すふぉるつぁんど

主に遠藤浅蜊著「魔法少女育成計画」シリーズについて書き残していくブログです。

ファヴ&マジカルデイジー&袋井魔梨華&魔王パム編「森の音楽家クラムベリー外伝 魔法少女育成計画 unripe duet」感想(さいご)

 

スノーホワイト育成計画」&「青い魔法少女の自己主張」(新作書き下ろし)朗読劇公演決定!!!

 

 

うおー!! 朗読劇第二弾の開催が発表されてからあっという間に1ヶ月、演目とキービジュアル、演者が公開されました! 楽しみだ!!

 10/14~15の2日間で4公演というスタイルは前回と同じですが、今回は前夜祭はなしですね。飛空船シアターという会場名にワクワクする。調べてみたら2022年にできたてホヤホヤのホールみたいで行くのが楽しみです。

 

 この記事を書いている間に演者と登場人物も公開され、7/29からは先行予約抽選も開始になっています。

 

 ラピス・ラズリーヌの登場はまあ予想の範疇でしたが、まさかのトットポップ&7753の登場には驚きを隠せない。そういえばトットはフレデリカの愛弟子ですが、その辺りも関係してたりするのかな? 朗読劇第一弾では森の音楽家クラムベリー&ミーヤ・オクターブという二人の「音楽家が登場しましたし、パンクロッカーモチーフのトットポップという近代的「音楽家の登場という流れも……あったりなかったりしないかな。何はともあれ楽しみです。

 

 というわけで、朗読劇第一弾の感想記事も今回で最終回(何ヶ月に渡ったんだ……?)。以下感想。今回は登場パートも比較的少なめな4人分なのでさっくりと。

 

 

ファヴ

 

 厳密にはメインキャラクターの一人と言っても良いくらい登場頻度が高かったファヴですが、収まりの都合で感想はこちらにまとめました。

 まずファヴといえば、朗読劇で演者のかないみかさんが着ている衣装がどう見ても電脳妖精ですごく良かった。懐かしのファル/ファヴチョコぐるみっぽいのをポシェットみたいに提げてるのもかわいかったです。いつかチョコぐるみ再販されたりしないかな……。

 

 物語内でのファヴは、ペチカ&カプ・チーノの試験を2人1組制度にするという粋な悪趣味なことを発案したり、クラムベリーと小気味良い掛け合いを披露したりしてました。なんかこの二人(?)、見る度に毎回思ってたより仲良いな……となるんですよね。GUNS OR ROSES?とか、アニメ化の条件とか。

 

「相棒と上手くいかない時はどうすればいいですか?」

「えっどういうことぽん?ファヴとマスターは最高のコンビネーションで」

「我々の話ではありません。候補生の一人からメッセージが送られてきたんですよ。まったく、こちらは忙しいのに面倒なことを」

「忙しい? マスターが? ファヴの聞き間違いぽん?」  *1

 

 ここ微笑ましくて好き。実際クラムベリーがテルミ・ドールに不意打ち攻撃された時、ファヴの介入によって咄嗟に回避できたりしてそうだったのでナイスコンビネーションとも言える。

 

 そういえばunripe duetの原作小説にはファヴの「万能の案内人(コンシェルジュ)だと思ってるなら痛い目見るのはクラムベリーになるぽん」 *2 という台詞がありましたが、あれは恐らくパチスロ魔法少女育成計画の目押し育成講座こと「ファヴコンシェルジュから引いてきた小ネタなんでしょうね。朗読劇現地にクラムベリー仕様筐体もありましたし。まあ朗読劇では(コンシェルジュという言葉が音声だと伝わりにくいので当然というべきか)カットされてた要素だったんですが……。

 

 兎にも角にも、ファヴは改めて無印での印象よりもずっと人間臭かったというか。気ままに戦闘狂しているクラムベリーの所業を世間から隠蔽するために、ファヴは本当に本当に頑張っていたんだなあという印象がunripe duetで尚更深まりました。

 クラムベリーの懐まで迫ったのはテルミ・ドールくらいのものだったかもしれませんが、人事部門の期待のエースたるクラムベリーを疎む層も数多くいたことでしょうしね。そんな中でクラムベリーと二人三脚で20年近くやってきたというのは……改めて驚嘆するような事実でした。約20年も一緒に生きてるの、付き合いの長さで言えばもう家族かそれ以上ですよ!

 

マジカルデイジー

 

 メディア面での露出の多い「クラムベリーの子供達」の一人として、広報部門にてテルミ・ドールから取材を受けるという形で登場したマジカルデイジー。彼女については、松田颯水/松田利冴姉妹という贅沢なキャストでのそれぞれの演技が観られたのが特に面白かったです。

 公演ごとに「アニメキャラ」感が強い、お仕事モードっぽさのあるマジカルデイジーと、restartプロローグを連想するようなちょっと人間臭さを感じるマジカルデイジーの演じ分けを感じたのもよかったな~。あとフリフリ極まりない衣装も良かった……! 千秋楽でのアドリブで見られた地引網イメージ決めポーズには普通に笑ってしまった。

 

 しかしクラムベリーの試験を受けた魔法少女の記憶ってかなり上手いこと処理されてるんですね。アカネとか娘々とかは割とはっきり試験中の記憶を思い出してたり、restart中にはかつての自分の試験を朧気に想起する魔法少女もちらほら居たりで、実は処理はガバいのかなあとか思ってたんですが。

 unripe duet内でのデイジーは、テルミからあそこまで熱心につつかれても全然試験内容のことを思い出さなかったですね。やっぱrestart中みたいな過酷で理不尽な環境に晒された方が記憶が繋がりやすいとかはあるのかな。

 

「嬉しい……嬉しいです! ありがとう! あの……デイジーさん」

「なに?」

「わたしも、頑張ればアニメの魔法少女みたいになれますか?」

「もちろんなれるよ」 *3

 

 作中のマジカルデイジーのやり取りで言うと、ここが朗読としての演技も相俟って心に残ったなあ。マジカルデイジー、間違いなく一人のアニメ化魔法少女としてみんなに夢を与えてくれる存在だ……。

 

 マジカルデイジーはrestartでもファンサービスとしてデイジービームでトドメを決めようとしたり、アニメ化魔法少女として自分がどう振る舞うべきかという像が内面にありそうで、それがカッコいいなと改めて思いました。

 現実のマジカルデイジー、こと八雲菊さんは、このunripe duetの先に「服は大型量販店で購入したものばかり。それさえも最近は買っていない。化粧のやり方もろくに知らない。資格の一つも持っていない。普通免許もない。」*4 という鈍色の大学生になる未来があり、この時点でじわじわ「いつまで魔法少女をやるんだろう」という一抹の思いを抱え始めているかもしれません。

 しかしそんな様子は微塵も見せず、一人の魔法少女を勇気づける。その姿に、近年遠くなりがちな種類の「魔法少女」の姿を感じてじわーっと感慨深くなったのを覚えています。

 

袋井魔梨華

 

 袋井魔梨華は……朗読劇だろうがいつも通りに大暴れしてましたね! 宮村優子さんの向日葵みたいな元気いっぱいの哄笑も、小清水亜美さんの毒の花っぽい忍び笑いもどっちも良かった。しかし宮村優子さんの魔梨華、演者の挙動も大暴れでブンブン手を振り回してたり肩幅以上に足を広げて地を踏みしめるようにして大笑いしたりで、(ま……魔梨華だ……)という説得力が凄まじかったです。良いもの見た。すごい常に笑顔だった。

 

 ミーヤ・オクターブVS袋井魔梨華の一戦は、緊迫感ある朗読やテクニカルな魔法の活用も相俟って現地でもすごく聴きごたえがありました。別に怒っていないのに戦いを挑んでくる、9歳児の理解を越えた生粋の異常者。ここの戦闘シーン楽しかったなあ。

 テルミ・ドールの誘導により、空からタンポポで急襲するという形で登場する袋井魔梨華。ここは地味なACESボツネタ回収要素で思わずニヤリでしたね。いつかタンポポ状態の魔梨華も見てみたいな~と思っていたったから嬉しかった。

 そのシーンで披露された「牙を剥く獅子頭(ダンデライオン)」は、物騒な技名にしては綿毛で顔を覆うというかわいいものでしたが、魔法少女における視界のアドバンテージ性を考慮すると渋い活用方法がありそう。スクリーンに技名を投影するという演出には思わず膝を打ってしまった。当て字までちゃんと読ませてくれる! 楽しい!!

 

 魔王に確保された後のミーヤとのやり取りでは、魔梨華は別に促されたわけでもないがクラムベリーとの戦闘を振り返っていました。あれは恐らく「魔王塾主催地獄サバイバル」での一戦を思い出していたのだろうと思うのですが(また別件で小競り合っててもそれはそれで楽しい)。あんなグチャグチャの死闘を平然と良い思い出のように話してる魔梨華は改めて……すごい。

 耳や目から血を吹き出すのはきついとかいうレベルじゃないと思うんですが、それを「きつい」からこそ「楽しい」と呼ぶの、本当に誠実にイカれ続けている。その結果やっぱり何度考えてもこれにまんざらでもなく付き合っていた美々って……というところについ思いを馳せてしまう。そりゃ狂犬のハンドラーとかいう物騒な二つ名も付けられる。

 

「お前はもうちょっと頑張れよな。いきなり演奏始めたからなにかすると思ったのになにも起こんないしさあ、逆に驚いたよ。チューバの方は悪くなかったけど、クラムベリーに比べると出力で負けてんだよなあ」

「他人(ひと)の魔法に駄目出しするのやめてよ」 *5

 

 地味に好きな会話です。魔梨華は「魔法少女育成計画JOKERS」においてもインフェルノの魔法を「その程度のつまんない魔法」とこき下ろすシーンがありますが、ここでもミーヤの魔法をダメ出ししている。

 この魔梨華の魔法少女における持って生まれてほぼ変えようのないパーソナルな要素に躊躇なく口を出すところ、だいぶデリカシーな度外視してていい。魔法少女が他人の魔法をレビューしてる描写相当好きなので嬉しい。

 

 そして魔梨華といえば、最後にミーヤに送った「頑張れよな」 *6 という言葉! 上に書いた、ミーヤとマジカルデイジーのやり取りのシーンでの「頑張ればアニメの魔法少女みたいになれますか?」の問いにここで「頑張れよな」のエールが繋がってくる。

 別に魔梨華がそれを意図したわけではないのですが、こういうところが……毎度ずるいなあと思う! 好き放題暴れてるのに根が悪いわけではないの、憎めないキャラクター性というか……立ち位置がおいしいとこすぎる。本編こと魔法少女育成計画「白」でのエイミーともな子をピティ・フレデリカから引き離しにかかるとかもおいしい要素ですよね。いや~赤だとどうなるんだろうなあ!?

 

魔王パム

 

 最後は魔王パム。魔王はその存在が魔法少女育成計画界においても特異点的であるからこそ、どういう演技になるんだろうかと一番気になっていたと言っても過言ではありませんでした。実際の茅原実里さんの演技を見た時は……ミステリアスというか落ち着いたというか、その佇まいに妙な「納得」がありました。言葉や物腰は淡々としており、登場シーンも出演キャラクターの中では少ないと言えるのに、その中で強者感をビシバシと感じました。

 魔王の固有魔法たる「羽」の演出も良かったですね。1人の魔法少女を表すのに5人が舞台に立つという状況に、魔王という重みを感じました。実際自動操作させてすら羽一枚あたり魔法少女一人分かそれ以上くらいのパワーはあるので、5人がかりというのも納得ではある。

 

「クラムベリーは……真剣な魔法少女であると思います」

「真剣とは」

「態度こそ柔らかでしたが、なにがあろうと目的を遂行しやるという意志の強さを感じました。そこに真剣さがある。良し悪しはともかくそれだけは保証できます」 *7

 

 魔王の会話の中で印象的だったのはこのシーンでした。

魔法少女育成計画limited」における魔王パムは、既に無印にて死亡している森の音楽家クラムベリーへ思いを馳せるに際し、「クラムベリーは何物にも囚われることなく一歩を踏み出し、魔王パムは倫理や情に縛られて動くことができなかった。それだけの違いでしかない」 *8 と評しています(その後に「弱い者を踏み躙るのには嫌悪感を覚える」とし、相容れないという結論にはなっているのですが)

 自分の名誉を貶め、罪のない大量の魔法少女を殺戮した大犯罪者に向けるしては、この描写には不思議なリスペクトがあったように思います。そのリスペクトの元となっているのは、この「クラムベリーは真剣な魔法少女である」という評価なのではないでしょうか。強さを求め、倫理にも情にも囚われず己の道を突き進む「真剣な」姿。己のオーバーパワーを顧み、「装置」として振る舞おうとする魔王にとっては、クラムベリーの存在は眩しいものでもあったのかもしれません。

 

 

 最後に少し、魔王パム本人とは話がずれますが、

これによりテルミ・ドールは、人事部門の魔法塾(※原文ママ卒業生に会う権利を手に入れた。人事部門は派閥ごとに情報が隔絶しているため、部門長でさえ知らないことを一試験官が承知していたりもする。 *9

 

 ここ、地味に面白い設定が開示されててよかった。人事部門は派閥ごとに情報が隔絶されている! 部門長も知らないことを末端の試験官が知っていたりもする! なんて……面倒くさい組織なんだ! 人事部門!!

 unripe duetだとそういう状態だった上で、プフレが部門長に立った時の「刷新」で人事部門にどういうメスが入ったのか、やっぱり気になります。

 limitedでは7753のゴーグルに改造を施して、見聞きした情報を報告の必要なくまるごと自分に送らせるようにしてるあたり、絶対に末端で情報を握り潰させないという気概を感じる。正しいと思うけど……それでトップがパンクしないのやっぱり意味不明だな。unripe duetでは地味に人事部門の暗部っぷりが更に深まったように思いました。クラムベリーしれっと暗殺されかかってるし……。

 

 

 というわけで、とんでもなく長らくの期間となりましたが「森の音楽家クラムベリー外伝 魔法少女育成計画unripe duet」の感想は今回で終了です。

 改めて、素晴らしい朗読劇だった。朗読劇というものを観る事自体がこのunripe duetで生まれて初めてでしたが、演者の方々の世界観に引き込むような演技、劇伴やSE背後のスクリーン、アンサンブルの方々といった数々の演出、全てが「いい体験」そのものでした。

 活字で追うのが主だった魔法少女育成計画の世界を、かなり活字に近い味わいで、そしてより臨場感を高め、「演技」、「演出」といったレイヤーでの面白みも加わって……という、本当に面白いメディアミックスだったなぁと思います。現地に行ってよかった。

 

 後は朗読劇第二弾を楽しみに待つばかりです! スノーホワイト育成計画のあんなシーンやこんなシーンの演技がどのようになされるのか、書き下ろし短編の内容はどんなものなのか! ワクワクすることばかりだ!

 

 

*1:遠藤浅蜊. 森の音楽家クラムベリー外伝 魔法少女育成計画 unripe duet (p.66)オッドエンタテインメント

*2:遠藤浅蜊. 森の音楽家クラムベリー外伝 魔法少女育成計画 unripe duet (p.35)オッドエンタテインメント

*3:遠藤浅蜊. 森の音楽家クラムベリー外伝 魔法少女育成計画 unripe duet (p.47-48)オッドエンタテインメント

*4:遠藤浅蜊. 魔法少女育成計画restart(前)【電子版あとがき付】(このライトノベルがすごい!文庫)(p.16). 宝島社. Kindle 版. 

*5:遠藤浅蜊. 森の音楽家クラムベリー外伝 魔法少女育成計画 unripe duet (p.94)オッドエンタテインメント

*6:遠藤浅蜊. 森の音楽家クラムベリー外伝 魔法少女育成計画 unripe duet (p.94)オッドエンタテインメント

*7:遠藤浅蜊. 森の音楽家クラムベリー外伝 魔法少女育成計画 unripe duet (p.89)オッドエンタテインメント

*8:遠藤浅蜊. 魔法少女育成計画limited(前)【電子版あとがき付】(このライトノベルがすごい!文庫)(Kindle の位置No.3012-3013). 宝島社. Kindle 版.

*9:遠藤浅蜊. 森の音楽家クラムベリー外伝 魔法少女育成計画 unripe duet (p.93)オッドエンタテインメント