すふぉるつぁんど

主に遠藤浅蜊著「魔法少女育成計画」シリーズについて書き残していくブログです。

まいにち魔法少女129日目:カルコロ(白)

 

 本日のまいにち魔法少女です。

 今日はカルコロです。本人の預かり知らぬところでスノーホワイトに教員の座を簒奪されかねなかったお人です。以下感想。

 

 

 カルコロ。 魔法使いとしての名前はカルコロ・クルンフ。

 クラスメイトではないですが、カナの魔法少女評もあります。彼女のパラメータは「破壊力♡3、耐久力♡2、敏捷性♡3、知性♡4、自己主張♡2、野望/欲望♡4、魔法のポテンシャル♡4」。思ったより魔法のポテンシャルが高い。

 犯罪学に精通している印象が強かった彼女(その割に好きな研究は時間と空間に関わる術式らしい。刑務所の術式とか分野の延長線にありそう)ですが、やっぱり知性は4と高め。魂的には魔法使いとの付き合いが多そうなカナからしても「魔法使いとしての腕は中の上」との比較的高評価で、 学生魔法少女でありながら結構な腕前をしていそう。

 マナやイオール、ルー(クラリッサ・トゥースエッジの変身前名)は名前が一つであること、breakdownでのサタボーンに関する描写で「成人し、名前が2つになった」*1とあることから、魔法使い的な成人は迎えてはいるのでしょうが。ニュアンス的には大学生とかなのかな。

 

 カルコロの特異な個性といえば、やはりまず魔法使いでありながら魔法少女をしていることが挙げられるでしょう。「白」での戦闘では詠唱に時間を要する「魔法使い」としての魔法を、魔法少女の身体能力による高速詠唱で劇的に時間を短縮して見せる……という活かし方をしていて思わず唸ってしまった。やっぱり魔法少女は物理的に便利ですね。

「才能を持たない」存在でも旧プリンセス系の人造魔法少女にはなれるので、やろうと思えば魔法使い魔法少女って量産できるんじゃないのかな。魔法使いも魔法少女になった方が色々効率が良さそうだなとか思うんですけど。でもbreakdownで人造魔法少女になろうとしてたイオールはだいぶ不穏な感じだったしなあ……。

 

 

  さて、そんなカルコロが担任を務める2年F組の魔法少女たちは、いろいろな派閥から送り込まれている先兵的な存在が多くを占めています。しかしそのクラスの教師たるカルコロはそういった政治的な思惑を帯びていなさそうでかわいそう。各魔法少女の所属派閥や中庭に遺跡があることなどは流石に知ってたみたいですが、担任とは思えないくらい色んな事情から遮断されている。

 何も知らないままハルナの顔色を伺い、消された実験場の魔法使いの謎にも何も言えずに教師としての業務を続けるカルコロは、ハルナが自分の教え子に手を出している(非倫理)ことを知らないまま、そしておそらくピティ・フレデリカやオールド・ブルー陣営の確執なども詳細には把握できていないまま、襲撃の日を迎えることになります。難儀だな……。

 

 想像するにも難儀な労働環境に急に送り込まれ、「黒」では当然やる気のない学生教師としての面が前面に出ていた(短編「夜に翔ぶ少女たち」ではよくもまあ首が飛ばなかったなと思うようなトラブルに巻き込まれてもいた)カルコロですが。裏山での一戦を経て、彼女には少しずつ2年F組への愛着がわいてきていたように思います。

 ハルナに情報を売ることを躊躇ったり、事件前と今とで生徒の自分を見る目が変わってきているような気になったりしている。可愛らしい感じで本人の感じ方が変化しています。

 

 とはいうものの、全く人が変わるような大変化があったというわけではなく。「白」でのカルコロもまた校長の機嫌を損ねまいと必死に立ち回ろうとしているところや、個性豊かな生徒たちに振り回されているあたりに変わりはありませんでした。

 急にやってきた「教科書の登場人物」 たるスノーホワイトがクラスの一員になってしまって大変気まずい思いをしたり、無茶ぶりのような形でホムンクルスや人造魔法少女の授業をさせられていたり、カナの思いついてしまった創立祭への参加で胃を痛めるような思いをしたりしています。

 

 特別授業として魔法少女たちにホムンクルスのことについて学習させているのはハルナの指示によるものですが、彼女は何を意図してこんなことをさせていたんだろう。

 ハルナが唯一と言っていい具合で信用を置いているスノーホワイトに、婉曲的にホムンクルスの特性などについて知っておいて欲しかったんだろうか。読者的にはここでホムンクルスの事情などについて知れたのはかなり良かったんですけども。

 

 

 この辺りの日常描写でちょっと面白いのは、カルコロと級長であるテティの認識のずれです。軽く上にも少し書きましたが、カルコロは黒での事件を経て「これは本当に気のせいでしかないかもしれないが、生徒からカルコロを見る目も変わってきたのではないか、と思える」*2 と考えています。しかしテティは、

 

カルコロを候補から自然に外していたのは、それは勿論頼りないからだ。やる気のなさを意識して見せている節さえあったし、決められたことを決められたようにやっているお仕着せの授業も合わせ、これで「先生は頼りになる」と思えるわけがない。*3 

 

 とばっさり一刀両断。見る目全然変わってない……!ちょっと悲哀がありながらもコミカルなすれ違いシーンでした。

 ただ学園最準備の時にライトニングを手伝って「あなたも案外融通きくのね」*4 と言われるカルコロとか、そういうあたりで彼女自身の変化がじわじわ伝わってきているようではあります。

 このシーンについてはライトニングのエントリでたくさん書いたので割愛気味ではあるんですが。しかしカルコロ側にフォーカスを当てた感想としては、「あなたも変わりましたねえ」*5 とライトニングに伝えること自体が、ライトニングもそうでありながら、カルコロ自身も変わったことを言外に示していると思います。

 変わったと誰かに伝えるということは、そもそもその相手に多少なりと興味を持っていないとできないことです。それを思わず呟いてしまったカルコロは、やはり教師としての自覚が育ちつつあるのではないかと思います。

 

 

 さて、フレデリカ陣営が白昼堂々急襲してきた時の、

なにが起こったかはわからないが、なにかが起こったことはわかった。ホムンクルスの暴走事件が無ければ戸惑うだけだったかもしれないが、今は違う。カルコロはすぐに立ち上がり、同時に変身し、生徒達の方へ向き直った。

「全員変身をしなさい!」*6 

 ここのカルコロについて! ここは、生徒を守り導く教師として全く遜色ない立ち振る舞いだったように思います。思い悩む前に即変身を選ぶのは適切な行動です。

 ただ自分が変身し、クラスに変身を命じること自体、普段であればルール違反です。普段あれだけハルナの癇に障らないようにと怯えながら教師をやっているカルコロですが、ここは一切躊躇うことなくルールの逸脱を選びます。

「黒」での一件があったとはいえ、あの一度の出来事をきっかけにここまで機敏に動けるようになるというのは心底すごいと思う。相手が魔法少女の場合、人間として向き合った時点で変身の時間を許さず殺されることが確定すると言われるような世界ですし。この即断即決がだいぶ命を救ってそう。

 

 しかしカルコロはまだ知る由もないことですが、そうして守ろうとした魔法少女の一部はホムンクルスになってたんですけど。と言うかハルナにもう少し冒涜行為への躊躇がなければカルコロ自身もホムンクルスになるところだったんですけど……。

 

 なお一番隙が多かったのはカルコロだったが、カルコロは魔法少女というだけでなく魔法使いでもあった。ただ殺す、というだけならともかく、魔法使いの肉体をホムンクルスに差し替えるというのは始まりの魔法使いに対する冒涜に他ならない。*7 

 

 怖すぎる。そこは躊躇うラインなんだな……。ここが魔法使い倫理的にまずいというなら、ラギが三賢人を(人工的に調整した)魔法少女の素体に降ろすことに激怒してたのもわかる気がする。魔法使いも素材になってることあるっぽいから強行できたのかな……。

 魔法使い魔法少女であることで一連の事件に巻き込まれ、魔法使いであることでホムンクルスカは免れたカルコロです。もう既に襲撃者により足に裂傷と火傷を負ってラッピーにラップ療法を施されている状況ではありますが、彼女がこれからの舞台であろう「遺跡」で、上司であるハルナのやっていることを知ったとして、果たしてどう動いていくんでしょうね。ハルナからしたらカルコロはホムンクルスにはしないとはいえ、簡単に切り捨ててしまえそうな存在であるのがまた……。

 

 

 さて好きなセリフ。家庭用のクーラーを抱えて歩くライトニングに向けた「このままだと怪我をしそうなのでやむなく……ということでお願いします」*8 が好き。それっぽい理由をつけるのがうまい。

 

 好きなちょっとした描写。学園最終日に勤しむ 2年F組を監督している際の、

 本当に皆よくやるもんだと呆れ八割感心二割で作業を眺め、既に終わってしまった小テストの採点をもう一度確認し、ちょっとトイレへと席を立った。トイレの個室でスマホを取り出しソリティアを一戦くらいしか娯楽がない。*9 

 ここ好き。魔法使いもスマホ使うしソリティアするんですね……。というかソリティアなんてパソコンがまだ分厚かった時代にやったっきりで、しばらくやってないけどどれくらいプレイ時間かかるんだろう。 5分くらいかな?

 

 以上です。カルコロとマナやイオール、ラギやナヴィといった他魔法使いが接触する日は来るのかな。ではまた明日。

*1:遠藤浅蜊 魔法少女育成計画breakdown(後) No.43 宝島社,2021.5.20(ebook

*2:遠藤浅蜊 魔法少女育成計画「白」P.102 宝島社,2022.2.10(ebook

*3:遠藤浅蜊 魔法少女育成計画「白」P.100 宝島社,2022.2.10(ebook

*4:遠藤浅蜊 魔法少女育成計画「白」P.323 宝島社,2022.2.10(ebook

*5:遠藤浅蜊 魔法少女育成計画「白」P.212 宝島社,2022.2.10(ebook

*6:遠藤浅蜊 魔法少女育成計画「白」P.237 宝島社,2022.2.10(ebook

*7:遠藤浅蜊 魔法少女育成計画「白」P.290 宝島社,2022.2.10(ebook

*8:遠藤浅蜊 魔法少女育成計画「白」P.211 宝島社,2022.2.10(ebook

*9:遠藤浅蜊 魔法少女育成計画「白」P.211 宝島社,2022.2.10(ebook