すふぉるつぁんど

主に遠藤浅蜊著「魔法少女育成計画」シリーズについて書き残していくブログです。

まいにち魔法少女125日目:ラッピー・ティップ(白)

 

本日のまいにち魔法少女です。

今日はラッピー・ティップです。ラッピー! 人事部門所属の使われる側の魔法少女は総じて苦労人の気配があります。以下感想。

 

 

  ラッピー・ティップ。1班所属の元気系魔法少女です。カナの魔法少女評では、「破壊力♡2、耐久力♡4、敏捷性♡4、知性♡4、自己主張♡2、野望/欲望♡2、魔法のポテンシャル♡2」です。

 一見主張が激しそうに見えてパラメータは2と低い値だったり、野望/欲望の数値も低かったり、嫌いなものに野心家があげられていたりするあたりを見るに、本人の気質としてはそれほど押し出しの強いタイプではないのかもしれません。

 人事部門の一員としてジューベとやり取りしている時は中学校での元気っ子感は鳴りを潜め、大人しそう……というか、嫌いなもの上司系魔法少女(7753「嫌な上司」、シャッフリン「理不尽な上司」、ハムエル「理不尽な上司」、シャッフリンⅡ「怖い上司」、カルコロ「今の上司」 多すぎる)的気苦労多そうな雰囲気でしたしね。どう考えてもジューベは野心家なのでラッピーは広義の上司嫌い系ではある。

 

 カナからは「一番年嵩に見えるが気のせいだろうか」という意味深なコメントを向けられています。後に本人も、「上司の命を受け、スノーホワイトの指示を聞き、その上で自分が生き残るように立ち回る。それができなければこの年齢まで人事部門で生きていくことはできるはずもない」*1 と零しているあたり、彼女の実年齢は……実は中学生を上回っているのかもしれません。

 何度か言及されてきた彼女の濃い目の化粧は年齢をごまかすものだったのかな。カナの直感が正しければ、少なくともスノーホワイトよりは年上な感じだし、上記の独白からは割と魔法少女としてベテランのような雰囲気があります。遠足で持ってくる弁当箱も謎に高そうな重箱だったし。

 彼女の実年齢が公開される日は来るのだろうか? 女学生に混入してる年上女性といえば服部シアさんという偉大な先達もいることですし、ラッピーこと頂田ルミさんがバリバリに成人してても驚かないな……。

 

 

 ラッピーが人事部門から推薦された魔法少女であることは「黒」時点で明らかになっていたものの、ラッピー自身は人事部門との関与を否定していました。しかし……彼女は現人事部門長(!?)であるところのジューベの下で働いていました。breakdownでジューべが人事部門所属だったの誤植じゃなかったんだなぁ……。

 つまりラッピーは一般魔法少女を偽装しているプロ魔法少女だった! 自分は「黒」時点では人事部門推薦という情報から怪しいとは思いつつも、ラッピー本人の挙動自体からは「プロ」感をあまり感じていなかった(黒時点での感想:まいにち魔法少女99日目:ラッピー・ティップ - すふぉるつぁんどようなので、傍から見てもラッピーの一般人中学生偽装はかなりうまく行っていた……のではないだろうか。

 なにせ、ラッピーの本来の職場こと人事部門はとんでもない伏魔殿です。

 

 人事部門は魔法少女文化の最前線にある。つまり生き残るだけでも四苦八苦という渦中の中の渦中だ。何度となく改革の波に飲み込まれ、その度に「刷新」してきた。前回の「刷新」は今までになく苛烈なもので、血も流れたと聞いている。

 現在の人事部門長は血を流させた側に所属しているはずだが、少なくとも外面は常に穏やかだ。声を荒げているようなところは見たことがない。それ故に恐ろしい。*2

 

「生き残るだけでも四苦八苦」な人事部門、嫌すぎる。人事部門のワクワクブラックエピソードいくらでも出てくる。

 前回の「刷新」とはつまりプフレの死後人事部門を牛耳っていたフレデリカ(とクリオ?)をジューベが追い落とした関連の出来事を指すのでしょうが、このあたりの詳細は何もかも不明。あのフレデリカを追い出すってジューベさんだいぶすごいな。そしてなんでこの人は研究部門から人事に鞍替えしたのかな……。F2Pはどう完結する予定だったんだろうな…………。

 

 かなり余談にはなりますがプフレが部門長になるにあたって行ったであろう「刷新」の内容もだいぶ気になります。プフレの前任といえば、

 

 

 魔法使いなんですよね……。マナの父親が監査部門長であることを思えば人事部門長が魔法使いなのもそんなに驚きはしないんですが、それを追い出すって何をどうやったらそんなことが出来たんだ。

 病弱で通してた人がよくもまあそんな頑張ったものだなあと思います。一度でいいから人事部門で「病弱」してるプフレ見てみたい。一度と言わず二三度は見てみたい。

 元人事部門長の魔法使いは言うまでもないこととして、レイン・ポゥが処分されたのとか、7753の信頼できる上司がいなくなったのもプフレの「刷新」の行程の一部だったのかな。書類削減とか給料増額とか色々やってたのもその一環かもしれないですね。

 

 

 人事部門よもやま話は尽きないので「白」の話に戻るとして。 普段はそんな恐ろしい職場からやってきたとはとても思えないような巧みな一般魔法少女感を醸し出しているラッピーですが、ジューベとのやり取りには胃を痛めてそうな空気を感じます。

「革命家」の一人として虎視眈々と情勢を伺っているジューベの側近には、F2Pの頃から変わらずパペタが控えており(つまり彼女ら2名はエイミーともな子同様無事にF2Pの騒動を切り抜けられたということです。結界に入っておきながらパペタよく無事で居られたな……。ジューべが求めていた「死をキャンセルできる魔法少女」は今どこにいるんだろう。そしてジューベはそれで何をするつもりだったんだろう)、彼女の魔法「魔法で作った好きな人の人形とお話できるよ」によりラッピー人形が作られています。ウワー!?

 これまでパペタに人形の魔法を使われてきた魔法少女ろくな目に合わないことからラッピー人形には不安感しかないんですが。しかも異様にジューベに猫可愛がりされてるし……。

 

 現状スパイ的存在であるラッピーには強く生きてほしい。本当に強く生きてほしい。ピティ・フレデリカ派閥ことカスパ派、オールド・ブルー派閥こと研究部門の争いに嘴を突っ込まんと潜り込んでいるという時点でだいぶ厳しい環境なのに、それとは別でなんとハルナも危険行為をしているんですよね。

 彼女が中学校に潜入した動機はまあハルナ視点どう見てもロクなものではなく、つまり問答無用でホムンクルス化の対象とされかねない出自ではあります。プシュケといい少数派閥から差し向けられてきた魔法少女は孤軍奮闘気味な上でハルナも居てという感じでかわいそう。

 

 

  ただ、少なくともラッピーには力強い味方がいます。それはスノーホワイトです。フレデリカを人事部門から追い出したジューベの功績、それに加えてミス・リールを利用して管理部門に記録されている ジューベら人事部門の魔法少女のパーソナルデータを閲覧したことで、ようやっとスノーホワイトは人事と協力することを選びます。

 スノーホワイト視点でラズリーヌ側の動向が謎めいている上に、フレデリカもまた他人の認識を歪めるプキン剣を持っているのがほぼ確定している以上、これだけ警戒してもまだ足りないくらいの状況なのが恐ろしい。

 

 スノーホワイトと密にやり取りしている直接的なシーンこそ描写されてはいませんが、ラッピーはスノーホワイトが懐にテプセケメイを隠していることを教えてもらったり、テプセケメイの風を操る魔法と自分のラップ魔法との連携を組んだりしていたようです。風に舞って腕やら顔やらに張り付いて来ようとするラップ地味に嫌だな。現実の生活でちょっと想像つく分の嫌感が強い。

 あらかじめ打ち合わせをしていたといえど、急にテプセケメイが出てきて即座に合わせられるラッピーの対応力はすごい。両足にラップを巻きつけて敵を転ばせる手腕などは、人事部門所属を感じる嫌らしい戦闘技術というか、圧倒的な破壊力はないものの手数や自分の魔法の活用で相手に対処しようとする確かな力を感じます。

 

 なんとなく人事部門といえば非力な印象がありますが、そういえば「白」でもチラッと名前が出ていたダークキューティーについては例外的な超高戦闘力側の存在ですね。あの人が今後中学校に関わってくることあるのかな。でもスノーホワイトの物語完結しちゃうからぼやぼやしてると再会しそびれちゃうんですよね……。

「ダークキューティーを見かけたら人事部門に戻ってくるようにと声をかける」ことをラッピーが指示されていたのは……ひょっとしたらダークキューティー再登場の伏線なのかもしれません。あの人に声かけるの地味な無茶ぶりだと思いますけど、ラッピーは聞き流してるのかダークキューティーの人となりを知らないのかそんなに反応がありませんでした。

 もしも中学校にダークキューティーが来たらタスクが増えるラッピーはともかく是非サリー・レイヴンと接触して欲しいところではある。それどころじゃない可能性は大いにありますけど……。

 

 

 ブラック部門の印象が強い人事部門所属ではありますが、そこで働きながらも人情をきちんと持っているのがラッピーです。別に人事部門所属だからと言って誰も彼もが自分の目的のために人を足蹴にするというわけではないんですよね。

 ラッピーは上司の命じるよう動き、スノーホワイトの指示を仰ぐことを第一の行動指針、そして自分の生存をしっかり意識してはいるのですが。自分の生存や任務の遂行のために何もかも利用する、全てを足蹴にする……というわけではなく、彼女はできればクラスメイトを守りたいとまで考えています。いい人だ……。

 ラッピーにとっては、クラスメイトたちは恐らく年下の若輩者たちが多いというのも影響してたりするのかな。「スノーホワイトの物語」が完結しようとしている次巻において、明確にスノーホワイトと共闘する立ち位置であるラッピーは今後どう動いていくのだろうか。彼女が望まない形で人事部門に利用されることがなければいいんですが。

 

 

 さて好きなセリフです。給食中に創立祭への参加を所望し始めたカナについての、

「あんまり無茶しないといいんだけどねえ。ほら、カナはあれじゃん。なんかさ、こう、捨て鉢ってわけじゃないけど自分の身を低く見積もって行動してるように思えたりするんだよね。ホムンクルスの時もクミクミ庇ってヤバかったらしいじゃん」*3 

 というセリフ好き。あまりカナと付き合いが深くない魔法少女ながらこういうことをサラッと言ってしまえるのは、珍しく若干爪隠しきれてなくて良い。やっぱり人事部門で働いているからというべきか、目の良さにはプロフェッショナルさを感じます。

 

 好きなちょっとした描写。 本当にちょっとした描写なんですけど、創立祭での署名を集めた時の「ラッピーは意外と大人っぽい字を書く」*4 という描写好き。

 同じく(?)サバを呼んで中学生をやっている姫河小雪さんは意外と可愛い字を書くとのことで、そこもちょっと面白いというか微笑ましかった。この署名って魔法少女名で集めたんだろうけど、人間態の手で魔法少女名を筆記するのなかなか無さげなイベントだな……。

 

 以上。ラッピーの人形は消えませんように。ではまた明日。 

 

*1:遠藤浅蜊 魔法少女育成計画「白」P.207 宝島社,2022.2.10(ebook

*2:遠藤浅蜊 魔法少女育成計画「白」P.203 宝島社,2022.2.10(ebook

*3:遠藤浅蜊 魔法少女育成計画「白」P.84 宝島社,2022.2.10(ebook

*4:遠藤浅蜊 魔法少女育成計画「白」P.99 宝島社,2022.2.10(ebook