自分の事情について、本来敵であるところの下崎さんに明かすつもりになったのかな、と思うと彼女の職業魔法少女になりきれていない「甘さ」こそが何らかのきっかけになっていくのかもしれません。

 

「あの2人はね ちょっと壊れてるの」「でね 壊しちゃったのは――…私なんだ」というこの台詞回しが非常にこのうえなく好き……。水琴の何とも言えない微笑といい、「壊しちゃった」というどうしようもない響きといい、人を惹きつけるものがあります。先の気になるここで場面は転換して人事部門へ。

 

 

 初登場の新魔法少女、人事部門副部門長であるクリオネモチーフ魔法少女っぽいクリオちゃん。ああかわいい……。どこかの時系列で人事の部門長はプフレちゃんであるわけですが、プフレが出世街道を突き進む間でこのクリオさんと接触することはあったのかな。絶対人間関係最悪っぽい。

「できたばかりの小さい研究部門」という表現あたりからもF2Pは少なくともプフレが人事部門長になるよりは前な話なんじゃないかなあという印象があります。あくまで印象なんですが……。

 

 人事部門側にジューベが呼びつけられているあたりからも人事部門>研究部門という権力差は明らか。クリオもその立場差に応じて実に尊大な態度をとっています。怖い。ジューベの魔法の詳細・制限をクリオさんが勝手に把握しているのは、人事の職権を利用した上でのことかなーと思うと、やっぱり人事部門所属ってだけで職業魔法少女に対してイニチアシブを取れるところがありそうです。

 

 

 そんなクリオさんが(アルマの生存確認は差し置いて)ジューベにお願いしたいことというのは、「歴史上すべての魔法少女が掲載された名鑑を持ってるよ」という魔法を持つ魔法少女が持っていた名鑑を、結界の内部の魔法少女が持っているかどうかということ。「歴史上すべての魔法少女が掲載された名鑑」……!

 

 これ……これが、ミースが何故半年以内にF市内に誕生する魔法少女が反乱軍に切り札たる魔法を持っていたか、の答えになるとしたら。それはとんでもないことです。この名鑑にはもしかしたら、これから生まれる予定の魔法少女さえも掲載されているのかもしれない。そんな記録が『魔法の国』にあるとしたら、『魔法の国』が魔法少女を制御するにあたってこれほどやりやすいことはありません。便利な魔法持ちは囲い込み、不穏分子は誕生した折に摘み取ってしまえる。地球産の人造魔法少女はこの名鑑に載りうるんだろうか、というところは謎。

 もし名鑑が未来の魔法少女を対象としない場合でも、ものすごく便利なことに変わりはありません。レイン・ポゥを代表するような『魔法の国』が把握していない魔法少女に対してだって、名鑑に載ってしまえば「把握していない魔法少女がいる」という事実を確認してしまえますし、もし名鑑のデザイン元となっている(逆かな)オフィシャルファンブックの「魔法少女コレクション」程度の個人情報が開示されている場合、その魔法少女が何をしているのかも大まかに理解してしまえるのです。とんでもない魔法アイテムだ……。

 

 いやあ名鑑については詳細とこの先がものすごく気になる……。この名鑑が「魔法少女育成計画」本編の段階でどこにあるのか(現存しているのか)というところはとんでもなく重要なポイントだと思います。この名鑑を見た上で、この名鑑があることを理解した上で行動を起こした魔法少女が果たしているのか、いないのか。13話以降での名鑑の行末も注目です。まあ大方ほぼ間違いなく反乱軍が所持してるんでしょうが……。

 

 

 そんなこんなで場面は下崎さんと水琴の会話に戻ります。重要な情報のオンパレードで困る。いや困らないんですけど……。それにしても12話の情報量は多すぎる!

(余談:「多分 言いたくないことを 聞いてる 私は」という下崎さんの独白はものすごく……ものすごくまほいくの地の文の成分を感じます。こういうのを読むたびにF2Pのノベライズが読みたいという意味不明な感情に一瞬憑りつかれますが、柚木先生のかわいくて格好いい魔法少女の顔と相乗効果を為して漫画形式でとても楽しい魔法少女育成計画F2Pになっているわけなので……、いやでもやっぱりノベライズが出たら歓喜して買いそう)

 ここでようやく、じわじわと開かされてきたセラセラの魔法の詳細が明らかになります。彼女の固有魔法の説明文は「人の死をなかったことにするよ」というもの。死をキャンセルできる魔法少女、という謳い文句に相違の無いその魔法は、しかし常人の想像する「死をなかったことにする」ものではなく……。

 死んだ人を「この世界に最初から存在しなかった」ことにしてしまう、という恐ろしいものでした。なんて……なんて魔法だ。いやあ……。セラセラが与えられたのは、蘇りでもなんでもなく……死ぬよりももっと厳しいところに死者を追いやってしまう残酷な魔法でした。

 

 ここで読み違えてはいけないのが「存在しなかった」ことになったとはいっても、その人が過去に生み出したものや物質的な影響自体が「なかったこと」になるわけではない、ということですねー。じゃなきゃ小山内家の両親に魔法を使った段階で晶と馨は消えてますから。

 彼女の魔法はどちらかというと世界人類の認識に作用する魔法と考えたほうがいいのかな。だからこそ両親の存在が「なかったこと」になってしまった馨と晶がバグってるわけですし。

 

 小山内姉弟の両親の死がもし『魔法の国』に復讐を誓う発端になっているとしたら。その場合の小山内家のふたりは、自分が反乱を起こすにあたっての理由さえわからなくなってしまっているということになり……惨い。

 セラセラの魔法の惨いところは、存在を奪ってしまったことで、ふたりに両親の死を悼むことさえ禁じてしまったというところなんじゃないかなぁ。彼女らはもう親の死とまっすぐ向き合うことは絶対に許されないわけで。そんな人達にブレーキはありません。いやあこれ下崎さんどうやって止めるんだ……。どうしようもなくないか。セラセラもとんでもない魔法を引き当ててしまったんだなぁ。

 

 彼女は恐らく自分の魔法の詳細を理解しないままに魔法を行使したんじゃないでしょうか。プレミアム幸子もそれで友人を死に至らしめてしまっていましたが……規模の大きくて取り返しのつかない魔法を持っている魔法少女にとってこういう「事故」はわりとありがちなのかなぁ。トラウマ間違いなしだと思うんですが……。

 

 

魔法少女育成計画」というシリーズは、魔法少女の死を経て、悩み苦しみながらも一歩前に進んで行く生き残り魔法少女が多く描写されています。ラ・ピュセルやアリス、インフェルノ達に恥じないように生きていこうとするスノーホワイト、トップスピードの死を経て、彼女のように厚かましく(褒め言葉)人に関わっていく術を身につけ、料理の練習を始めたリップル。料理の練習をしているのはペチカに身を挺して命を救われたクランテイルも同じです。7753にはB市での大量の死が今でも心に焼き付いていますし、マナは下克上羽菜のような誇り高い監査官であろうとしています。

 そんなシリーズで、彼女達の成長を、想いの積み重ねを一瞬でかき消すことができてしまえる魔法少女が登場する、ということは、ちょっと想像以上に重かった……。洗脳魔法の横行する魔法少女育成計画なので、セラセラが「生きている」だけで彼女の意に反して本編の魔法少女の出会い・別れを打ち砕いてしまえる可能性が無視できない規模になってくるわけです。いやさすがにありえないと思うんですが可能性の話をしています。怖い。F2P読んでて一番怖いことです……。セラセラ……。

 

 そしてそんな薄ぼんやりした可能性に怯えること以上に、セラセラの魔法の表現には明確に本編の魔法少女を意識させるものがありました。それはQUEENSのシャドウゲールです。

 シャドウゲールはラピス・ラズリーヌの手でもって「プフレ(人小路庚江)の存在を無かったことに」されてしまった魔法少女です。彼女が人形状態から仮に復活した場合でも、晶・馨のようにどうしても何か「欠けた」状態でしか居続けられないかもしれない。

 同じ魔法ではないのだからはっきりどうと言えるわけではないのですが……それでも、家族以上に顔を合わせていた存在が欠落した場合どうなるか、という参考として、晶馨のふたりがどうあるのか、どうなるのか、というところは非常に気を付けて見ていきたいです……。

 (余談2:それにしても、飴玉で全部奪われたとはいえ、自分以外のプフレと関わっていた人はちゃんと彼女のことを憶えていて、そして飴玉さえ手に入れればいつでも「思い出す」ことのできる(その結果はともかくとして)シャドウゲールについては、やっぱり全部終わったわけじゃないと思う思います。「終わっていない」からこそその先に破滅があるかもしれないというあたりについては……ううんはい。とにかく晶馨が欠落を抱えつつも表面上日常生活ができているあたりから、エピローグの抜け殻状態魚山護がいつか会話くらいはできるようになるんじゃないかなという希望を持っていきたい。QUEENSのことやっと消化が進んできたところなのに問答無用でQUEENSプフゲルについて考えることを迫ってくる(曲解)F2PはQUEENSでめためたにやられた読者に優しくない……)

 

 というあたりで12話感想は以上です。はーー明日が13話。色々気になることが多くて大変です。おわり!