すふぉるつぁんど

主に遠藤浅蜊著「魔法少女育成計画」シリーズについて書き残していくブログです。

ペチカ&カプ・チーノ編「森の音楽家クラムベリー外伝 魔法少女育成計画 unripe duet」感想(その4)

 

 魔法少女育成計画11周年おめでとうございます!!! 11周年!?

 いや~時が経つのは早いものだ。restartアニメ化も決定したかと思えば今年の10月には朗読劇第二弾が決定、

 

 翌11月にはなんとなんとなんと最新作魔法少女育成計画「赤」の発売が決定と、

 

 

 2023年がかつての2016年を思わせるような怒涛のまほいくイヤーとなってきています。うお~~嬉しい!やっぱり「赤」の発売決定が一番嬉しい。

 自分は正直なところ「白」やの衝撃の展開やとんでもない引きを見て、この先について考えるのは次巻の「赤」発売までちょっとやめとくか……と思ったままコールドスリープについていたので、こんなにおめでたいことがたくさんなのに未だに半分夢の中みたいな心持ちなんですよね(1ヶ月待機だと思っていたら1年半以上待つことになり……)

 なので、早いところスノーホワイトの物語の一区切りを見届けたいという気持ちが最も強い。今度こそ絶対に11月に発売されてほしい。欲を言えばアニメは赤以降に見られたら……すごく気持ちの整理が付いて嬉しい! 本当に気持ちの整理が付くかどうかはさておき!!

 

 整理をつけるためにはまず朗読劇の気持ちの整理からということで、日にちも本当に随分空きましたが引き続き感想の記録を残しておきます。今回はペチカ&カプ・チーノについて。

 

 

ペチカ

 

 めでたくアニメ化も決定しましたご存知魔法少女育成計画restart」の登場人物たるペチカ。アニメバージョンでもきっと活躍を見せてくれることでしょうが、その時の声優はこの朗読劇と同じ井上ほの花さんなのだろうか。

 そこはまだ未定かもしれませんが、個人的にはぜひ井上ほの花さんでアニメも見たい!!と、そう思うような朗読劇の名演でした! ペチカパートが始まる時の「風のようにビルの上を駆け……」の入りは四回聴いて四回ともワクワクした。魔法少女初心者の全能感溢れる描写が本当に好き。

 

 自分は朗読劇を観るにあたって魔法少女育成計画シリーズ(単行本)を再読して臨んだのですが、その時に改めて思ったのが……ペチカ滅茶苦茶良いんですよね。いや今更何を言っているのかと思われるかもしれませんが、自分が歳を取れば取るほど(restart初読時以来自分が約のっこちゃんの一生分の年月を生きていることに改めて慄きます)、restart発売からの年月が経てば経つほど、あの時恐怖に震えながらも魔法を発動させたペチカの勇気に、そして勇気に身を奮い立たせるでもなくするりとクランテイルと体を入れ替えれてしまった瞬間のコントラストに痺れてしまう。

 

 ちょっと話が逸れますがままならない社会でどうにか生き抜こうと手を尽くしながら、しかしここぞという瞬間でペチカへの信義を重んじたリオネッタの美しい姿にも年々強く痺れるようになっています。うう~~何度読んでも本当に本当に良いんだrestart……。

 

 

 閑話休題。朗読劇の時間軸はrestartから少し遡り、この物語でのペチカは魔法少女なりたてどころかクラムベリーの試験合格前のニュービーです。

 restartではこの頃のペチカについて「皆が一生懸命戦っているのに自分一人だけ体育座りで眺めている、というほどのものではなかった。戦うべき時に戦うことを知っていて、それによる高揚感も感じていた *1 」と振り返られていますが、朗読劇の範囲ではそういうバトルペチカは見られませんでしたね。肝試しで遭難しかけた時に千乃を泣いて責める様子があんまり想像付かない。井上ほの花さんの声がかなりか弱そうな感じなのもあるかもしれませんが……。

 

 restartで描写されていたもののunripe duetでは見られなかったシーンとしては、他にもチーノや他の候補魔法少女に自分の料理を振る舞う場面などもあります。見てみたかったなあ他の候補者とバトルしたりお料理したりするペチカ。ペチカの魔法を酷評してたチーノが美味しい料理に舌鼓を打つ様子も見てみたい。

 しかしrestartにあってunripe duetには無かった印象的なシーンといえば、自分はやはりなんといっても、

 

返り血で真っ赤になったクラムベリーが、ごく軽い会話の中でペチカの合格を宣言した時は、へたりこみながら安堵し、あとからあとから涙が出た。目の前で友達を殴り、殴り、殴り、そして無残に殺したクラムベリーに感謝さえした。すぐそこで倒れている友達はもうペチカの目に入っていなかった。*2

 

 ここなんですよね。restart初読時に試験の壮絶さを強く感じて好きなシーンだったので。unripe duetではチーノが殺されてしまってからのペチカの視点が存在しないので、安堵してたり咄嗟にクラムベリーに感謝してしまうという遣る瀬無い描写もまた存在しない。

直後にクラムベリーの気紛れによりやっぱり殺されそうになってるとは夢にも思ってないペチカ……。でもunripe duetを見るとかなり前後不覚な状態になってたっぽいし、感謝といっても朦朧とした意識の中のフワッとした感情だったのかもしれませんね。

 

 この後ペチカが気絶してるうちにミーヤ・オクターブとテルミ・ドールが登場して悪魔が暴れ出して自分も殺されかけて手のひらを太陽にの爆音duetがあって更に三つ巴があり結果壮絶にミーヤとテルミが死ぬ一連の流れがあったわけですが、ペチカはまあ恐らくその出来事を認識……してませんよね。精神的ショックがあったとはいえ気絶のレベルが深すぎる!

 気絶してる(ので覚えてない)という理由付けがされているとはいえ、restartで描写されてる範囲以降であまりにも色々起きすぎだろというのが朗読劇中に急にじわじわ面白くなってしまってちょっとニヤついたりもしてしまっていた。

 

 とはいえ、ミーヤの乱入がなければペチカはおそらく気が変わったクラムベリーにあの場で殺されていて。ペチカだけは護ろうとクラムベリーに挑み続けたチーノの祈りを叶え、そしてrestartに繋げたのはミーヤ・オクターブの力もあってこそでした。

 もともとペチカはチーノが命を賭して護りきることでクラムベリーの試験を合格した存在とはrestart時点でわかっていたんですが。その後クラムベリーの気紛れで殺されるところだったとは思ってもみず慄きました。これディティック・ベルが潜伏勝利した回が尚更奇跡すぎる。10試験連続全員死亡くらいやってたのかなその時……。

 

 

 凄惨な試験の中で友人を助けようと藻掻き、そして成し遂げられず、記憶も失ってしまうというペチカ視点ではバットエンドとしか言いようのないunripe duet。その中で見せてくれた心を奪う場面はたくさんあったんですが、やはり、朗読劇として聴いたペチカのセリフで最も印象に残ったのは、「――動け! 動け! 動け! *3でした。そうだ、この時のペチカは動けなかったんだ……。あの井上ほの花さんの振り絞るような絶叫が胸に刻まれています。

 これを経てrestartでの「――動け! 動け! 動けええええええええええ!*4になるんだよなと思うだけでちょっと泣きそうになる。ズルいよこれ!! いや~~unripe duetのペチカはrestartでの姿を思い出すことにより尚の事心に来て凄まじかったです。動けたんだよな……。その強い握力でしがみついてたんだなあ。

 

 それはそれとして握力の強いペチカという概念自体が好きなので、unripe duetでペチカの握力に言及されるたびにちょっとクスッとしてしまっていた。「握力とか、けっこう強くて」かわいい。チーノにギュッとされて「大変だ大変だ」と念じるペチカ滅茶苦茶かわいい。

 自分の握力でクラムベリーの首をキュッとすることを考えるペチカは緊迫した場面なのにちょっと面白い。ただ自身の戦闘力で優れていると思えたのが、頑張って売り出してみて実際チーノに褒めてもらえた握力くらいだったのかなと思うと悲しい。クラムベリーへの相談メールが超回りくどいペチカはクランテイルチーム内でのメールのやり取りも最初回りくどそうで良い。

 

 そんなこんなで以上。ペチカについては、やっぱり今はただただrestartアニメが楽しみという気持ちでいっぱいです。アニメからペチカに出会った人がunripe duetに触れられないのはとんでもない機会損失なのでどうにかこう……救済手段があってほしいと今から変な心配をしています。

 

カプ・チーノ

 

 ペチカの登場が確定した当初から、では魔法少女試験のことが語られるのではないか、ということは「あの子」も登場するのでは?と囁かれていましたが、想像に違わず登場したペチカの元相棒……こと、カプ・チーノ。人間態名は三笠千乃(みかさ ゆきの)。チノかなと思ったらユキノだった。

公式Twitterではマルイノ先生描き下ろしのキャラクターデザインも公開されています。うお~~かわいい!!いつかSDイラストが見てみたい!10月の朗読劇第二弾でこう……グッズ発売されたりしてくれないかな。全部買います。

 

 スポーティなこの見た目、一体どんな魔法の使い手だったんだろう。作中ではチーノが固有魔法を発動していると判読できる描写がないので、どういうタイプの魔法持ちだったのかもわからないんですよね。

 ペチカのお料理魔法に対して、

「えっじゃあ料理作るだけなの?それって役に立たないじゃん。ダメだよ、魔法少女は悪い奴らと戦わなきゃいけないんだからさ、戦闘系じゃないにしても情報収集とか偵察とか隠密とか色々できることはあるんだからさあ *5

 と言っているのを見るに、チーノ自身は戦闘系魔法の使い手だったんじゃないかなあと思います。ただラスボスたるクラムベリーと戦う時に自分の魔法を使わないとは思えないので、表面には出てこない形で魔法を使ってたのかもしれませんね。自己バフ系とかだったのかな。

 

 

 カプ・チーノがカプ・チーノという名前であることや、どんな姿なのか。どんな風に喋るのか、試験の細かい内容はどんなものだったのか。初めて知る情報は多々ありましたが、彼女がどういう子なのか、そしてどういった最期を迎えるのか自体は、restartで既に知っていた内容ではありました。

 

 なぜ二宮君に惹かれたのか、わかった。彼は昔の知り合いによく似ていた。スポーツをしている時は、とても格好よくて、強い。自分の未来のために努力を惜しまず、怠けたりだらけたりしない。そのくせ話好きで、笑った時の顔が人懐っこい。ペチカの料理を美味しい美味しいと喜んでくれるところまで同じだった。*6

 

ペチカは守られるだけの魔法少女だった。ペチカを守るため、友達が頬骨を折られ、顎を割られ、腫れ上がった顔で前も見えず、それでも立ち向かってクラムベリーに馬乗りで殴り殺された。なのにペチカは震えていた。ペチカが動けば、勝てたかもしれなかったのに、足も手も動かなかった。*7

 

 はい、知っていたことではあった……その筈だったんですが。朗読劇初回で自分は何も知らなかったんだな……と強く思ったのをよく覚えています。

 そう……チーノの死を「音声」で体験するのは凄まじい衝撃だった。というか初回の沼倉愛美さんのやられボイスがあまりにも生々しく殴打され苦痛に怯えそれでも立ち上がる人のそれで、圧倒されてしまった……。口の中が切れて血が溜まってるっぽいくぐもり方とか、段々衰弱していって小さくなっていく呻き声とか、台本を閉じ、目を瞑ることで舞台を降りた死者であることを示す演出とか、全部のインパクトが……本当にすごかった!

 沼倉愛美さんの元気いっぱいで運動部所属っぽいチーノも、後藤沙緒里さんのちょっと高飛車お姉様めいたチーノも、どちらも可愛らしく心を惹きつけて、だからこそ尚の事悲しかった。「知っている」筈だった展開がここまで胸に刻み込まれるものかと、自分は朗読劇という形態をナメていたなーと思い知らされたキャラクターでした。カプ・チーノ……。

 せっかくこうして登場したことですし、いつかペチカとチーノの試験中の短編なんかも読めたら嬉しい。こうして思うことには、あのチーノの姿が記憶操作によってペチカ本人にすら忘れ去られていたのは本当に遣る瀬無いことで。ペチカがrestart最終盤で記憶を取り戻し、最期に思い浮かべた人々の中に「あの子」ことカプ・チーノが居たことを考えるとちょっとまた泣きそうになりました。アニメでも登場したりするんだろうか。

 

以上。次回はunripe duetの感想としては最終回、ファヴ、マジカルデイジー、袋井魔梨華、魔王パムについて。改めて随分期間の長い感想だな……。

*1:遠藤浅蜊. 魔法少女育成計画restart(後)【電子版あとがき付】 (このライトノベルがすごい!文庫) (p.141). 宝島社. Kindle 版.

*2:遠藤浅蜊. 魔法少女育成計画restart(後)【電子版あとがき付】(このライトノベルがすごい!文庫)(p.174). 宝島社. Kindle 版.

*3:遠藤浅蜊. 森の音楽家クラムベリー外伝 魔法少女育成計画 unripe duet (p.116)オッドエンタテインメント

*4:遠藤浅蜊. 魔法少女育成計画restart(後)【電子版あとがき付】(このライトノベルがすごい!文庫)(p.175). 宝島社. Kindle 版. 

*5: 遠藤浅蜊. 森の音楽家クラムベリー外伝 魔法少女育成計画 unripe duet (p.64)オッドエンタテインメント

*6: 遠藤浅蜊. 魔法少女育成計画restart(後)【電子版あとがき付】(このライトノベルがすごい!文庫)(p.142). 宝島社. Kindle 版.

*7:遠藤浅蜊. 魔法少女育成計画restart(後)【電子版あとがき付】(このライトノベルがすごい!文庫)(pp.173-174). 宝島社. Kindle 版.